【NEWS】ソニーピクチャーズ・イメージワークスがヘッドクォーターをカナダ・バンクーバーへ移転 700人態勢へ
2014.7.15 UP
2月7日付けの本欄で、米ソニーピクチャーズ・イメージワークスがバンクーバーへの業務シフトを更に加速させたニュースをレポートしたが、この流れを決定づける出来事がこの程発表された。
ハリウッドの各メディアが報じたところによれば、ソニーピクチャーズ・イメージワークス(本社:カルバーシティ/ロサンゼルス 以降SPIと表記)は、これまで同社が強く推し進めてきた「制作拠点をカナダのバンクーバー支社にシフトする」というプランを更に拡大させ、遂にヘッドクォーター(本部)をバンクーバーに正式移転させることをアナウンスした。
これにより、1992年の設立以来VFX制作を行ってきたカルバーシティのSPIスタジオは、ヘッド・クォーター及び、プロダクション機能の主幹をカナダのバンクーバーへほぼ完全に移転させる。ただ、一部のプロジェクト開発要員はカルバーシティに残すということで、カルバーシティは完全閉鎖という形ではないという。しかし、現在勤務している270人のクルー達の多くは、バンクーバーへ転勤するか、退職するかを迫られる見通し。(鍋 潤太郎)
(写真はカルバーシティのSPI 概観)
■SPI税優遇制度に「完全に」依存したビジネス・モデルへ
SPIは、カナダのBC(ブリテッシュ・コロンビア)州が実施する大規模な税優遇制度の恩恵にあやかり、制作を「クライアントである映画スタジオが、多額の還付金を受けられる」バンクーバーに移転させ、BC州の税優遇制度に完全に依存したビジネス・モデルへと移行する。
ただ、税優遇制度へ100%依存したビジネス・モデルの危険性を指摘する声は少なくない。制度そのものが縮小もしくは終了するようなことがあれば恩恵はなくなり、プロジェクトの受注が難しくなる可能性があるためだ。
現に、これまで映画やゲーム産業に対して「製作費の50%近くを還付する」という非常に大規模な税優遇制度を提供してきたカナダのケベック州は、6月4日付けで行政支出削減を目的とした20%の税控除削減を発表。この削減プランにより、2015年から2016年の向こう2年間で3.48億ドルでの支出を節約するという。ここ数年、ケベック州の大規模な税優遇制度の恩恵にあずかり、モントリールに進出したゲーム及びVFXスタジオは多く、この影響を少なからず受けることが心配されている。
今のところバンクーバーがあるカナダBC州では税優遇制度に強気の姿勢を貫いているが、反対派との意見対立も見られ、税優遇制度の今後については、動向が注目されるところだ。
○SPIバンクーバー 700人規模のプロダクションへ
SPIバンクーバー・スタジオはこの勢いに乗り、2015年をメドにより大きなスタジオ施設への「引っ越し」を検討しており、最終的には700人規模のプロダクション体制を整える計画だという。
ちなみにSPIバンクーバー・スタジオでは最近、「アメイジングスパイダーマン3」、トム・クルーズ主演の「EdgeofTomorrow(邦題:オール・ユー・ニード・キル)」のVFX作業を完了させ、今後予定されているプロジェクトとして「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」 (8月全米公開予定)、「モンスター・ホテル2」(2015年9月公開予定)、「Rovio'sAngryBirds」(2016年7月公開予定)等の数々のラインナップが控えているという。
ロサンゼルスで仕事をしている筆者としては、ハリウッド映画のVFXがアメリカ国内ではなく、カナダ等の諸外国で制作されることは寂しい限りだが、今度も税制優遇制度を取り巻く環境の最新情報を、鋭意レポートしていく。