【NEWS】日本映像事業協会 若手映像クリエイターを励ます賞に「お父さんは二度死ぬ」の若手プロデューサーが受賞 澤田隆治賞には「泣いたらアカンで通天閣」が輝く
2014.1.31 UP
澤田会長
鈴木氏
前列が受賞者、後列が審査員
(左から)澤田賞を受賞したザ・ワークスの霜田氏、位部氏、高橋優子氏
全国の番組・CM制作会社など215社が参加する、協同組合 日本映像事業協会(J・VIG、澤田隆治会長)は1月30日、都内のホテルで開催された賀詞交換会に先立ち、「ヤング映像クリエーターを励ます賞」と、「澤田隆治(たかはる)賞」の表彰式を開催した。「澤田隆治賞」は、 J・VIG20周年を記念した今年度限りの賞。表彰式はそれぞれ2回にわけて実施。
「ヤング映像クリエーターを励ます賞」の最高賞である「経済産業大臣奨励賞」を受賞したのは、テレビ番組「お父さんは二度死ぬ」(NHK BSプレミアム、全4話、2013年6月に放映、主演・南沢奈央)の制作統括を担当した鈴木亜紀乃氏(日テレアックスオン)。また、澤田隆治賞の最高賞であるグランプリは、ザ・ワークスの「讀賣テレビ開局55年記念ドラマ『泣いたらアカンで通天閣』」(讀賣テレビ)が受賞した。
(上写真は、作品を講評する澤田会長(左)と、受賞者の鈴木亜紀乃氏)
■「若いリーダーが出ると業界は発展する」
「ヤング映像クリエーターを励ます賞」は、同協会が平成11年に創設したもの。放送文化の豊かで活力のある未来を目指し、主に協会組合員企業に所属している30歳以下のクリエーターの中から、才能豊かで将来性のある新人を選んで表彰している。平成15年からは、中でも特に優秀なクリエーターに「経済産業大臣奨励賞」を授与する。
審査委員長を務めた、J・VIG会長の澤田隆治氏は冒頭、同賞のねらいについて次のように述べた。
「我々、制作プロダクションの集まりとして、すばらしいクリエーターを生み出す方法はないかと考え、そのためには若い天才を探すしかない。若いリーダーが出てくると、その業界は発展する。しかし、私たちの業界はそうした若手が出にくい。経験の少ない若手に任せるということがなかなかできない。ディレクターはだいたい10年はかかる、プロデューサーはもっとかかるといわれている。そんな中で、この賞は30歳以下という若い人を対象にしている。若くないと意味がない。この年齢にかなりこだわった。何度も32、33歳にしてほしい、という要求があったが、30歳以下にした。幸いなことにぎりぎり、28、29歳の方の作品が選ばれるようになってきた」
■24歳の女性プロデューサーが受賞「テレビ局の理解に感謝」
また「ここ数年の傾向」として、受賞者に女性が多いという点を挙げ、次のように述べた。
「今年はなんと、作品を作ったときに24歳という、ほんとうに若い、しかも女性のプロデューサーが登場した。今年の受賞作品の中には、女性が多いのも一つの傾向。女性の手がける作品はこれまで、なかなか賞に結びつかなかったが、今回、優秀賞も、経済産業大臣奨励賞も女性になった。テレビ界で女性が仕事をまとめていくのはなかなか大変。私がこの仕事に入ったときに、かなりハードな仕事だと思ったが、そうした労働環境は改善されていないなかで、がんばっている若い人たちが増えたということは、ほんとうにうれしいことだ」
また、若手が手がける作品について、「かなり大型のドラマを若い人たちがつくるチャンスが出てきた」ことも今年の傾向であると述べ、そうした状況について「プロダクションの努力もあるし、なによりもテレビ局側のプロデューサーが認めてくださったからこそ、チャンスがある。ほんとうに感謝したい。この企画は、そうした理解なしには絶対に成り立たない賞であるということを改めて感じる」と謝意を表した。
■「番組作りはわかりやすく、の常識を覆した」
15回目となる今回、「経済産業大臣奨励賞」を受賞したのは、テレビ番組「お父さんは二度死ぬ」(NHK BSプレミアム、全4話、2013年6月に放映、主演・南沢奈央)の制作統括を担当した鈴木亜紀乃氏(日テレアックスオン)。
授賞式の会場に駆けつけた主演の南沢奈央は、「作品に参加したものとして、今回の鈴木さんの受賞はすごく嬉しい。最初の顔合わせのときに、作品に対する思いを、涙を浮かべながら話されていたのがすごく印象的だった。それを見たときに私もがんばろうと思った。スタッフみんなそういう気持ちになったと思う。鈴木さんの熱意があったからこそ、この作品ができたと思う」と祝いの言葉を述べた。
審査を担当した澤田氏は、「このドラマを最初見たときに、『これはなんだろう』と思った。キャスティングがまず、不思議。演技も不思議。そういう不思議さに引っ張られて見てしまう。おかしい、おかしいと見ているうちに、最後に『ええ』と驚く。騙されながら見ているうちに最後に『やられた』という感じの作品。この企画を考えたプロデューサーもえらいが、本がまず、良くできている。それに、演出も良い。長いこといろいろなものを見てきた僕が騙されるぐらい。審査でなければ、最後まで見なかっただろう。小説にはこういう作品はあると思うが、テレビではない。これまで、テレビはわかりやすくないとだめだと、わからないと、すぐにチャンネルを替えられてしまう、ということを、この世界に入ったときからいわれていたのに、この作品はそれを覆した。最近になく、おもしろい。連続性のあるドラマとしてはすばらしい作品だった。ぜひ再放送してほしい」
■「真実を伝えるフィクションを作っていきたい」
鈴木氏は、受賞の喜びを次のようにコメントした。
「プロデューサーという形で携わらせていただき、基盤でしかないものを脚本や監督、役者さんが、ドラマという形にしてくださった。みなさんのおかげでこの賞をいただくことができた。私は、本当にドラマを作りたくてこの世界に入ったが、最初は違うところに配属された。これまで、40-50本、企画を立てたがなかなか通らなかった。会社で上司たちが『企画書はラブレターだ』といっていたことを思い出し、だったら身近な人に宛てて書くものにしようと思って書いたのがこの企画。ドラマは偽物ということでいろいろな批判を受けることもあるが、ドラマだからこそ、伝わる真実があると、幼い頃からドラマを見ていた者として思う。父が死んでしまったら、という設定で父のことを考えたとき、普段言えないようなことも、フィクションだからこそ言えるということもある。これからも、真実を伝えられるフィクションを作っていきたい」
■20年にわたる各社の作品から11作品をノミネート
澤田隆治賞は、ザ・ワークスの「讀賣テレビ開局55年記念ドラマ『泣いたらアカンで通天閣』」(讀賣テレビ)が受賞した。
澤田隆治賞は、 J・VIGに加盟している正組合員各社への設立20周年記念として企画された今年度限りの特別表彰イベント。「おもろい作品」をテーマに、ジャンルを問わず、正組合員各社が過去20年の間に制作した地上波、BS、CS、CM、ケーブルテレビ、携帯電話・ネット配信映像などの全放送配信メディアの中から優秀賞2作品、グランプリ澤田隆治賞1作品が選ばれた。
澤田氏は、冒頭の挨拶で、「自分の名前をつけた賞というのは、亡くなってからするもので、気恥ずかしい。まだ元気でいるのに、と固辞したのだが、今年限りの賞ということで、押し切られた。それによって、励みを感じてもらえれば良いのではと。また、ヤング映像賞を設けてから、それ以上の年齢の制作者から、自分たちも欲しいという要望があった」と述べながら、
「これを選ぶのは大変。会員企業215社が20年にわたり制作してきた作品の中から選ぶ。審査員の選考を経た11作品については、大手プロダクションの理事がすべて目を通した。『おもろい』というのは大阪弁だが、テレビ番組はいろいろな形でおもしろくなければいけない。コメディやバラエティに限らず、ドキュメンタリーやドラマにおいても、見ていて『おもしろい』ということが伝わることが重要。我々の仲間が作ってきたおもしろい番組を表彰するチャンスをいただいたということで、私は非常に感謝している」と語った。
■「現場に関西のエネルギーを充満」
澤田隆治賞グランプリは、ザ・ワークスの「讀賣テレビ開局55年記念ドラマ『泣いたらアカンで通天閣』」(讀賣テレビ)が受賞した。
澤田氏は、「この通天閣の近くのお祭りを長年担当しているほど近所に住んでいる。原作を見たときに、『これは私がドラマ化する』と自分で決めていたが、そのとき、すでにおさえられていた。それだけ印象的だっただけに、どんな作品か楽しみにしていた。かなり柄の悪い大阪弁をどんどんまくしたてる。いろいろな思いで作品を見て、良くできていると思った。非常に大阪的なドラマを久しぶりに見た」
グランプリを受賞したザ・ワークスの霜田一寿氏は、受賞した喜びを次のように語った。「主に関西出身のスタッフ、キャストを集め、現場に関西のエネルギーを充満させた。それがうまくいった要因だったのでは」。また、演出を担当した位部将人氏は「ネット社会で、人と人との繋がりが希薄な時代の中で、標準語で語るよりももっと雄弁な、メッセージ性のあるドラマになった」と述べた。
上記を含め受賞作品は、以下の通り。
【ヤング映像クリエーターを励ます賞】
■経済産業大臣奨励賞
鈴木亜紀乃(日テレアックスオン)
「お父さんは二度死ぬ」(NHK BSプレミアム)
■優秀賞
相沢あやさ(NHKエンタープライズ)
「それでも気仙沼で生きる〜フィリピン人女性たちの再出発〜」(NHK)
高明希(日テレアックスオン)
「スペシャルドラマ『人生がときめく片づけの魔法』」(日本テレビ)
佐藤洋輔(NHKエンタープライズ)
「ザ・プレミアム『探訪 巨大ターミナル』」(NHK)
■努力賞
村松雄輔(朝日メディアブレーン)
「ピエール瀧のしょんないTV」(静岡朝日テレビ)
■ホープ賞
小段好(c-block)
「Rの法則 #337 〜脈ありサイン〜」(NHK Eテレ)
【澤田隆治賞】
■ノミネート作品
泉放送制作:「黒木メイサ スペイン フラメンコ 〜魂の踊りに出会う旅〜」(NHK BS)
エーステレビ:「Lドラ『かりゆし先生ちばる!』」(テレビ東京 )
スーパーテレビジョン:「だいすけ君が行く!!ポチたま新ペットの旅 だいすけ君追悼2時間スペシャル」(テレビ東京・BSジャパン)
円谷プロダクション:「特撮テレビ ウルトラマンシリーズ『ウルトラマンマックス 第三番惑星の奇跡』」(CBC中部日本放送発 TBS系全国ネット)
トップシーン:「WOWOW大人気番組リーグ『死ぬ前にやっておきたいこと。有名人のエンディングノート』」(WOWOW)
ニューウェーブ:「ドラマ特別企画2011『帰郷』」(TBSテレビ)
メディア・ミックスジャパン:「火曜22時ドラマ『結婚できない男』」(関西テレビ )
ロボット:「つみきのいえ」(インターネット関係 その他短編アニメーション)
■優秀賞
アズバーズ:「DOCTORS2 最強の名医」(テレビ朝日 木曜ドラマ)
G・カンパニー:「お日柄もよくご愁傷さま」(劇場公開版映画)
■グランプリ
ザ・ワークス:「讀賣テレビ開局55年記念ドラマ『泣いたらアカンで通天閣』」(讀賣テレビ)
澤田会長
鈴木氏
前列が受賞者、後列が審査員
(左から)澤田賞を受賞したザ・ワークスの霜田氏、位部氏、高橋優子氏