【プロダクション】電通テック 90年代初めの三陸の姿を撮影した博覧会用3D映像をデジタル修復で復元 ボランティアでIMAGICAも協力 岩手県庁へ約20本贈呈

2012.12.14 UP

当時のポスター
修復された映像

修復された映像

岩手県庁での贈呈式(左:岩手県秘書広報室の稲葉比呂子室長)

岩手県庁での贈呈式(左:岩手県秘書広報室の稲葉比呂子室長)

イベント学会での上映

イベント学会での上映

(左から)梅津氏、石野氏、田口氏

(左から)梅津氏、石野氏、田口氏

■92年、三陸の自然や地域の文化を映像で記録
 電通テックは今年8月、同社が1992年に制作した立体映像作品「三陸の海と人々」を、デジタル修復した映像をブルーレイとDVDに再収録し、東日本大震災で被災した地域の自治体へ住民の視聴用に贈呈した。
 作品は「第2回ジャパンエキスポ」として1992年の7月4日から9月15日まで開催された「三陸・海の博覧会」メイン会場内テーマ映像館(釜石市)の3D映像(12分・1080フィート)の右目用フィルムを元にしている。
 博覧会は、岩手県の釜石市、宮古市、山田町の3カ所で開催されており、いずれも、東日本大震災の津波で被災をしている。
 今回のプロジェクトは、電通テックの社内で進められている復興支援プロジェクトの一環で、実費以外はボランティア活動であり、デジタル修復を担当したIMAGICAもボランティアの参加だ。担当した電通テック・テックインスティテュートの梅津豊氏は、今回の企画のねらいを次のように話す。
 「作品は、1991年の6月から翌年の4月まで約1年にわたり、三陸地域の美しい自然や地域のお祭り、学校での行事などを撮影したもの。地域の住民が四季折々の豊かな自然とともに暮らす姿が描かれている。今では修復や復活が難しい光景や行事などもあり、三陸の自然や文化が残されている資料としての価値があるとともに、被災された三陸地域の住民のみなさんを元気づけるものになると考え、映像を復元する企画を立ち上げた」
 当時、制作進行を担当した電通テック プロデューサーの石野功氏は「作品は、豊かで美しい四季折々の三陸の海と、そこで生活する人々の躍動感溢れる姿を映像で紹介することで、海と人のありかたを伝えようとした」と話す。
 立体映像は、35ミリ4P3Dシステムを用いている。空撮や水中撮影なども行い、季節ごとに次のような映像が撮影されている。主な映像素材は以下の通り。
【春】北山崎などの大パノラマの断崖美とリアス式の海岸美(空中撮影) 観光船とウミネコ 鮭の稚魚の放流
【夏】勇壮な祭、夜空を彩る花火 穴通磯や乱曝谷の自然の風景
【秋】碧い海をバックに走る三陸鉄道、はしご虎舞 活気溢れる漁港の人々、晩秋
【冬】潮吹穴 鮭の遡上、カキ、ホタテの養殖(水中撮影)、浄土ヶ浜、三王岩の日の出、輝く海
■原版フィルムをもとにデジタルで修復・色補正
 石野氏は「撮影に関して県・市・町の担当の方や現地の方々が、快く対応してくれたことを憶えている。震災後、 改めて現地の方々に見てもらえるようになればと思い、 原版があることを確認できたため、計画を進めることができた」という。
 フィルムからのデジタル修復はIMAGICAが担当。オリジナルの3D映写用のフィルムは、通常の35ミリ1コマを上下に分離し、上を右目用、下を左目用としている。このフィルム表面の埃を除去する洗浄を行い、比較的傷が少ないと見られる右目(上段)を生かしてテレシネ。画像修正、パラ消しの後、音ネガの音声の修正・フィルムノイズの軽減処理を行ったあと、テロップ編集をしてビデオ原版を完成。ブルーレイとDVDにプリントしている。
 ブルーレイとDVDのあわせて約20本を岩手県県庁に提供している。梅津氏は「主に実行委員会が県庁であったこともあり、権利処理がスムーズに進んだ。図書館での視聴や、公開上映も可能になっている」という。
電通テックでは、社内でボランティアによる複数の復興関連プロジェクトが進められている。こうした社内の復興プロジェクトをとりまとめているイベントソリューションセンターの田口理恵氏は、今回の映像修復について次のように話す。「震災復興支援プロジェクトは、ビジネス以外にも、情報収集・情報共有を行っている。制作会社として、コンテンツで復興に役立ちたいと考え、社員がそれぞれの形で復興支援作業を進めている。これまで社内で震災写真展などを実施してきたが、この映像はより多くの人に観てもらえる機会があるだろう。被災地の復興への努力はまだ続いており、多くの人の協力が必要だと思う。記憶が薄れないようにするためにも、今後も社内プロジェクトを続けていきたい」(田口氏)

■珍しい博展映像の再利用
 8月の納品時に映像を視聴した岩手県秘書広報室の稲葉比呂子室長は「復興に対して活用していきたい」と述べ、県視聴覚室や被災沿岸各市町村へ配布された。
 また、9月11日から仙台で開催された、イベント学会第15回研究大会でも紹介され、復興における博覧会映像の2次活用の可能性に注目が集まった。
 博覧会・展覧会映像は毎回、そのイベントごとのイメージや会場の条件にあわせて制作するため、コンテンツや上映形態などが特殊になることもあり、保存されている映像が再度利用されるケースは少ない。梅津氏は「企業からの要望による資料映像としての利用以外は、今回が初の試みだろう」という。

修復された映像

修復された映像

岩手県庁での贈呈式(左:岩手県秘書広報室の稲葉比呂子室長)

岩手県庁での贈呈式(左:岩手県秘書広報室の稲葉比呂子室長)

イベント学会での上映

イベント学会での上映

(左から)梅津氏、石野氏、田口氏

(左から)梅津氏、石野氏、田口氏

#interbee2019

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