【NEWS】九州放送機器展 2015開催 〜毎年新たなチャレンジで進化し続ける、西日本最大の機材展示会〜
2015.7.14 UP
統括プロデューサーの森下雄治氏
多くの人がつめかけた照明セミナー会場
8Kセミナーも満席状態だった
■過去最高の出展数、来場者も過去最高に
西日本最大のプロフェッショナル向け放送用・業務用の映像音響機器の総合展示イベント、九州放送機器展(QBEE)が、今年も福岡市博多区にある福岡国際センターにて7月2、3日の2日間で開催された。
例年この九州放送機器展が開催される7月初旬は、梅雨真っただ中となるため今年も天候が危ぶまれたが、今年の開催日当日は梅雨の中休みとなり晴れ間も見え、2日間合計の入場登録者数も昨年の2,666名を上回る、2,735名と過去最高の来場者を迎えた。
九州に限らず西日本地区での、この規模のプロフェッショナル映像関係の機器展としては最大となるため、福岡を中心とした九州各地からはもとより、四国、中国地方の西日本や関西圏からも放送局関係者らを中心に毎年多くの来場者を呼んでいる。中には首都圏からも、すでに今年のInterBEEにはスケジュールが取れないということで、先のNABで発表された気になる機材を見に来た、と遠方から駆けつけた来場者もいるようだ。
開催時期がNAB(4月)とIBC(9月)のちょうど中間に行われること、また11月開催のInterBEEまでも少し間があり、NABで新たに発表された製品の実機がいち早く見られることでも、その注目度は年々増している。
また、出展会社もパナソニック、キヤノン、ソニー、池上通信機、朋栄、アストロデザイン、マンフロット、アビッドテクノロジー、グラスバレー、アドビシステムズ、JVCケンウッド、平和精機工業といった、InterBEEでも常連の主要な放送/映像/音響機器メーカーがほぼ揃って出展している。
そして地の利も博多駅、福岡空港から場所的にもそれほど離れていないことなどの理由も来場者、参加者が増えている要因でもあるだろう。2004年から開催されている九州放送機器展は、今年で12年目となり出展数も年々増え、今年は128社210小間の過去最高の出展数となった。
■NAB発表の新製品実機と実務重視の内容
今年のトピックスとしては、やはり実用4K機材の実機展示だ。とりわけ4月のNABで発表された製品群は5月〜6月の展示会ではまだモックアップやカタログのみという展示も多い状態だったが、この九州放送機器展では国内初の実機展示がされていることも多く、それを体感できるのも魅力の一つだろう。
例えば、パナソニックの話題の4/3型 4Kハンドヘルドカメラ「AG-DVX200」の実機(画像が出るもの)は、同社の内覧会以外では初の一般公開となった。その他にも、アビッドテクノロジーの新製品で、CATVや小規模制作プロジェクトに最適なエントリーモデルの共有ストレージ「ISIS | 1000」は九州初上陸となり、JVCケンウッドの6月中旬に発売されたばかりの小型のカメラヘッドがユニークな業務用分離型4Kカメラシステム「GW-SP100」のセットアップ展示、ブラックマジックデザインの「URSA Mini」「View Finder」「Micro Cinma Camera」などのカメラ群に加えて、ポストプロダクション用のコンバーター「Teranexシリーズ」を始めとする話題の製品群の実機展示、またローランドの本体とコンパネ分離型でありながらコンパクトな本格2M/E マルチフォーマットビデオスイッチャー「V-1200HD」の実演デモや、キヤノンのカメラ内4K収録を実現した新型4Kカメラ「EOS C300 MarkII」「XC10」などの実機によるカメラシューティングなど、今年話題の新製品が一挙に会場内に揃ったカタチだ。
この九州放送機器展は、従来から放送局ターゲットの展示会となっているため、各メーカーの展示内容やセミナーもそうした方向にフォーカスしたものが多い。また4Kも話題だが、実際にいま現実的な関心の高いものなどが訴求されていた。例えばパナソニックシステムネットワースが主催するセミナーでは「現場視点でのファイルベースワークフローを目指す」と題して、素材管理をシステム化して上位支援と連携することで業務ワークフローの効率化を目指すといった、実際の放送局への導入事例をそのまま展示しながら、解説セミナーを開催するなど、展示とセミナーを連動させたハイブリッドな内容で実務面を重視した企画展示を行う等、ファイルベース化で様々な問題に直面している放送局への、具体的提案や訴求が随所に見られた。
■QBEEならではの特色とは?
通常の機材展示会・イベントと異なる点として注目なのは、主催がトレードショー開催専門の業界団体やイベント運営会社ではなく、一般社団法人 日本ポストプロダクション協会(JPPA)の、しかも九州支部に所属する5社((株式会社アート・ワークス福岡、株式会社ビデオステーション・キュー(福岡)、株式会社 映像新社(大分)、株式会社STSプロジェクト(佐賀)、株式会社 ジェイ・ムーブ(熊本))が中心となり、実際の運営実行、そして会場や準備の人員までもこの企業が中心となって運営されていることだ。このことから起因するように、開催主旨はあくまで九州・西日本地域の放送・映像関係者のための、ユーザー視点に立ったイベント内容となっている。
元々、西日本における映像音響機器の情報が得られにくく、また東京や大阪圏で行われるイベントへ足を運ぶにも、距離的、予算的にも行きにくいところから、メーカー各社をまとめて一カ所にまとめて招へいして九州のユーザーに一度に見せたい、というユーザー要望から派生した展示会である。そのため、イベント主催の意向=地元ユーザーの意向という部分ではメーカーも参加しやすいという意見を多く聞く。そのためか後援各社には九州の主だった放送局が名を連ねており、また出展各社側もそれなりに主要人員を送り込み、展示内容や製品訴求にも力が入っている。
また近年の展示傾向としても当初からの放送・業務用といった既存のプロ映像・音響分野だけでなく、シネマ分野、デジタルサイネージやディスプレイ、ネット配信など、その展示やセミナー、ワークショップの内容も、その枠を徐々に拡げている。また会場内の装飾などは、地元や近県の関連企業が様々な形で協賛積極参加しており、会場を盛り上げている。
さらにユーザー視点で展示会全体が企画構成されている点として、セミナーやワークショップの内容にもその特徴が現れている。今年は、NHKと映画テレビ技術協会 九州支部が構成する「8Kセミナー」としてNHKが取り組む8Kスーパーハイビジョンコンテンツ制作に関するセミナーや、2013年から開始された、特定ラジオマイクの周波数移行など、時節柄の現場が知りたい先端技術に関する解説セミナー、さらに照明セミナーではフジテレビで4月から始まった「水曜歌謡祭」の照明デザイナー、植松晃一氏を講師に招き実戦的な照明ワークショップが連日実施された。他にもこれから映像・音響のプロ業界を目指す新人へ向けて第一線のプロが解説する基礎技術セミナーやワークショップが積極的に行われているのも、この九州放送機器展の大きな特徴だ。
年を追う毎に様々な新たなチャレンジを行っており、今年の新たな試みとしては学生の参加、協力に力を入れたという。地元の専門学校、大学などにもブース参加を要請し、九州大学 芸術工学部、専門学校九州ビジュアルアーツ、福岡デザインコミュニケーション専門学校、そして福岡スクールオブミュージックアンドダンス専門学校の5校がブース出展で参加。会場内にはプロと学生とが直接接点を持てる場として、2階のJPPA九州支部のブースに『プロダクションカフェ』といった交流の場を設ける等、様々な工夫がなされていた。
最新テクノロジーと機材に直接触れられることに加えて、この業界を担う次の世代とともに作り上げるイベント、それが九州放送機器展の大きな魅力と言えそうだ。
(DVJ BUZZ TV 映像ジャーナリスト 石川幸宏)
統括プロデューサーの森下雄治氏
多くの人がつめかけた照明セミナー会場
8Kセミナーも満席状態だった