【NEWS】NHK 劣化の少ない有機ELデバイス「iOLED」を開発/時空間符号化を使ったSFNによる8K地上伝送実験に成功 より安定したデジタル放送受信が可能に

2013.5.18 UP

左が従来の構造のOLED、右が今回開発したiOLED
上図:SFN送信によるSHV地上伝送、下図:従来(左)と新しい(右)SFN技術の受信スペクトルの違い

上図:SFN送信によるSHV地上伝送、下図:従来(左)と新しい(右)SFN技術の受信スペクトルの違い

時空間符号化のしくみ

時空間符号化のしくみ

 日本放送協会(NHK)は5月16日、日本触媒と共同で、薄くて軽いシート型の有機ELディスプレイ実現に向け、フィルム基板上でも劣化が少なく、長期間安定的に発光する有機ELデバイス(OLED)を開発したと発表した。
 NHKはまた、新たに時空間符号化の手法を用いた単一周波数ネットワーク(SFN)によるスーパーハイビジョン(8K)の地上伝送実験に成功したことも発表した。これにより、SFN技術を用いた場合に生じる受信品質の劣化をなくし、より安定して受信できるようになる。
 どちらも5月30日から6月2日まで開催される「技研公開2013」で展示される予定。

■長期間安定して発光するiOLED
 従来のOLEDは、基板上に陽極、有機層、電子注入層、陰極の順序で積層して成膜していくが、基板材料としてフィルムを使った場合、時間の経過とともに基板側と陰極側の両方向から、大気中の酸素や水分が進入。電子注入層と陰極を劣化させ、寿命を短くしていた。
 そこで、酸素や水分の影響を受けにくい電子注入層の材料を開発。さらに、劣化しにくい陰極用材料を使用。これらの材料を積層して成膜できるよう、陽極と陰極の位置を入れ替えた逆構造とすることで、長期間安定に発光する「iOLED」(逆構造OLED/inverted OLED)を実現した。通常のOLEDは、100日間大気中にさらしておくと発光面積が約半分になってしまうが、iOLEDは同じ期間大気にさらしても劣化しないという。
 今回の研究の一部は、総務省の委託研究「究極の省電力ディスプレイ実現に向けた高効率・長寿命有機ELデバイスの研究開発」として実施したもの。

■OFDMとMIMOを組み合わせたスーパーハイビジョンの地上伝送
 NHKはまた、新たに時空間符号化を用いた単一周波数ネットワーク(SFN)によるスーパーハイビジョン(8K)の地上伝送実験に成功したと発表した。
NHKでは、スーパーハイビジョン(SHV/7,680×4,320ドット)映像の地上放送の伝送方式として、一超多値OFDMと、偏波MIMO(マルチ入力・マルチ出力)を組み合わせた大容量地上伝送技術を研究開発しており、昨年の5月には、世界初の地上波でのスーパーハイビジョン野外伝送実験に成功している。
 現行の地上デジタル放送では、周波数を有効に利用するために複数の送信局で同じ周波数を使用するSFN技術が使われている。このSFN技術では、二つの送信局から同一チャンネルで同じ波形の信号を送信するため、それらの電波を受信すると互いに弱め合う周波数が生じ、受信品質が劣化するという課題があった。
 今回開発したSFN技術では、複数のアンテナを使って送信するSTC(時空間符号化)を用いて、送信所ごとに異なる波形の信号を生成し、各送信局から別々に送信する。受信側では異なる信号を受信するため、電波が互いに弱め合うことなく、より安定して受信することが可能となった。

上図:SFN送信によるSHV地上伝送、下図:従来(左)と新しい(右)SFN技術の受信スペクトルの違い

上図:SFN送信によるSHV地上伝送、下図:従来(左)と新しい(右)SFN技術の受信スペクトルの違い

時空間符号化のしくみ

時空間符号化のしくみ

#interbee2019

  • Twetter
  • Facebook
  • Instagram
  • Youtube