【NEWS】NHK 技研公開 家庭への8K放送をデモ 局内伝送に「U-SDI」 光ケーブルで144Gbps、22.2chの音声信号多重 既存方式によるCATV 8K放送もアピール

2015.6.19 UP

8K衛星放送のケーブル再送信実験

8K衛星放送のケーブル再送信実験

都市部における地上波8K伝送実験の紹介

都市部における地上波8K伝送実験の紹介

不均一コンスタレーションと均一コンスタレーションの比較

不均一コンスタレーションと均一コンスタレーションの比較

13・3型有機ELディスプレー

13・3型有機ELディスプレー

 第69回のNHK技研公開が5月28-31日の4日間、東京・砧の同研究所で開かれた。注目されたのが8K衛星伝送実験だ。カメラからエンコーダー、衛星中継器、デコーダーまで一気通貫で8Kを家庭のテレビに届けるイメージを実演したもので、2016年の8K試験放送に向けた放送環境の進展がうかがえた。CATVによる再送信や地上波での伝送実験も披露。各種8Kディスプレー、大画面シート型有機ELディスプレー技術も展示した。

■8Kカメラからの生中継映像を新インタフェース「U-SDI」で伝送
 8K衛星放送実験では、技研公開会場1階の入口付近に放送局をイメージしたミニ副調整室を開設。お台場に設置した8Kカメラからの生中継映像およびCG映像素材を、ミニ副調整室でスイッチングし1つの番組として作り上げ、BS17ch経由で受信。放送局から家庭に8Kを届けるイメージを実演した(=上写真)。
 スイッチャーで切り替えたお台場からの生中継、CG素材の非圧縮8K映像信号は、新たなインタフェース「U-SDI(Ultrahigh-definition Signal/Data Interface)」を用いて光マルチケーブル1本で、衛星伝送するための圧縮装置であるHEVCエンコーダーと、今回新たに開発したMPEG4 AAC 22.2ch音声符号化装置に伝送。
 この映像・音声の圧縮データをMMT(MPEG Media Transport)形式で多重化し、8K信号をリアルタイム処理できるMMT対応スクランブル装置を用いてCASの情報を乗せる。
 そして送信装置から、16APSKの変調方式を用い、約100Mbpsで光ファイバーを使いNHK放送センターに伝送。ここからBS17chにアップリンクし、技研入口のBS受信用45センチメートルパラボラアンテナで受信した。
 この信号は、デスクランブル、MMT多重分離装置を経てHEVCリアルタイムデコーダー、MPEG4 AAC 22.2ch音声復号装置に入れ、85型8K液晶ディスプレーに表示している。
 ミニ副調整室のモニターに表示された8K映像と、衛星からの電波を受信した映像のディレイは3-4秒だった。
 85型8K液晶ディスプレーは、22.2ch音響を再生するためのスピーカーを内蔵したもので、家庭で22.2chの8K視聴ができることをイメージさせた。
 ここでは、22.2chの音声に対して、特定のチャンネルだけを聴いたり、MCの声を絞ってBGMを強くするといったコントロールが自在にできるダイヤログ制御機能もデモしている。
 8Kの番組制作・放送設備構築に現実味を持たせたのがU-SDI。8Kのフルスペック信号である約144Gbpsの信号を1本のケーブルで伝送できる。今回新たに22.2マルチチャンネル音声多重装置を開発。これは従来、映像しか伝送できなかったU-SDIにおいて、22.2chの音声信号を多重できる装置だ。
 今回、HEVCリアルタイムデコーダーも初公開された。エンコーダーと同様、三菱電機と共同開発している。CATVや衛星放送のSTBと同等サイズの8K市販受信機の試作機も展示していたが、デコーダーはまだ筐体が大きく、試験放送に向けて市販受信機開発の大変さを感じさせた。

■既存の伝送方式でCATV 8K放送も
 さらに技研公開会場では、来年からの8K試験放送をCATVで再送信するシステムも展示。ここでは8K衛星放送実験における衛星からの100Mbpsの受信信号を、現行のCATV伝送方式(256QAM、64QAM)に再変調。CATVの3チャンネルで伝送・復調・合成してMMTの形に戻し、8Kディスプレーに表示している。
 従来からの変調方式をそのまま使えることからCATV事業者にとっては負担が少ない。CATVの8K伝送は総務省令・告示において、技研が開発した方式と欧州で規格化された方式、BS-IFをそのまま流す方式が定められている。
 8K放送の普及にCATVの協力は不可欠。2018年に8K実用放送が開始予定であることから、技研ではCATVにも同時期に8K再送信を実施してもらえるよう技術的な環境を整備する意向だ。
 8K衛星放送の受信機が出てくれば、フロントエンド部分のみ交換するだけでCATV受信機もできる。8K衛星放送からそう遅れることなく、8KのCATVが可能になると期待している。

■伝送技術の工夫で都市部での地上波8K放送の可能性も
 地上波6MHzでの8K伝送実験も紹介した。NHKは熊本県人吉市で8Kの地上波での長距離伝送実験に成功したが、反射波の少ない地方での試みに対して今回は都市部での8K地上波伝送の可能性を示している。
 ここではUHF31chを使って技研から電波を送出し、約8キロメートル離れた渋谷のNHK放送センターで受信。その信号をRFのまま光ファイバーで技研に戻し、リアルタイムデコーダーで復調。85型8Kディスプレーに表示している。
 8Kの地上波伝送方式には、水平と垂直の偏波を使う偏波MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)、OFDM(直行周波数分割多重)を使用しているが、反射波の多い都市部では、その直行性が崩れ、受信できなくなる可能性がある。
 そこでNHKは耐性に強い受信方法を研究しており、今回、「不均一コンスタレーション」という技術を用いた。例えば地デジの変調方式である64QAMは、64点の振幅位相点で情報を送る。その振幅位相点の間隔は均等だ。今回は、8K地上波伝送で用いられている変調方式「4096QAM」のコンスタレーションを少し歪ませることで、均一の4096QAMに比べて1デシベルほどCNを改善できることを紹介した。
 また今回の地上波伝送では、アンテナから受信機への信号伝送も工夫した。従来、水平・垂直偏波用の2系統の出力がある。今回はブースターに周波数変換機能をもたせ、片方の偏波を周波数変換し1本のケーブルに周波数多重して家庭内に送るというイメージを実演した。
 また地上波伝送のコーナーでは、6MHzの13セグメントの内、2セグメントを使い、移動体受信に強いHD品質の映像を伝送するという提案もしている。
 家庭での受信を意識した8Kディスプレーもさまざまな展示があった。8K衛星放送実験のコーナーのほど近くに55型液晶と、13.3型有機ELディスプレーが並べられていた。55型液晶はパナソニック製。13.3型有機ELディスプレーは8Kでは世界最小で、エネルギー研究所の協力で展示している。

8K衛星放送のケーブル再送信実験

8K衛星放送のケーブル再送信実験

都市部における地上波8K伝送実験の紹介

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不均一コンスタレーションと均一コンスタレーションの比較

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13・3型有機ELディスプレー

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#interbee2019

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