【InterBEE 2012】フラウンホーファー研究機構 Android4.1向け5.1サラウンド対応HE-AACなどMPEG-DASH適応型ストリーミングやBBCと共同開発の会話音量最適化技術をデモ
2012.11.7 UP
独フラウンホーファー研究機構(FhG)は、IT系の研究機関としてドイツ国内に60の研究所を含む80の研究ユニットを持つ民間の研究機関だ。その範囲は幅広く、建設技術からエネルギー、安全保障、メディカル、環境、ナノテク、さらには交通・ロジスティクスなど、さまざまな領域でソリューション提供、ライセンスビジネスを展開している。同機関の特徴は、民間ベースで企業や学校、他の研究機関などさまざまな連携を柔軟に行い、産業面での具体的な成果を数多く提供している点にある。
情報・コミュニケーション、特にデジタルメディアの分野でも、符号化技術や3D計測など、映像や音声に関する技術開発で、国際規格に採用されたり、製品化している例は多い。
今回のInterBEEでは、研究機構の一部門である、フラウンホーファーIISがプロオーディオ部門に自社ブース(#4608)を持ち、着うたのコーデックとしても知られる、HE-AACマルチチャンネルと呼ぶ、オーディオの圧縮符号化の国際標準化方式であるMPEG-4 AACの拡張仕様について、同社の最新技術を展示デモするほか、低ビットレートで高品質多チャンネル音声が可能なMPEGオーディオ、BBCと共同開発した音声ミキシング技術を用いた、ウィンブルドン大会において最新のオーディオ技術実験のデモなどを行う予定だ。
■ Android 4.1に必須機能として採用されたHE-AACマルチチャンネル。
HE-AAC多重チャンネル音声はAndroid 4.1に必須機能として採用された。Android4.1対応のスマートフォンやタブレット型端末をホームシアターシステムにHDMIやMHL接続することで、高音質の5.1サラウンド コンテンツを再生できる。また、MPEG-DASHのような適応型HTTPストリーミング技術と組み合わせることで、Android端末が配信プラットホームになる。サービスプロバイダが現在利用可能な最も効果的で最高品質のMPEG標準で簡単にコンテンツを提供できる。
HE-AACマルチチャンネルはフラウンホーファのAndroid用の新FDK AACライブラリーに含まれている。このFDKはver4.1からAndroidに搭載されており、研究所のオープンソースコーデックAAC, HE-AAC, HE-AACv2, AAC-ELD実装を利用できる。
■ HE-AACマルチチャンネルを用いたMPEG-DASH適応型ストリーミング
HE-AACマルチチャンネルがどのように24kbp/sから安定したステレオと160kbp/sまで可能な最高のサラウンド音質を最も適したDASHストリームで実現する技術をデモする。
独特のコーディング効率に加えて、AACコーデックはビットレートを回線のスピードの変動にダイナミック且つシームレスに適応する機能を持っている。
AACの遍在性、効率、メタデータサポート、シームレス音声スイッチング機能はMPEG-DASH及び急拡大するインターネットストリーミング状況にとって欠かせないもの。
■ Extended HE-AAC (xHE-AAC)世界で最も強力な音声コーデック
「拡張HE-AAC」はAACオーディオ・コーデック・シリーズの最新のアップグレード。音楽とスピーチ両用で8~64kbp/sのビットレートに著しい音質改良を実現しながら、従来のHE-AACとの互換性を維持している。無線ネットワークによって音楽配信と衛星放送システムは対象アプリケーションとしてあげられる。
InterBEEのブースにでは、放送シミュレーション設定とAndroidスマートフォンに再生することによって、xHE-AACの高音質を確認できる。トーク・ラジオ、音楽プログラムまたはジングルなど、すべてにおいて一貫した低ビットレート高音質オーディオを可能にする。
■ MPEGサラウンド
アナログ電波の跡地を使用した開始予定の携帯端末や自動車向けマルチメディア放送システムでは音声符号技術としてHE-AACv2+MPEGサラウンドが採用されている。ISO規格に基づくMPEGサラウンドは高品質多重チャンネル音声をステレオなみの低ビットレートで可能にしている。さらに完全互換性によりサラウンド放送はステレオ受信機でも楽しめるので、2chとサラウンド用の平行放送は必要ない。
携帯型端末でも一般のヘッドホンを使用したサラウンドモードを楽しめる。またSXProという柔軟性の高いツールを使えば、ステレオコンテンツを高品質なサラウンドサウンドに変換することもできる。携帯マルチチャンネルサウンド。高音質低ビットレートサラウンド体験できる。
■Dialogue Enhancement: 視聴者による放送番組の「会話」と「背景環境」の音量バランスを調節
テレビ・ラジオにおける音声ミキシングでは会話と環境の音量のバランスが大きな課題となっている。フラウンフォーファーは、この課題を解決するため研究をBBCと共同で行い、最新のオーディオ技術を開発。その成果を今年のプロテニス・ウィンブルドン大会で技術実験した。音声バランスを自由に調節でき、会話の鮮明度を高めることができることが実験でも実証された。これは、視聴者自身が、会話と環境の音量を自分の好みに合わせることができる技術だ。
InterBEEではテニスの試合の放送を流しながら、実際に会話の鮮明度を改善できるデモを行う。サウンドミックスは群衆やテニスコート上の大きな音量と低音量な解説の声から、はっきり聞こえる解説と試合による音の小音量設定まで可能。既存のモノ・ステレオの設備に互換性を持っている。
【InterBEE 2012】
Inter BEEは、国内外のトップレベルの放送機器、映像機器、音響機器、照明機器、IPTV、Mobile TV、クロスメディア、周辺アプリケーションやソリューションが一堂に会する「音と映像と通信のプロフェッショナル展」です。クリエイティブ、メディアビジネスの最新動向を知る機会として、メディアに携わるあらゆる方々に関連した展示会です。
11月14日(水)〜16日(金) 幕張メッセで開催します(入場無料)。