【NAB Show 2013】米放送業界「次世代テレビの前に、モバイルTVに期待」〜スーパーセッション:Mapping the Future of Broadcast Television 〜

2013.4.10 UP

セッションの様子

 9日午前10時30分より、S222にてスーパーセッションの一つ「 Mapping the Future of Broadcast Television」が開催された。TV News/Checkの Harry Jessell氏(共同発行人)を司会に、EBUの Lieven Vermaele氏(Director of Technology and Innovation)、NABの Kevin Gage氏(CTO)、FOX News Groupの Erik Moreno氏(SVP)、Capitol Broadcastingの James F. Goodmon氏(VP & GM)がパネリストとなり、それぞれの意見を示した。(映像新聞 論説委員/日本大学生産工学部講師 杉沼浩司)

■「画質はビジネスのために必要」
 まず、次世代のテレビ放送として期待されるFOBTVについてNABのGage氏とEBUのVermaele氏から解説があり「多様なサービスを流せるパイプであることを目指している」旨が明かされた。4K/8KについてもGage氏は「画質はビジネスのために必要」として高解像化に肯定的な見方をしていた。Goodmon氏も「ATSC規格は20年前のもの。FOBTVでスループットを高め、4K、3D、マルチHD、マルチカメラ、IPといったことを経由するパイプを得たい」と期待を示した。さらに、世界で方式統一がなされることで「地域毎の部品開発が不要となる」との期待を示した。

■「4Kは次世代の画質をもたらす推進力」「マスター用に必要」
 4Kにはニーズが無いのではないか、という質問にGoodmon氏は「業界は多くの投資をしている。それは、マスター用に必要と感じているからだ」と制作側の考えを述べ、Vermaele氏も「次世代の画質をもたらす推進力だ」と積極的な見方を示した。

■「テレビの視聴時間はまだ伸びる」
 テレビの視聴時間が減っているのではないか、との質問には「EU域内での調査では、リニアTVの視聴時間はまだ伸びている」とのデータがあると Vermaele氏が応えた。また、 Moreno氏は「米国では毎月153時間視聴されており、僅かではあるが伸びている」との数字が示された。

■「モバイルTVはリニアTVとの食い合いはない」収益モデルの変容が影響
 「ATSC3.0をどの方向に最適化して適用するか」との質問に、Moreno氏はFOXなどが展開しているモバイルTV「Dyle」を紹介しつつ「モビリティへ期待する」とした。会場からは「世界で、モバイル放送で成功している事業者、フォーマットは存在しないのに、なぜ成功すると考えるか」との質問が寄せられた。 Moreno氏は「Dyleは、地上波と同じコンテンツを毎日24時間流しており、視聴料は無料で、データレートも掛からない。リニアTVの延長であり、リニアTVとの食い合いはない。テレビの視聴者が拒否する理由はどこにもない」とした。収入源については、ケーブルの再送信料を見込んでいることを強くうかがわせる発言もなされた。
 既に、無料の地上波(FTA)は、広告モデルだけではなく、広告モデル+再送信料モデルという形に変容していることが見られる。更に Moreno氏は「FOXは、サイマル放送を念頭にコンテンツを制作している」として、加盟局への配慮がなされていることも指摘した。

■ABCもモバイルに参画、モバイルTVの動きは加速
 司会のJessell氏からは「ABC放送も、昨日”どこでも視聴モデル”に転換した」と、加盟局会議の情報が明かされ、モバイルTVへの動きが加速してゆくとの見方が示された。米国の業界は、ATSC 3.0、モバイルTV、どこでも視聴(TV Anywhere)を3つの柱として進んで行くと見られる。
 

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