【NEWS】 日本テレビ、読売テレビ テレビ中継網で4K映像相互伝送を実験 低遅延高信頼性の局間素材伝送で4K制作環境構築へ

2014.2.7 UP

日本テレビでの4K映像伝送実験

日本テレビでの4K映像伝送実験

マルチプレクサーとH.264コーデック

マルチプレクサーとH.264コーデック

 日本テレビ放送網(東京都港区/NTV)と読売テレビ放送(大阪市中央区/YTV)は1月20日、系列局間の番組配信や素材伝送で使用しているNTTコミュニケーションズの民間放送テレビジョン中継回線サービス(以下、テレビ中継網)で、4K映像を相互に伝送する実験を共同で実施した。すでに4K映像伝送は、衛星回線によるスポーツやライブのパブリックビューイング、FPU・公衆IP回線による素材伝送が試みられているが、テレビ中継網を使った4K伝送はこれまで例がない。
(映像新聞 信井文寿)

■DVB-ASI回線によるデータ伝送の空き容量を利用
 全国の民放局間の番組配信、素材伝送に用いているテレビ中継網はHD-SDI回線とともにDVB-ASI回線がバンドル提供されている。DVB-ASI回線は、主にデータ放送コンテンツを、ネットワーク局に配信しているもので、今回の実験はこの回線を使って実施した。
 同回線の物理的な伝送容量は約270Mbpsで、実データの伝送容量は最大約210Mbps。データ放送では数Mbpsしか伝送しておらず、回線容量としては余裕のある使い方をしている。今回、広帯域の伝送路として4K伝送に利用することにした。
 同回線は、民放連がNTTコミュニケーションズと複数年契約をしているもので、現在の契約回線で4K伝送ができれば、公衆IP回線などによる伝送と比べ、格段に高信頼かつ低遅延で全国各地からの4K中継、4K素材伝送が可能となり、4Kコンテンツの充実につながる。

■4K60pをH.264ハイプロファイル 3G-SDIごとに45Mbpsで伝送
 実験は、NTV、YTVにそれぞれ、アストロデザイン製の4K再生機「HR-7510」、富士通製のH.264コーデック「IP-9610」(メーカーから提供)、マルチプレクサー(DVB-ASI信号多重化装置)、4Kモニターを設置(NTV側は東芝製の民生用84型、YTV側はアストロデザイン製の業務用32型)。相互に4K映像を伝送した。
 映像は3840×2160/59.94p、音声2ch。4K再生機からの4K映像を「田の字」に4分割(1分割1080/60p)し、3G-SDI4本をH.264コーデックに入力。今回使用したIP-9610は1筺体で2本の3G-SDIの処理が可能なため2筺体を使用した。
 各筺体から出力されたDVB-ASI2本をマルチプレクサーに入力し、多重した信号をテレビ中継網のDVB-ASI回線によって伝送している。
 コーデックの圧縮フォーマットはH.264High422 10ビットプロファイル。伝送ビットレートは、今回用いたマルチプレクサーの上限が180Mbpsであることから、3G-SDIごとに45Mbpsとした。
 受信側では2筺体のIP-9610でデコードし、3G-SDI4本で4Kモニターに表示している。
 YTVからは、昨年10月に開かれた『大阪マラソン2013』、NTVからは、東京ドームでの『ジャイアンツ対スワローズ戦』などを伝送した。それぞれ自社でソニー「PMW-F55」などで4K収録、4K制作した映像を使用している。
 ジャイアンツ戦の映像には、朋栄のフル4Kバリアブルフレームレートカメラ「FT-ONE」によるスーパースローの映像も含まれていた。

■「局間の4K伝送を実証。外部との伝送が次の課題」
 NTVとYTVによるテレビ中継網を利用した4K映像の相互伝送実験では、いずれからの伝送映像にも問題はなく、4Kの高精細映像が表示された。
 日本テレビ技術統括局技術開発部長の浦野丈治氏は、「今年はNexTVフォーラムの試験放送があり、コンテンツの制作需要が高まってくるだろう。社内で4Kの環境を構築する中で、局間で素材をやりとりし、加工してコンテンツ制作をするということが考えられる。今回の実験でその可能性を示すことができた」と話す。
 実験を担当した同専門部長の菊地秀彦氏は、「今回、局間の4K伝送は現状のテレビ中継網を活用すれば十分にできることが分かった。生中継を想定すると、外部と局間の効率的な伝送手段を確立する必要がある」と今後の課題について述べている。

日本テレビでの4K映像伝送実験

日本テレビでの4K映像伝送実験

マルチプレクサーとH.264コーデック

マルチプレクサーとH.264コーデック

#interbee2019

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