【コラム】姿を見せ始めた第5世代携帯電話(5G) EU研究プロジェクトMETISが概念を形成 Ericssonは2020年に商用サービス開始へ Mobile World Congress報告(1)

2015.3.16 UP

移動型の5Gテストベッド。会場内で実際に電波を出しでデモを行っている。写真左上の板状の物体が送信機

移動型の5Gテストベッド。会場内で実際に電波を出しでデモを行っている。写真左上の板状の物体が送信機

無線区間のみならず、地上、システム、IoTなど幅広い分野の専門家を集めたEricssonの5Gブリーフィング

無線区間のみならず、地上、システム、IoTなど幅広い分野の専門家を集めたEricssonの5Gブリーフィング

Akamai Technologiesはストリーミングコンテンツの事前蓄積を、モバイル機器までの延伸を計画している

Akamai Technologiesはストリーミングコンテンツの事前蓄積を、モバイル機器までの延伸を計画している

 移動体通信システムの祭典Mobile World Congress 2015(主催=英GSMA)が、スペイン・バルセロナのFira Gran Viaで3月2日から4日までの4日間開催され、93,000名の参加者を得た。出展社数は2,000社以上で、参加者数、出展社数とも過去最大となっている。今年は、第5世代移動体通信方式(通称「5G」)の概念が固まり、要素技術が現れ始めたのが大きな出来事だった。(上写真=METISプロジェクトでまとまった5Gの概念、Ericssonがグラフィック化して会場で展示していた)
(映像新聞 論説委員/日本大学生産工学部 講師 杉沼浩司)

■Ericssonが「5Gブリーフィング」 消費電力1/10で M2Mも包含
 Ericsson ABは、5G向け技術として15GHz帯でのOFDMによる5Gbps無線伝送を会場にてデモした。デモでは、15GHz帯に100MHzずつ4波を取り、これを4x4 MIMOにて通信する。伝送距離は3-5m程度でデモした。アンテナ間に物を置くと通信速度が落ちる様子も示され、実際に電波を出していることを強調していた。
 同社は、2日午後にメディア、アナリスト向けに「5Gブリーフィング」を開催しており、ここで同社が考える5Gの姿が示された。Ericssonによると、5Gは低速低頻度の通信からGbpsを越える通信まで一つのネットワークで対応することを目指すという。これまで、5Gは上方展開ばかりが目についたが、M2Mのような低速低頻度の通信も包含することを確認している。この場合、通信機器の消費電力を現状の10分の一以下に抑えることも語られた。

■EU研究プロジェクトMETISが5Gの概念を形成
 また、機械操作のような非常にクリティカルな領域で使える無線としても開発する。一つのネットワークで、各種の用途に対応させることをめざすという。5Gの概念形成は、EUの研究プロジェクト「METIS」が行った。このプロジェクトには、EricssonやAlcatel-Lucent、Nokiaが参加している。また、日本からNTTドコモも参加している。Huaweyは、ドイツの子会社を通じて参加しているがドコモは、日本からの直接参加である。

■2020年に5Gの商業利用開始
 ブリーフィングでは、5G開発チームから、システムアーキテクチャ、無線、エネルギー消費、管理などの各分野の専門家が登壇し、目指すところを語った。それによると、端末間(End-to-End)の通信速度は現在の10-100倍、接続されるデバイス数も10−100倍を目指し、レイテンシ(伝送遅延)は1msec以下を目指すという。
 5Gは、まだ要求仕様が決まっていないが、同社はこれらを携帯電話方式の標準化作業を行う3GPPに提案し、2018年にトライアル開始、2020年に商業利用開始を目指している。

■Akamai モバイルに最適化したCDNサービスを開始へ
 CDNで知られるAkamai Technologiesは、CDNの機能を移動体通信網の中にまで延伸させることを表明した。新規事業開拓担当のHarish Menon部長が映像新聞の取材に明らかにした。
 CDNは、現在はエッジサーバをISP事業者のネットワーク内に設けることが多い。しかし、利用者がモバイル通信を利用している際は、この構成では移動体通信網には未調整のストリームデータが流れ、効率的利用が行えない。
 Akamai Technologiesの提案は、エッジサーバを移動体通信網内、できれば基地局の近くに置くことで、無線区間の状況に適合させたストリーミングを行うというもの。基地局では、通信内容に触れずに外形的基準からコンテンツ種別を推測し、その情報をメタデータとしてエッジサーバに送り適応を求める。

■高速移動中の映像視聴スムーズに
 更に、効率向上のため、利用確度が高いと思われるコンテンツの事前蓄積(Forward Depositing)を実現するアプリも提案してる。このアプリは、高速移動中にストリーミングに使う無線方式(WiFiかセルラーか、移動中は無線を使用しないか)を選択したり、キャッシュ量などを指定すると、移動を開始する前にスマートフォンなどのモバイル機器にストリーミングをダウンロードしておくもの。高速移動中にストリーミングを利用することをなるべく抑えて、無線ネットワークを効率よく使用することができる。
 この構想は、まだ製品化されていないが、複数の移動体通信事業者と情報交換を始めており、近い将来の展開が見込まれている。

移動型の5Gテストベッド。会場内で実際に電波を出しでデモを行っている。写真左上の板状の物体が送信機

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無線区間のみならず、地上、システム、IoTなど幅広い分野の専門家を集めたEricssonの5Gブリーフィング

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Akamai Technologiesはストリーミングコンテンツの事前蓄積を、モバイル機器までの延伸を計画している

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#interbee2019

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