【NEWS】NHK 世界で初めて8K地上波長距離伝送実験に成功 膨大なデータ伝送を新開発技術で可能に 27km離れた地点で安定受信

2014.1.31 UP

特製の両偏波アンテナが湯前町農村環境改善センターに建てられた

特製の両偏波アンテナが湯前町農村環境改善センターに建てられた

高塚山山頂付近のNHK人吉テレビ中継放送所内に実験設備が収められている。両偏波対応送信アンテナは、パラボラアンテナの左上

高塚山山頂付近のNHK人吉テレビ中継放送所内に実験設備が収められている。両偏波対応送信アンテナは、パラボラアンテナの左上

中継所からは、人吉盆地が一望できる。受信点は,画面右方の湯前町にある

中継所からは、人吉盆地が一望できる。受信点は,画面右方の湯前町にある

現用局舎内に設置するとあって放送品質の機材が用いられている。ラック中央には実験用のアッテネーターが見える

現用局舎内に設置するとあって放送品質の機材が用いられている。ラック中央には実験用のアッテネーターが見える

 NHKは、20日、熊本県人吉市で実施した8Kスーパーハイビジョン(以下、8K)長距離伝送実験に成功した。現行の帯域幅と同じ5.57MHzで、5倍以上のビットレートである91.8Mbpsを実現した。地上波での8K放送に向けて、大きく前進した。
(映像新聞 論説委員/日本大学 生産工学部 講師 杉沼浩司)
(上写真:送信所より27km離れた湯前(ゆのまえ)町にて8K映像が乱れなく受信された)

■膨大な伝送データ量 同一チャンネルに2波収容
 現行放送の16倍の画素数を持つ8Kは、伝送するデータ量も膨大なものとなる。HEVC等の最新の符号化(圧縮)処理を経てもなお、100Mbps近いビットレートが必要になると見込まれている。現行のISDB-T方式では18.2Mbps(64QAMの場合)だが、これでは伝送容量が足りない。
 NHK放送技術研究所(以下、技研)は、この問題に超多値OFDM変調技術と偏波MIMO(マイモ)技術を開発して対応した。4096QAMの導入と、誤り訂正方式等の効率化で現行比2倍強のビットレートを実現、さらにこれを同一チャンネル内に2波収容する偏波MIMO技術で2倍、合計すると現行比約5倍の大容量伝送を実現した。2012年5月には、この方式を用いて東京都世田谷区の技研から4.2km離れた地点への8K伝送(出力1W)に成功している。

■27km離れた地点で安定受信が確認
 今回は、より現実的な実験として、NHK人吉テレビ中継局(出力10W)に人吉実験試験局を開局し、通常放送と同出力で送出した。搬送波数32k、ガードインターバル比1/32、符号化率3/4が用いられている。この信号に8Kコンテンツを乗せ、27km離れた同県球磨郡湯前町の受信点での安定受信が確認された。実験試験局は、昨年11月22日に総務省九州総合通信局より免許が付与され、46チャンネルに「NHKひとよしUHFじっけん」という名称で開局されている。

■干渉の少ない地形を選定
 この実験試験局は、標高672mの高塚山山頂付近にあり、人吉盆地が一望に見渡せる。PCから送り出されるTSを変調し、中継塔に設置したアンテナより水平垂直両偏波で信号送出された。通常放送を行う局舎内に併設するとあって、機材は放送品質のものが用意され、現行放送への影響に十分な配慮がなされていた。また、遠隔モニター装置も取り付けられ、遠隔地から制御が行えるように構成されている。受信点では、デコーダや85型8Kディスプレイが用意され、8Kコンテンツの受信・出画が確認できた。また、移動測定車も配置され、地域内各所での受信状態を確認している。
 人吉地方が選択されたのは、空き周波数があったことと、与干渉の恐れがない実験に適した地形があったことによる。熊本放送局ほか多くの組織と地元自治体の協力により伝送実験が実現した。

■実環境での長距離8K伝送を世界ではじめて確認
 今回の実験について技研の村山研一副部長(研究企画部)は「実環境での長距離8K伝送が世界で初めて確認された」とその意義を語る。同一帯域に両偏波を重ねた電波の伝搬特性データは世界のどこにも存在しない。今後、伝播モデルを構築するためには、伝播状況を実測したデータが必要となる。技研は、偏波間での信号干渉を測定する計測器を独自に開発しており、これは移動測定車に搭載されている。技研は今後も現地で測定を続け、実用化に向けた基礎資料を蓄積することになっている。

特製の両偏波アンテナが湯前町農村環境改善センターに建てられた

特製の両偏波アンテナが湯前町農村環境改善センターに建てられた

高塚山山頂付近のNHK人吉テレビ中継放送所内に実験設備が収められている。両偏波対応送信アンテナは、パラボラアンテナの左上

高塚山山頂付近のNHK人吉テレビ中継放送所内に実験設備が収められている。両偏波対応送信アンテナは、パラボラアンテナの左上

中継所からは、人吉盆地が一望できる。受信点は,画面右方の湯前町にある

中継所からは、人吉盆地が一望できる。受信点は,画面右方の湯前町にある

現用局舎内に設置するとあって放送品質の機材が用いられている。ラック中央には実験用のアッテネーターが見える

現用局舎内に設置するとあって放送品質の機材が用いられている。ラック中央には実験用のアッテネーターが見える

#interbee2019

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