私が見た "Inter BEE2007" ―その4・フォーラム、民放技術報告会、情報発信など

2007.12.21 UP

今回のInter BEEでは、これまで見てきた機器展示にあわせて、様々な併催行事、イベントも開催された。
また事務局の活発な情報発信も感じられた。本号ではそれらについて概略を紹介してみたい。

同時開催イベントとして恒例となっていた国際シンポジウムは今回から"Inter BEE Forum"と名が変わり、昨年までと同様、機器展示会場に隣接する国際会議場ホールで開催された。
初日には放送ビジネスセッションとして放送人の会による「放送ビジネスの将来展望/コンテンツ~いまアジアで何が起きているか!」が、最終日に音響セッション「デジタル放送におけるコマーシャルサラウンド制作の展望と海外動向」と言うテーマで開催された。
2日目の映像シンポジウム「ハード・ソフト・ネットワーク技術革新がもたらすデジタル映像コンテンツ制作の新展開」では、女子美大の為ケ谷秀一氏のコーディネーションのもと、最初にNHKの国重静司氏が、現在の映像界全体を俯瞰した講演を行った。続いてハリウッドDigital Domain社でCG開発に携わっている坂口亮氏は、映画"Pirates of Caribbean"の中の滝のシーンを例に実際のCG制作プロセスについて具体的に解説した。米NVIDIA社のWalter Mundt氏は、人間の顔の皮膚の質感までリアルに表現できるグラフィックボードのパフォーマンスについて、ワークステーションを使用しプレゼンテーションしたが、そのクオリティの高さに驚かされた。さらにシスコシステムズの山崎年正氏は、ネットワークの広帯域化によりコンテンツ制作のワークフローの中でもIP技術の展開が始まっている状況を紹介した。各講師の講演後、全講師と聴講者からの質疑も交え活発なパネルディスカッションが行われた。(右写真1番上)

Inter BEE開幕以来の恒例行事となっている「民放技術報告会」は会期中3日間を通じ、開催された。
送出・送信部門、制作技術部門、回線・伝送部門、データ放送・デジタルサービス部門、ラジオ・音声部門、情報・ネットワーク部門、画像技術部門のセッションにわかれ、全国各局の若手、中堅から79件の報告・発表が行われた。2日目には特別企画として「放送局からテープが消える?~ワークフローの変革~」を標題にしたパネル討論会があった。いささかショッキングなテーマだが、今放送局に起こりつつある取材、編集、伝送から放送までの「ワークフローの変革」について、在京キー局の日本テレビ、東京放送、テレビ朝日、フジテレビ、テレビ東京の専門家により報告と幅広いディスカッションが行われた。(右写真上から2番目)

今、世界的に大きく話題になっているIPTVに関しては、Inter BEE特別イベントとして"IPTV Summit"が開催された。21、22日には国際会議場ホールで専門セミナーがあり、「コンテンツ流通とIPTVサービスの展望」、「IPTVサービス立ち上がりへの期待」、「米国、ヨーロッパにおけるIPTV最新事情」、「地上デジタル放送の展開とIPTV」などをテーマに、総務省、大学、NHK、企業などの専門家が講演や討論を行った。さらに期間中、機器展示会場の一角の大きな共同ブースで、NTTコミュニケーションズ、シスコシステムズ、富士通など関連企業10社が多種多彩なIPTV関連の機器・システム展示がなされ、仮設ステージでは参加各社や特別ゲストがIPTVの最新動向や取り組み状況などのプレゼンテーションをやっていた。(右写真上から3番目)

またJEITA主催の特別企画"DTV WORKSHOP 2007-Towards Full-fledged DTV"が初日に国際会議場で開催された。総務省、ARIB、JEITA、NHKなどの専門家が「地上放送のデジタル化について」、「ISDB-Tの海外普及活動」、「地上携帯型受信の現状と将来」、「将来の超臨場感放送」などのテーマに関し講演を行った。
 
今回、Inter BEEの情報発信が以前よりも活発化した印象を感じた。公式WEB Siteも充実し、この"Inter BEE Online Magazine"も設けられ、期間前から期間中、はては終了後も各企業が出展情報を発信したり、業界専門家がレポートしたり、ユーザーが様々な情報を入手しやすくなった感がある。
さらに今回は、新たな取組みとして"Inter BEE TV"放送も実施された。会場内に設置したスタジオでInter BEE Forumの講師や出展企業の説明担当者へのインタビュー番組などが、会期中放送されていた。(右写真上から4番目)
さらに期間中、会期前後にわたって、Inter BEEニュースセンターチームが取材した映像や各社出展情報などをオンデマンドで配信する"Inter BEE TV News Flash"のWEBサービスが提供されている。Jストリームの協力の下、NTT回線を経てストリーミングサーバに送られ配信されているのだそうだ。Inter BEE関連情報がテキストや写真だけでなく動画像も見られるのは展示ブースの生の雰囲気も知ることができ、大変有効で興味深い試みだ。

筆者も利用させてもらったが、メディア向けプレスサービスも昨年までに比べかなり向上した感を受けた。プレスルームは展示会場に近い地の利の良い場所に一室が確保され、PC、ネット環境が整備され、昨年までより一段と利用しやすくなった。国内外からの多くのメディア関係者が、持参したPCや事務局設置のPCを使い取材情報や撮影画像を整理したり、互いに情報を交換したり、整備されたネット環境を使い作成原稿を編集部に送るなどの作業をしていた。(右写真上から5番目)
IT時代の趨勢とは言え、事務局の積極的な情報発信や企業・メディア関係者が情報発信しやすいような環境整備は、出展者、ユーザーにとっても大変ありがたいことで、今後Inter BEEを一層活発化して行く上で役立つだろうと考える。

4回にわたりInter BEE 2007 について、放送、映像分野に長年関わってきたエンジニアの視点で技術動向を紹介してきた。膨大な出展物や多彩な各種イベントを、限られた時間での取材と筆者の力量不足により十分言い尽くしきれてない点があったことご容赦願いたい。WEB記事と言うことで概略にとどめたが、大凡の技術の動向、潮流を汲み取って貰えれば幸いである。詳細については、他のメディア情報や各社企業情報をさらに参照していただきたい。
技術の進歩、発展はまさにとどまることはない。今回、Inter BEEで公開されたことが、2008年さらに飛躍を遂げ、NABやIBCなどで顕在化し、それらが再び成長しInter BEE 2008に登場してくることを期待したい。そのスタートは既に始まっている。

(映像技術評論家 石田武久)

#interbee2019

  • Twetter
  • Facebook
  • Instagram
  • Youtube