スペシャル対談 映像編 木村太郎 VS 為ケ谷秀一 その2

2007.9.7 UP

その2
さまざまなハードが生み出され、コンテンツの重要性がさらに問われるようになった今、木村、為ケ谷両氏ともに、「ハードの技術を適切に使わねばならない」と強調する。




【木村】
今回のInter BEEで行う映像セッションでは、クリエーターの方たちも参加されるのですね。

【為ケ谷】
ええ、そうです。内容としては、最先端の技術をお話しするのですが、ただ技術的内容だけではなく、どのように映像が作られているのかをお話しする予定で、イメージを広げていただきたいと思います。具体的には、映画で使われているCGによる画像処理、合成したエフェクトがどんなクオリティレベルになっているのかなど、ハイレベルな映画の人たちが、どういうことをやっているのかなどを紹介します。

【木村】
映画を見ていますと、デジタル化することによっても何でもできる、何でもやってしまう映画が多すぎるような気がします。CGが映画の主人公になってしまう。しかし、そればかり見せられても困りもので、さりげなくやった方が効果があるのではないかと思いますが。

【為ケ谷】
おっしゃるとおりです。例えば、スパイダーマンはCGパーソンなんですね。ハリウッドの今の一番の開発ターゲットは、CGキャラクターをいかにリアルに作るかです。それを俳優の替わりにしてしまおうという勢いでやっており、確かに技術的には何でもできるようになっている。しかし、その活用法は、シチュエーションごとに考えなければならない。さりげなく使うというのも可能性はたくさんあり、CGがなければできないような演出もあり、しかも見ている人がほとんど意識しないような使い方もある。今は、CGのプロセスを通さない映画はないくらいです。適切な使い方をして行くということを、常に考えないといけない。

【木村】
観客は目が肥えてきて、これよくできたCGだな、とわかるようになってきた。それを見抜かれたら作った側が負けたような気がします。そうでなければ思い切ってCGであることを売り物にするなど、演出が難しくなるという気がしますね。

【為ケ谷】
今、ハリウッドのCGで最も脚光を浴びているのが、キャラクターアニメーションですね。日本は、二次元の手書き風のアニメが特徴的ですが、ハリウッドはそこにはもう挑戦できないので、自分たちの力を三次元CGに注いでエンターテイメント作品を作っている。テクノロジーをうまく使い分けている。そして、三次元CGモデルを作ることによって、今、ハリウッドでは、キャラクターアニメーションの多くの作品は、三次元立体映画も併せて作っている。コンピュータのパワーが上がってきて、右目用、左目用の映像を1つのCGモデルからも計算で作り出せるようになった。新しい技術を有効に使って新しいビジネスを創出しているのが、ハリウッドの特徴ですね。鑑賞用眼鏡には、ポラロイドのフィルーターを入れたり、スイッチでシャッター方式にしたりして、立体視できるようにしています。

【木村】
普通のドラマが立体化されることも考えらますか。

【為ケ谷】
ありますね。目的によると思いますが、映画が一定のレベルになり、これからの映画ビジネスがどうなるかを考えた場合、新しい技術を使ってどんなサービスを顧客に提供できるのかを考えねばならない。なぜなら、高画質の映画が家庭でも見られるようになると、劇場は何を売りにするのかを考えることになり、劇場でしか体験できないような映画を見せることをビジネスにしようとなる。そのために、フィルムの映写機の代わりにデジタルのプロジェクションが劇場に入り始め、デジタルシネマという新しいジャンルが普及し始めています。

【木村】
デジタルシネマではメディアもフィルムではなく、衛星中継で映画館に配信したりするのは当然の成り行きでしょうか。

【為ケ谷】
そうですね、光ケーブルで転送することもできます。デジタル情報として扱えるようになり、サーバーにデータをファイルして活用する。でも、最大のポイントは海賊版をどう防ぐかですね。

【木村】
このように、業界でできた技術はあっという間に民生用に移っていく。すると、現実にアップルはすでにやっていますが、家庭に向けて配信するというシステムも出てくる。

【為ケ谷】
デジタル化する最大のメリットは、いろんなメディアに展開できること。それぞれのメディアに適合したデジタルデータにして送り出せる。デジタルデータにするということは、前述のコンピュータによるリアルタイムの画像技術につながるのです。この技術があることによって、いろんなメディアにリアルタイムに流していけるし、インターネットの中にも流していける。これはIPTVというジャンルですが、この分野が急激に伸びている。

【木村】
商品名を出すのは憚られるのですが、アップルはアイチューン(iTunes)という面白いものを作ったと思います。音楽だけだったものが、映画になり、テレビ番組になり、さらにアップルテレビというものを作った。家庭のテレビにアップルテレビをつけておくと、家庭内の無線LANを通じてコンピュータ内の映像をいつでも引っ張り出して自分のテレビで見ることができる。それを42インチのプラズマで観ていますとNTSCクラスの画像は確保できる。今まで見たこともなかった画像を観られるというのは、将来のあり方のひとつかなと思います。このように、いろんなハードが出てくるのですが、アップルの場合、ハードとアイチューンというソフトの供給システムとくっつけたのがうまかった。

【為ケ谷】
そうですね、ハードの技術だけでなくコンテンツをいかに乗せていくか、どんなコンテンツがヒットするのかを含めてビジネスとして成功しているのですね。(その3に続く)

#interbee2019

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