私が見たInter BEE 2011(その2)カメラの技術動向

2011.12.2 UP

8K CMOSセンサーカメラ”F65”(ソニー)
ロンドンオリンピックでも使われる一体型3Dカメラ(パナソニック)

ロンドンオリンピックでも使われる一体型3Dカメラ(パナソニック)

プログレッシブ フルHDカメラ(池上通信機)

プログレッシブ フルHDカメラ(池上通信機)

小型コンパクトなファイルベースのムービーカメラ(キャノン)

小型コンパクトなファイルベースのムービーカメラ(キャノン)

フィルムライクな高画質・高機能カメラ"ALEXA  M"(ナック)

フィルムライクな高画質・高機能カメラ"ALEXA M"(ナック)

 (その1)では、今大会の全体状況、併催行事の各種イベントについて概要を紹介した。本号からは、カメラや制作系、ディスプレイなどの技術動向について3回にわたり見ていきたい。
 (その2)映像メディアの進展にあわせ成長やまないテレビカメラの技術動向について見てみたい。どのブースでもカメラは目立つ所に並べられ、見学者に撮影体験させるというように、テレビカメラは展示会場の華である。デジタル移行を超え、テレビカメラはフルHD仕様が主流となリ、さらにデジタルシネマの進展に対応する高精細度4Kカメラやメディアとして定着しつつある3Dコンテンツ制作用カメラのように高画質化、高機能化され、その一方で小型コンパクトな業務用カメラやデジタル一眼レフカメラによるムービー撮影、と言うようにテレビカメラは多様化、多極化している。

 ソニーは各種カメラを出展していたが、今回の目玉は8K CMOSセンサー単板を搭載しHDから4Kを超える制作まで広い用途に使える高精細度カメラ”F65”だった。スーパー35mm相当のイメージセンサーを搭載し、従来のデジタルシネマカメラをさらに性能アップし、1~120コマ/秒のハイフレームレートも可能で、24pの映画制作では最大5倍速、CMやテレビ番組の30pの場合4倍速の高速度撮影が可能である。暗部のSN比や階調再現性が良く、黒つぶれ白飛びのない画調が得られ、色再現性の点でも広色域になり、フィルムルックのトーンが出せるようになった。また新開発のSRMemoryレコーダをドッカブルに搭載もでき、16bit RAWデータをそのまま記録することが可能となった。スイートルームでは同機を使って撮影された高品質のコンテンツが、4Kデジタルシネマプロジェクターにより大画面に公開上映されていた。また3D用カメラとして、1/2”CMOS3板を搭載し、XDCAM EXと共通の記録フォーマット、記録メディアを使う小型軽量のショルダーカムコーダも展示していた。3.5”サイズの視差バリア式3Dビューファインダーを採用しており、多様な表示モードを選択し眼鏡なしで立体映像を撮影できる。

 パナソニックは、P2HD、AVCCAMなどの豊富なラインナップモデルを出展していた。P2HDシリーズでは、ハイエンドモデルP2 "Varicam”と同じ220万画素2/3”CCDを搭載し、小型軽量だがより高性能化されたモデルを展示した。また業務用P2ハンディカメラは、220万画素1/3”3MOSを使いP2カードスロットを2基備え、AVC-Intra100/50コーデックに対応するようになった。最近のトレンドの一つになっている大判の4/3”MOSセンサーを使ったマイクロフォーサーズマウントの低価格のフルHDカメラレコーダも展示されていた。同社は2012年ロンドンオリンピックで、本格的に3D番組を制作することが正式に決まっている。本番制作に使う各種3D機器を展示していたが、3Dカメラとして一体型2眼式カメラレコーダ2モデルが並べられていた。一つは既に国内外の多くの3Dコンテンツ制作で既に実績をあげているモデルで、もう一つは放送業務、映画制作用にさらに性能、機能を向上した機種である。220万画素1/3”3MOSセンサーとAVC-Intraを組み合わせ、フルHD、10bit、4:2:2で高画質3D映像の撮影が実現できる。17倍ズームを内蔵し、高精度に組み立てられた一体型ツインレンズは光軸・画角などの事前調整が不要なうえ、フォーカス、ズーム、アイリス調整も左右2眼が正確に同期して行える。小型で操作性が良く、高品質の3Dコンテンツ制作が機動力高く行えるようになる。

 池上通信機も既に実績高いテープレスカメラGFCAMとあわせ新開発の各種カメラを並べていた。新製品のフラッグシップモデルは、230万画素のプログレッシブCCDを採用し3G-SDIの広帯域出力に対応し、16bitの映像処理により自然感のある階調再現性を実現した。3G信号を応用することで2倍速スローモーションの映像表現も可能になった。また小型コンパクトながらスタジオカメラ並みの高画質で、低照度下でもAVC機能により高い色再現性が得られるフルHDマルチパーパスカメラ、さらに4/3”CMOSラージセンサーを搭載しシネマ用レンズが使えるモデルも展示されていた。

 テレビカメラやシネカメラ用レンズ、一眼レフカメラなどで高い実績を持つキャノンは、最近動画撮影分野にも積極的に参入している。昨年も出展した小型コンパクトでファイルベースのムービーカメラに加え、今回、撮像素子(1/3"CMOS)を3板化し、4”サイズの高精細ビューファインダーを装備し、シネマやドラマなど画質重視の番組制作にも使える上位モデルも展示した。また記者の取材用に適している手のひらサイズの機種も公開した。さらに最近急速に増えている動画撮影機能を備えたデジタル一眼レフカメラとして、今回、イメージセンサーに大型単板の高精細度CMOSを搭載し、最高約10コマ/秒の高速連写、約120枚の連続撮影が可能なニューモデルを展示し評判になっていた。報道分野のフォトグラファーはもちろんムービーカメラマンや映像作家のクリエイティブなコンテンツ制作と利用分野は広がりそうだ。

 ナック・イメージクテノロジーは、NHKと共同開発でエミー賞を受賞した高速度カメラの後継機として、性能、機能をさらにアップしたモデルを出展した。2/3"220万画素3板式CMOSを搭載し、放送用カメラレンズが使え、フルHD対応で24~1000fpsの可変速撮影ができ、96GBのメモリーを搭載し300fps時38秒間録画できる。感度は4倍向上し、池上通信機と共同開発の映像処理系により一層の画質向上とフリッカーレスになった。プログレッシブ走査のため、スポーツ中継のみならず映画やテレビドラマ、CGとの合成でも高品質のスロー映像が得られる。また同社ブースには代理店を務めるアリフレックスのフィルムカメラライクなアレクサシリーズの新モデル"ALEXA M"を展示していた。従来機と同じ35mmサイズで解像度3.5KのCMOSを搭載し、PLマウントでシネカメラレンズが使え、フルHD/2K/DI(Digital Intermediate)に対応する。カメラヘッド部と本体は光ケーブルで接続分離でき、小形軽量のヘッドは小型クレーンや3Dリグにも装着でき撮影の機動性が大いに向上した。ダイナミックレンジと低ノイズでフィルムルックの映像が得られる。

 高精細映像システムで高い実績を持つアストロデザインは、今回もカメラから記録系、ディスプレイまで4Kトータルシステムを出展した。その中でカメラについてはマイクロフォーサーズ対応でヘッド部とプロセッサーを光ケーブルで接続、延長可能なニューモデルの4Kカメラを展示した。
 フォトロンは、単板CMOSを搭載し画素数2048×2048、フルHDで2000fpsのウルトラハイスピードカメラを出していた。F、PL、B4マウントが取り付け可能で、内蔵メモリーを持ち撮影直後に高画質のスロー映像が再生可能で、スポーツ番組、CMや映画制作などで効果的映像表現に使える。またこのカメラ2台を3 Rialty のリグに装填した3Dカメラも公開していた。
 西華産業は、RED Digital Cinemaのデジタルシネマカメラの最新モデル"EPIC"を出展していた。解像度5Kのイメージセンサーを使い、120fpsの高速撮影もでき、小型でリグに装着し高解像度での3D撮影も可能である。また、P+S Technik(独)のカメラ、ARRI社のALEXA、Motion Timer社の微速度撮影用3軸モーションコントローラシステム(キャノン製カメラを使いデモ)なども公開していた。
 ノビテックは、VISION RESEARCH(米)のハイスピードカメラ”PHAMTOM”シリーズを出展した。最新機種は新型センサー(画素数2560×1440)を搭載し、感度が約6倍アップし、フルHDで24P・30Pの10~2500fpsの可変速撮影も可能になった。またスポーツ中継や映像制作に使われている高画質スローモデルや高速・高感度モデルも並べ、高品質のスロー映像を公開していた。

<right>映像技術ジャーナリスト(学術博士) 石田武久</right>

ロンドンオリンピックでも使われる一体型3Dカメラ(パナソニック)

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プログレッシブ フルHDカメラ(池上通信機)

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#interbee2019

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