私が見た "Inter BEE2007" ―その2・高画質・特殊カメラ、モニターの動向
2007.12.7 UP
その1…ではテープレスカメラの動向を紹介したが、本号ではより高品質なカメラや特殊機能のカメラと映像品質を管理・評価する上で重要な映像モニターの動向について見てみたい。
小型・軽量のテープレスカムが注目される一方で、ドラマ、CM、映画利用などより高画質化への要望に応えるカメラも各社から多数出展されていた。
ソニーのハイエンド機CineAlta F23は、フイルムカメラライクのデザインに加え、可変速撮影も可能だ。2/3"型3CCD、14ビットA/DでフルHD、60p/i、50 p/ i 、24 p各フォーマットに対応し、撮影コマ数は4:4:4信号記録時1~30fpsの範囲で設定できるそうだ。高画質の番組、CM制作、デジタルシネマなど幅広い利用が期待される。(右写真一番上)
松下電器はスタジオ、フィールド両用で、デザインを一新したマルチフォーマット対応カメラを出展した。新開発の220万画素IT-CCDと14ビットA/D付き新DSPを搭載し、低スミア、高SN比、広ダイナミックレンジを実現した。池上通信機のハイエンドカメラは新開発2/3" CCD(230万画素)を採用し、14ビットA/D と独自の映像プロセスにより,従来の運用性、操作性はそのままに高画質、高SN比、高感度化した。日立国際のスタジオカメラは、新開発の2/3"CCD(220万画素)、ワンチップDSPを搭載し、14ビットA/D、HD/SDフォーマットに対応する高画質モデルである。
これらの高画質カメラの他に、特殊な環境・条件、目的に使う高速度、高感度、超小型カメラなども数多く出展されていた。
米国Iconix社の超小型カメラは1/3"3CCDを使い重量わずか68g、東芝から出展のモデルは1/3"3CCDのフルHDで重量は65gだ。超小型ながらいずれもフルHDTVに対応し色再現性も良く、特殊環境下での撮影や医療応用分野などでの利用が期待できる。会場で評判になっていたのは、月探査衛星「かぐや」に積み込まれ、11万キロ彼方の月周回軌道上から月面および地球の美しいハイビジョン映像を撮影した池上の小型カメラだ。220万画素CCDを使い、重さ1.8kgと言うコンパクトなHDカメラである。(右写真上から2番目)
肉眼や通常のカメラでは捉えられない一瞬の現象を撮影できる超高速度カメラも何社から出展されていた。
ナック社はハイスピードカメラ2機種を出展した。NHKと共同開発した"Hi Motion"は、フルHD対応(220万画素)のCMOS3板式、毎秒12~300枚、録画時間約11秒、既にスポーツ中継番組などでしばしば使われているそうだ。もうひとつの"MEMRECAM"は従来比16倍相当の高感度CMOS(130万画素)を搭載し、最大1000枚/秒(時間長約9.6秒)である。
日立国際の超高速度カメラもNHK技研と共同開発したもので、30万画素CCD単板式で、フォトダイオードと素子内部メモリー(144フレーム分)を直結配置し、最大100万枚/秒の超高速撮影が可能だそうだ。外部メモリー(5000フレーム)と併用すると1000枚/秒(時間長約5秒)の記録が可能となる。受光部の面積を大きくし従来比10~20倍感度を向上してある。コンパクトで、機動性が高く教育・科学番組やスポーツ中継などで大いに威力を発揮しそうだ。(右写真上から3番目)
ベルギーのI-Movix社の超高速カメラは、CMOS単板(100万画素)を搭載し、毎秒250~5000コマまで1080i、720pで撮影でき、16GBのメモリーを内蔵し1000fpsの場合約25秒間収録再生できるそうだ。リアルタイムでの録画、再生が可能なのでスポーツ番組などで活用できそうだ。ノビテック社は米Vision Research社のハイスピードカメラ"Phantom HD"を展示した。420万画素の高解像度CMOSを搭載し、フルHDTVで毎秒1000コマ(33倍速)の高速撮影が可能で、科学番組、スポーツ番組で威力を発揮しそうだ。
NECから小型・軽量の高感度カメラが出ていた。フルHD対応、220万画素3CCDを搭載し近赤外波長帯の撮影モードを装備し、夜間の高感度撮影も可能で様々な利用が期待できそうだ。
番組制作にとって映像品質を管理・評価する映像モニターは非常に重要だ。暗部や白の階調、色再現に優れ、応答性の良いCRTが長年使われてきたが、今や製造中止となり手持ち品を延命させ使っている状況だ。代替モデルが求められており、その要望に応えるように何社かから映像モニターの出展があった。
ソニーは液晶型モニター"LUMA"シリーズを出展した。高純度LEDバックライトと独自カラーマネージメントにより放送規格準拠の色再現性を実現し、階調再現性に優れ、広視野角で、倍速黒挿入表示により動画残像感を低減した。信号フォーマットとして480iから1080i/p、さらにD-CineやWUXGAにも対応する。画面サイズは8.4"、17"、23"に加え、42"型も出展した。ブース横の暗室でCRTと液晶モデルを並べて見せていたが、画質の差はかなり小さくなってきた感がした。(右写真上から4番目)
松下電器も液晶型モニターの26"、17"、8.4"、7.9"型を並べて見せてくれた。広視野角の液晶パネルを採用し、高速画像処理系により高速応答とした。色空間変換技術によりCRT同様のEBU準拠の色再現性を実現している。大型2機種の解像度はWXGAでモスモニ用、小型機種はXGAで狭い中継車やカメラファインダーにも使えそうだ。(右写真上から5番目)
池上通信機はCRTと新開発の液晶型を比較できるように縦型ラックに実装し展示していた。新モデルは26"~17"サイズで、解像度はWXGA、広視野角、高輝度、高コントラストで応答性、色再現性が良い液晶パネルを採用し、マルチフォーマットに対応する。日本ビクターはフレームディレイが少なく広視野角タイプ、マルチフォーマットの液晶モニター 24"~9"の各モデルを並べて展示した。アストロデザインは26"~6"までの多彩なラインナップを展示した。16:9のワイドタイプで高輝度、高コントラスト、広視野角の液晶パネルを採用し、タイムコード、音声レベル、画質調整表示機能も有している。
数年前から高画質で期待されたFEDがエフ・イー・テクノロジーから出展されていた。ピクセル毎に電子放出源を持ち、電子で蛍光体を励起し発光させる低消費電力の薄型平面ディスプレイである。暗部の再現性が良くピーク輝度も高く、インパルス駆動で応答性が良く動画ぼけが無い。自発光型なのでバックライトも要らず超薄型と多くの特徴を有している。制作現場で在庫の少なくなっているCRT後のマスターモニターとして期待できそうだ。
次号では進展目覚ましい符号化技術、超高精細映像技術の動向を探ってみたい。
【映像技術評論家 石田武久】