【ニュース】3Dディスプレイへの挑戦が続く「FPD International 2009」 ~ 台湾、韓国が世界の3Dディスプレイの牽引役になるのか? ~
2009.11.4 UP
AOU 65”レンチキュラー12視差裸眼3D,2D混在対応
AOU 8眼ライブ
HDMI1.4のステレオ表示検査信号での検査が必要に
LGの無線トラッキング機能つき偏光メガネ
<<フラットパネルが一堂に会する総合展示会 FPD International>>
10月28日~30日までパシフィコ横浜でフラットパネルディスプレイの総合展「FPD International 2009」、が開催された。フラットパネルということで、LCDやプラズマは元より、EL、電子ペーパーなど次世代のディスプレイも出展されている。
LCDに関しては、その薄さ(SAMSUNGが世界最薄を謳う39mm 40”を展示)やユニークな形状(各社が円形やハート型、超横長、べゼルレスなどを展示)が従来になく斬新なものが多くみられた。中でも3Dディスプレイはあらゆる方式が展示されており、さながら3D方式の品評会の様相を呈していた。
<<台湾と韓国の5社で3Dディスプレイのほぼ全ての方式を網羅>>
3Dディスプレイにおいて日本メーカーの場合は、1社で「裸眼」か「メガネ式」のどちらか1つを展示しているケースが多いが、台湾と韓国のメーカーにおいては、1社で「裸眼」、「メガネ式」の両方を展示しており、サイズや表示周波数のバリエーションも豊富であった。
【台湾と韓国の3Dディスプレイ出展会社】
台湾
・AUO (AU Optronics Corp.)
・CMO (Chi Mei Optoelectronics)
韓国
・LG Display
・SAMSUNG Electronics
・SAMSUNG Mobile Display
そのなかからユニークなものをいくつか紹介する。
<<AUOの65” 3D/2D混在表示対応裸眼立体ディスプレイ>>
このディスプレイのユニークな点は、画面の任意矩形エリアを2D化することができる点である(ソフトによるパーセント指定と説明していた)、写真のとおり、画面左の電車が3DCGの立体表示で右側の表が2D表示である。
レンチキュラー方式12視差で、3D立体映像のコンテンツは12枚のタイリングされた小画像として計算し、視点順にドットを並べ替えて表示しているとのことだった。
レンチキュラーが細かいからか、2Dエリアには小さな数字が表示さていたが問題なく読むことができた。ちなみに表示解像度は写真の状態で2Dエリアが3840x2160(30%)、3Dエリアが1280x540(70%)である。
<<8台のビデオカメラによる3D裸眼立体ライブデモ>>
AUOは、46インチ裸眼8視点のレンチキュラーディスプレイを使用し、8台のビデオカメラを使用したリアルタイムの立体ライブデモを行っていた。ディスプレイの上部にビデオカメラ8台を設置し<写真>、入力された映像を粗く間引いたうえでレンチキュラーに合わせてドットを並べ替えて表示しているだけなので、2D/3D変換をしているわけではなく、単なる画像合成といった方が適切であろう。
また、カメラ8台は平行ではなく中心以外は1度から2度程度内側を向いているとのことだった。
これは決められた撮影位置(足形がつけてある)に立った時に立体のクロスポイントがくるように、手でカメラの向きを合わせたようで、割と無造作に設置してあるようだ、したがって合成された映像は立体としては多少見にくい状態である。
これは、このシステムの性能ではなくカメラとの関係が正しくないからであり、適切なカメラを選び、厳密に調整したらもっと立体感は得られると思う。
<<SAMSUNG、フィリップスのライセンスにより裸眼立体ディスプレイを製造>>
サムスン電子のブースでは52インチの9視差裸眼立体ディスプレイを展示していた。
会場の説明員は明らかにしなかったが、29日と30日に日本サムスンで行われた「サムスンデジタルサイネージオープンフォーラム」での追加取材により、フィリップスのライセンスによりサムスン電子が製造することが明らかになった。
年明け以降の発売ということで時期は明確になっていないが、フィリップスが3Dディスプレイから撤退したと伝えられるなか、デプスマップ方式が継承されて市場に投入されることは、デジタルサイネージなどの市場から歓迎されることだろう。
<<日本の3Dディスプレイメーカーの展示>>
大手の3Dディスプレイは参考出品が多かった(※台湾、韓国勢も大半は参考出品)。
シャープや東芝モバイルディスプレイ、NEC液晶テクノロジー、JVCなども3Dディスプレイを展示していた。
シャープは裸眼ではなく、アクティブ方式のTVを展示していたがリフレッシュレートは非公開としていた。台湾や韓国のメーカーが堂々と120Hzや240Hzを謳う中、公開しないのは得策とは思えない。
その他、JVCの4K(3840x2160)、偏光方式(X-pole)の3Dディスプレイを使って、(株)スリーディーがリアルタイムレンダリングのデモをしていた。
<<商品化ではニューサイトジャパンやHYUNDAI ITが健闘>>
また、輸入品ではあるがニューサイトジャパンンとHYUNDAI ITは「買える」3Dディスプレイを出展していた。CEATECも含めて、日本、韓国、台湾、の大手メーカーの3Dディスプレイはほぼ出尽くしたが、いずれも参考出品が多く、手に入るものは少ない。
その点、ベンチャーが手掛ける3Dディスプレイは入手できるものが多い。
ちなみに、ニューサイトジャパンでは21.5“2D/3D切替スイッチ付きの4視点パララックスバリア方式の裸眼立体ディスプレイを10万円を切る価格で販売予定とのことである。
<<3Dディスプレイに欠かせない周辺技術、HDMIVer.1.4の検査に対応>>
ディスプレイの接続に使用するHDMIであるが、Ver.1.4で立体視をサポートすることになり、今後ディスプレイや周辺機の新製品には順次採用されていく見込みである。
サポートされるフォーマットは、大別してFrame by Frame、Line by Line、Side by Sideの3方式で、これらの信号が正しく送られているかなどを検査する信号発生器がアストロデザインから出ていた。今後の3D立体ディスプレイの量産化への対応は着々と進んでいるようだ。
<<人知れず実用になっていた、3Dキオスク>>
実は、液晶素材を出展していたMERCK(メルク:ドイツの医薬・化学品メーカー)のブースに3Dディスプレイを搭載したキオスクが置いてあった。デザインがブースとマッチしており素晴らしいもので、気付かれた方もいらっしゃるかもしれない。これは売り物ではなく、MERCKが自社製品の説明用に置いている、販促ツールである。
2画面構成となっており、正面が3D裸眼立体ディスプレイで、テーブルに上向きになって埋め込まれているのが操作用の2Dタッチパネルである。
なんと、この3D映像はリアルタイムレンダリングされているもので、タッチパネルで見たい向きや大きさなどを変えることができる。液晶の構造を分かりやすく説明しているコンテンツである。
筆者は2007年にアムステルダムで開かれたIBCでほぼ同じものを見たことがある。
それは、ドイツのVISUMOTION社のものであった。MERCKもドイツの企業であることを考えるとこのキオスクはVISUMOTION社のものである可能性が高い。
一方で参考出品が多い中、このように実用になっている3Dディスプレイがあることは大変意義がある。そして、ただ歩いていたら「立体が目に飛び込んできたので見てしまった」訳で、いみじくも3Dサイネージとしての効果が実証された結果となった。
今後は、参考出品ではなく、このような実用的な3Dディスプレイにお目にかかりたいものである。
(3D立体映像/デジタルサイネージコンサルタント 町田聡)
AOU 65”レンチキュラー12視差裸眼3D,2D混在対応
AOU 8眼ライブ
HDMI1.4のステレオ表示検査信号での検査が必要に
LGの無線トラッキング機能つき偏光メガネ