【インタビュー】映画『TAKAMINE アメリカに桜を咲かせた男』<2>プロデュース兼助監督 嵜野準也氏 RED ONE撮影からハリウッド業界最大手、EFILMでDI&フィルムレコーディング

2011.5.13 UP

映画「TAKAMINE アメリカに桜を咲かせた男」より
映画「TAKAMINE アメリカに桜を咲かせた男」の撮影風景

映画「TAKAMINE アメリカに桜を咲かせた男」の撮影風景

スタジオレヴォ代表 嵜野準也氏

スタジオレヴォ代表 嵜野準也氏

■日本映画の制作態勢にハリウッドのワークフローを導入
 映画「TAKAMINE」では、ハリウッドの一流ポストプロダクションシステム・ワークフローを織り交ぜている。そのコーディネートには、スタジオレヴォの存在がある。同社は現地ロサンゼルスで、日本の映画、映像制作作品において、ハリウッドの各種プロダクションサービスをコーディネートできる数少ない会社の一つだ。「TAKAMINE」では、同社代表でもある、嵜野準也氏がアメリカ側のプロデュース兼助監督を担当した。通常では莫大な制作予算がかかると思われているハリウッドの制作態勢をどのようにして日本の映画制作に取り込んだのか、嵜野氏に聞いた。(DVJ BUZZ TV 代表/映像ジャーナリスト 石川幸宏)

<嵜野準也氏 インタビュー>

—ハリウッドのDIプロダクションフローについて
 「デジタルインターミディエイト(以下DI)とは映画編集の際に素材をデジタル化してカラコレ作業を行うプロセスの事。元来フィルム撮影された素材は、タイミングという大まかな色彩調整でしかカラコレができなかったが、素材フィルムをスキャニングしデジタル化する事によってより明確なカラコレが可能になった。こうした事から、ハリウッドでは現在スタンダードなプロセスとなっている」
 「デジタルテクノロジーの革命により撮影自体もデジタル化が進む映画業界では、デジタル素材でもDIで仕上げる作品が一般的だ」
 (※米国では一般的に『カラーコレクション』とはカラーを統一する作業を指し、『カラーグレーティング』とは具体的に明るさや色彩を細部まで調整する事を指す)
 (※DIではフィルム撮影の場合、テレシネ作業(ビデオテープ記録)するのではなく、スキャニングをしてデータとして保存する所に違いがあります。その違いはテープでは1080Pが最高の質になりますが、スキャニングでは2K又は4Kなどのより高い質を保つ事ができる)

—当初DIではなく、リニアのDaVinciでカラー処理する予定だったが、フルDIに変更した理由は? またDIでやるのと何が違うのか?
 「今回「TAKAMINE」では、Mysterium-X チップを搭載したRED ONEで撮影した。普段は巨大なハリウッド映画を数多くこなしているEFILMも時代物の日本の作品には大きな興味を示してくれた。低予算にも関わらず、日米のスタッフが撮影した素材を気に入って頂き、本来なら2K PlusのDaVinciで仕上げる予定だったものをDIで作業することに決まった」
 「DIとは上記のようなカラコレプロセスを指す。DaVinciのソフトにもDIに対応しているものもあるが、EFILMではDIではないSD/HD/2K対応のDaVinciを使っている。こちらのシステムはDIが主流になる前に、業界スタンダードに使われていたカラコレソフトウェア。一方、EFILMのDIシステムはAutodesk 社のLustreのプラットフォームを元にEFILM独自でEWORKsというシステムを構築している」
 「この二つのシステムの違いはツールで、DIでのカラコレではドローイング/トラッキング/アイソレーションなどのツールにより、細部にこだわったカラコレが可能。例えば顔の色の修正でも目だけは別に選択した色を選ぶというような事もできる」

—フィルムレコーディングをLAでやるメリットは?
 「一番のメリットはやはり値段。日本で行うコストの30〜50%安くなる。もう一つのメリットは高度な技術力だ」
 「弊社が提携するEFILM社はハリウッドに於いても業界最大手。DIのサービスだけでなく、フィルムレコーディングの技術は他のラボよりも群を抜いている。その理由は、多くのポスプロ会社はカラコレを自社で仕上げてもフィルムレコーディングはEFILMで仕上げるケースがほとんど。ARRIのレコーダーを13台フルに稼働しているラボであるからこそ、その技術も確かなものになる」

 「カラコレに関しての日米の差は、なんと言ってもカラリストの技量。ハリウッドでは現在カラリストの役割が昔と比べてとても大きなものになっている。撮影監督(DP)とカラリストは撮影の前からテストを繰り返し、映画のトーンを決めていく。こうした事で撮影中からデイリーの素材をカラリストはチェックしていき、DI作業で目指す色合いに支障がきたさないように撮影中からチェックする体制で作業を進めている」
 「ハリウッドではこうした技術の高いカラリストとDPとのコラボでよりクオリティーの高い映像を仕上げていく。「TAKAMINE」でも、DPが希望するトーンに加えカラリストがアイデアを提示してきてDPが感心する場面が何度もあった。こうした技術は日頃からレベルの高い仕事をしてきた経験によるものだろう」

スタジオレヴォ
http://www.studiorevo.com/

東京事務所
株式会社スタジオレヴォ
〒156-0041
東京都世田谷区大原1-23-21 下北沢 with’s 303
(Tel) 03-3325-3062

ロサンゼルス事務所
Studio Revo, Inc
3144 S. Barrington Ave Suite B
Los Angeles, CA 90066
(Tel) +1-310-971-8534

写真:©2011 TAKAMINE制作委員会

映画「TAKAMINE アメリカに桜を咲かせた男」の撮影風景

映画「TAKAMINE アメリカに桜を咲かせた男」の撮影風景

スタジオレヴォ代表 嵜野準也氏

スタジオレヴォ代表 嵜野準也氏

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