私が見た"NAB SHOW 2011"における技術動向(その2、3D、デジタルシネマ編)

2011.4.28 UP

多種多彩な“Beyond HD”システムを出展のソニー
4K高精細度大画面PDPを並べたパナソニック

4K高精細度大画面PDPを並べたパナソニック

屋外会場の3Alityのプレゼンテーション

屋外会場の3Alityのプレゼンテーション

多種多彩な3D技術が展示された3Dパビリオン

多種多彩な3D技術が展示された3Dパビリオン

SSDによる4Kシステムの実演展示(アストロデザイン)

SSDによる4Kシステムの実演展示(アストロデザイン)

 前号では今回のNABの状況、全体概要について紹介した。本号では、最近のInter BEEやIBCにも見られるように、映像メディアとして定着したと言えるデジタルシネマの動向およびますます大きな展開をしている3D関連の技術動向について見てみたい。
 デジタルシネマに関しては、機器展示会に先立つ土日の2日間、SMPTE(米国映画テレビ技術者協会)とEBU
(欧州放送連合)共催で今年10回目となるDCS(デジタルシネマ・サミット)が開催された。標準化の問題、3Dも含めシステムやコンテンツ制作の問題、家庭における3Dなど多岐にわたるテーマが議論、検討されたように、今やHDTVを越える映像メディアとして完全に定着していると言える。機器展示会場においても、4Kや8Kの高精細映像システムの出展が数多く見られた。

 ソニーは"Beyond HD"のコンセプトを掲げ、広大なスペースのブース内に、3D、2K、4K、8Kにわたる多種多彩な機器、システムを展示していた。注目は解像度8KのCMOSセンサーを搭載したカメラ"F65"である。スーパー35mmサイズのセンサーは、一般的なセンサーとは異なる画素配列構造で水平方向8K、総画素数約2000万を実現した。24pの映画制作時には最大5倍速、CMやテレビ番組など30pの素材撮影では4倍速の高速度撮影が可能である。ダイナミックレンジやSN比の点で、従来モデル以上の高画質を確保し、黒つぶれや白飛びのない画調で、色再現性は広色域になりポスプロ段階でのカラー補正の自由度が増す。カメラ本体からセンサー部分のカメラヘッド部を分離できる構造になっており、3Dカメラリグへの装着、狭い場所での撮影も可能になり、ますます高品質の3Dや4Kデジタルシネマコンテンツの制作が盛んになりそうだ。
 一方、業務用の小型、軽量の2眼式一体型のフルHDの3Dカムコーダが公開されていた。1/2"CMOS3板を2式搭載し、MPEG-2圧縮により2枚のSXSメモリーカードにL/R映像を記録する。肩にのせて自由なアングルで撮影でき、ドキュメンタリーやスポーツイベントなどでの3D制作がやりやすくなる。また1/4"CMOSを使った世界最小・最軽量で低価格の3Dカメラも展示されていた。民生機と同じ10倍ズームと手ブレ補正機能も搭載し、BD記録フォーマットを採用しているので、そのままBDにも収録できる。3D放送や中継用サブカメラとか業務用の3Dコンテンツなど3D市場のさらなる活性化に寄与しそうだ。

 パナソニックは3Dコンテンツ制作から家庭用3DまでEnd to Endでの3D市場創出に積極的に取り組んでおり、今回のNABでも3Dへの力の入れようは従来にも増して大きかった。同社特有の横長ブースの壁面には、152"、103"および85"サイズの大型PDPを並べ、迫力ある美しいフル4Kの高精細映像と魅力的なフルHDの3D映像(120Hzシャッター式)を映していた。3D制作系については、昨年発売し現在世界的に使われている一体型2眼式3Dカメラレコーダを今回さらに高画質化、機能アップした新型モデルを出展した。高感度で高解像度1/3"3MOSセンサーを搭載し、AVC-Intraを採用、フルHDで10bitの高画質3D映像を撮影収録できる。2眼式17倍ズームレンズを組み込み、2チャンネルのカメラの光軸や画角の調整は不要で、フォーカス、アイリス、ズームも左右2眼が正確に同期して作動する。世界中の各種マルチフォーマットに対応し、今年秋に商品化する予定だそうだが、今後、スポーツ中継から映画制作まで、幅広い分野で、高画質でかつ効率的な3D制作が進むと期待される。またこの一体型3Dカメラの他に、小型ボックス型でマルチフォーマット対応フルHDカメラを3Ality社のハーフミラー型リグに装着した大型の3Dカメラも並んでいた。さらにマルチフォーマットライブスイッチャーに3D出力ボードを装着し、デュアルSDI信号を一体的にスイッチングできる小型、低価格のデジタルAVミキサーや3Dアシスト機能を搭載したLCDモニターも展示されていた。

 デジタルシネマ分野で世界的に展開しているRed Digital Cinemaが3年ぶりにNABに帰ってきた。しばらく別会場で自社製品のプレゼンテーションをやっていたが、LVCCと離れた場所にもかかわらず大勢の見学者が訪れ、同社の機器、システムに対する関心の高さを誇っていた。今年はサウスホールの一郭に、有名になっているRed色の大きなテントを張り、今回目玉のRed Epicや従来からのRed One、各種アクセサリーを展示していた。テントの中は大勢の見学者であふれ、なかなかお目当てのカメラに近寄れないほどだった。EpicはRed Oneの上位機にあたり、解像度は5Kで120fps(4K時)の高速度撮影でき、やや小型になり3Dリグへ装着し高解像度での3D撮影が可能になった。テント裏手には4Kシアターと3Dシアターが開設されていたが、以前は入場待ちの大行列ができたものだが今年はわりと空いており10分位の待ちで入場できた。シアターでは、Epicで撮影した4Kおよび3D作品(コメディタッチの作品と「カリブの海賊」など)を200"位の大画面で上映していた。

 3D映像制作分野で世界的に大きな実績を持つ3ality(米)は、セントラルホールとサウスホールの間の衛星中継車などが多数並ぶ屋外展示会場の中に、3D制作中継車とテントを設置し、豊富な3D関連システムのプレゼンテーションをやっていた。テント内にはソニーやパナソニック、RED社のカメラを同社の2台並行式やハーフミラー合成型のリグ(2台のカメラを一体化するための架台)に搭載した3Dカメラを多数並べていた。さらに屋外に設置した3Dカメラで撮影した3D映像をそのまま制作し3D映像の公開をしていた。

 "3D@Home Consortium"は、3D映像技術の規格化、商品化や普及などを目的に創立された国際団体で、3ality、Discovery、21th Century、THX、IMAX、DOLBY、ソニー、シャープ、サムスン、AUOなど40数社が加盟している。今年もセントラルホールの地の利の良い場所に、3Dパビリオンを開設し、参加各社から3Dカメラ、3D映像処理系、2D→3D変換技術、各種3Dモニターや3D眼鏡など多種多彩な出展があり、それぞれ工夫を凝らした3Dコンテンツも公開され、大勢の見学者で賑わっていた。近年映像系にも積極的に参入しているドルビーは、波長分割方式による3Dシアターを開き映画作品などの高品質の3D映像を見せていた。

 超高精細映像システムで高い実績を持つアストロデザインは、2K用非圧縮、4K用の非圧縮および圧縮(JPEG2000)によるSSD(フラッシュメモリー)レコーダを出展した。その中で小型コンパクトな4Kカメラで撮影した映像を3G-SDIで2K用SSDに非圧縮で記録し、それを再生、デコードした4K映像を56"型QFHDのLCDモニターで見せていた。また同SSDを使った3D映像システムや開発中の4K非圧縮のSSDも展示されていた。SSDは高画質、大容量の割りに小型コンパクトで、今後テレビ、映画、産業用など広い分野で利用が期待される。
 3Dの展開が盛んになる状況下、2Dで制作された旧作品や新たに通常の2D用機器で制作される従来型作品を、信号処理により2D映像を奥行き感のある3D映像に変換する技術が、幾つかのブースで公開されていた。JVCは会場内情景を小型のHDカメラで撮影し、リアルタイムで変換した3D映像をフルHDの50"位の液晶テレビで見せていた。またフルHDで5倍ズーム付きの一体型2眼式3Dカムコーダや2カメラ並行式3Dカメラも並べ、DILAによる3Dシアターでは、映画やアニメーションなど迫力ある3D映像も上映していた。<right>映像技術ジャーナリスト 石田武久(学術博士)</right>

4K高精細度大画面PDPを並べたパナソニック

4K高精細度大画面PDPを並べたパナソニック

屋外会場の3Alityのプレゼンテーション

屋外会場の3Alityのプレゼンテーション

多種多彩な3D技術が展示された3Dパビリオン

多種多彩な3D技術が展示された3Dパビリオン

SSDによる4Kシステムの実演展示(アストロデザイン)

SSDによる4Kシステムの実演展示(アストロデザイン)

#interbee2019

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