【SIGGRAPH 2011】SIGGRAPHにおける注目論文(2)WETAが流体シミュレーションで新手法 〜12月 香港開催のSIGGRAPH ASIAへ向け〜
2011.10.29 UP
写真(e)
■ワークフローを効率化する流体シミュレーション技法「ガイド・シェープ」
ボリューメトリックなダイナミック・シミュレーションの代表格といえるのが流体シミュレーションだ。ウェタ・デジタル社は流体シミュレーションの論文セッションでもプロダクションワークに直結した興味深い手法を発表した。
3D流体シミュレーションを用いて複雑な液体の表面の動きを演出上の要請にそぐうようにうまくコントロールしながらつくりだすことは至難の業だとされてきたが、ここではガイド・シェープというものを導入してこれを可能にしている。
ガイド・シェープとは、あらかじめ大雑把な流体シミュレーションやアニメーターによって作成された液体全体のアニメーションの特徴が失われないように、液体表面付近のより細かい動きをコントロールする。液体表面だけをコントロールするのではなく表面近傍の厚みのあるボリュームをコントロールするように設定されているところが大きな特徴で、これによって非常に激しい海面の動きなども、意図したとおりのボリューム感と形状を保ってシミュレートすることができるようになる。
ウェタ・デジタル社は論文を共著したカナダのブリティッシュ・コロンビア大学が開発に絡んでいるNaiadという流体シミュレーション・ツールを導入して社内の流体シミュレーション・システムの改築を進めている。今回の論文の手法もその実装例ではNaiadが使われており、『猿の惑星』のクライマックスシーンでヘリコプターが海中に落下するシーンでもNaiadの最新機能が活用されているそうだ。
【画像説明】(上=画像(a)-(d)、下=画像(e))
画像(a):大雑把な流体シミュレーションによって作成された液体のアニメーション
画像(b):ガイド・シェープ = 画像(e)のΩL(液体表面付近のボリューム)とΩG(液体内部のボリューム)との境界の動きを(a)のアニメーションから抽出して物理的な整合性がとれるようにアップデートしたもの。
画像(c):(a)の情報を参照して液体の表面部分のみのシミュレーションをより緻密におこなうと、(a)の液体全体の動きの特徴(特に表面部分の液体が液体内部に深く入り込む動き)が失われてしまう。
画像(e) :ガイド・シェープを用いてコントロールしながら ΩLのシミュレーションをより緻密におこなうことによって (a)で指示されたとおりのボリューム感や形状を保持した液体表面の細やかな表情をつくりだすことができる。
(c)20011 ACM, Inc.
論文“Guide Shapes for High Resolution Naturalistic Liquid Simulation”
(Michael Nielsen and Robert Bridson, Weta Digital & University of British Columbia)より
写真(e)