【ニュース】デラックス傘下のVFXスタジオ CISとメソッド・スタジオ、統合し社名統一へ

2011.6.2 UP

メソッドの副社長 ドン・グラス氏

■08年、10年に買収されたVFXスタジオ2社が統合へ
 6月1日、ハリウッドのデラックス・エンターテインメント・サービスグループ(以降デラックスと表記)は、同グループ傘下にある2つのVFXスタジオ、メソッド・スタジオとCISを統合、社名を「メソッド・スタジオ」へと統一したと発表した。
 この統合により、メソッド・スタジオ(以降、メソッドと表記)は体制を強化し、ハイエンドのビジュアル・エフェクツを映画とコマーシャル市場へ提供していく構えだという。
 デラックスは、北米、欧州、オーストラリアに拠点を持つ総合ポストプロダクション・グループ。傘下にEFILMやCOMPNY3などを持つ。

 ハリウッドのCISは2008年1月に、そしてサンタモニカのメソッドは2010年秋にそれぞれデラックスに買収され、これまで同社傘下のVFXスタジオとして別々に運営されて来たが、ここに来て社名を統一する運びとなった。

 デラックスのクリエイティブ・サービス部門代表であるステファン・ソネンフェルド氏は「我々デラックスはCISとメソッドの統合により、より洗練されたサービスを世界各地の拠点でクライアントに提供致します」とコメントしている。ソネンフェルド氏は、メソッドと共にデラックス傘下になったサンタモニカのポスプロ「Company 3」の元社長であり、著名なDIカラリストでもある。
 メソッドの副社長であるドン・グラス氏は「この統合を機に、よりアーティスト主導のVFXスタジオというカラーを出していければと考えています」と語り、「今後は、映画スタジオや映画監督、そして広告代理店等のクライアントと共に、最先端のソリューションを生み出していく構えです」と付け加えた。
 ドン・グラス氏は、ニュージーランドのWETA DIGITALのCTOだったポール・ライアン氏を、テクノロジー部門の新しい副代表としてメソッドに招き入れ、全社的なパイプラインの改良を進めていく計画だという。

 CISは買収前、ハリウッドの本社に加え、バンクーバーにあったレインメーカー・スタジオを買収しCISバンクーバーとして発足させ、ニューヨークやロンドンにも拠点を構えていた。今回、これらの世界各地にある拠点をメソッドに統合した事で、ロンドンやバンクーバー等の政府が実施している税制優遇制度の恩恵を受けつつ、ワールドワイドでの制作体制を実現出来た事も強みだ。

■ハリウッドで進むポストプロダクションの再構築
 メソッドが最近VFXを手掛けた映画作品には「The Tree of Life」「ワイルドスピード5 」「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」などの話題作が並び、テレビコマーシャルの分野でもブリジストンのスーパーボウル用スポットや、VESアワードを受賞した「Halo Reach: Deliver Hope」等がある。

 ご存知の読者の方もおられるかも知れないが、メソッドが拠点としているサンタモニカのスタジオは、一昔前はPOP(パシフィック・オーシャン・ポスト)というビデオ・ポスト・プロダクションであった。POPは映画「ボルケーノ」の頃よりVFXに参入した経緯がある。その後アセント・メディア・グループ傘下のRIOTに買収され、建物の看板がPOPからRIOTへ変わった。更にその後、アセント・メディア・グループがメソッドを買収し2008年に12月にはRIOTとメソッドを統合、そして昨年のデラックスによる買収という、いかにもアメリカらしく買収による変革を遂げてきたVFXスタジオなのである。

 今回の統合で、「メソッド」の名前を残すか、それとも全く新しい社名にするかで社内公募が行われ、実際に新社名のアイデア等もいくつか出されたが、なかなか「メソッド」を超える逸案が登場せず、最終的に現在の社名を残す形に落ち着いたというエピソードがある。

■ロサンゼルスの拠点拡大に動くデラックス
 このように、中堅VFXスタジオを買収しながら成長しているデラックスだが、今回の統合がハリウッドの中でどのような意味を持つのか、今後気になるところだ。
 今、全世界のVFX業界はカナダのバンクーバーに注目している。しかしデラックスは地元ロサンゼルスのVFX部門を固めようとしており、ある意味ユニークな戦略に出ていると言えるだろう。
 もっとも、大手VFXスタジオと中堅VFXスタジオとは、手掛ける作品の規模が異なる為、新生メソッドが大手VFXスタジオと仕事を奪い合うような事はないが、今後の動向から目が離せない注目株と言えるだろう。

(鍋 潤太郎)

<デラックス (Deluxe)>
 正式名称はデラックス・エンターテインメント・サービスグループ(Deluxe Entertainment Services Group Inc.)
 総合ポストプロダクションとして、これまでにもフィルム現像やDIなどのサービスを大手メジャースタジオに提供してきた。EFILMやCOMPANY3等の著名DIハウスを傘下に修めた事によりDI分野を強化、ここ数年はVFXスタジオの買収に力を注いでいる。ちなみに、昨年倒産したアサイラムVFXに買収を持ち掛けたのもデラックスである。 www.bydeluxe.com

<メソッド・スタジオ (Method Studios)>
 数々の受賞歴を誇るVFXスタジオで、ロサンゼルス、バンクーバー、ニューヨーク、そしてロンドンに拠点を持つ。
 アーティスト主導のクリエイティビティを前面に出す事で知られ、映画やテレビコマーシャル、そしてモーション・グラフィックスなど幅広い分野でVFXのサービスを提供している。親会社はデラックス・エンターテインメント・サービスグループ(Deluxe Entertainment Services Group Inc.) 日本では、株式会社デジタル・ガーデンと2008年10月にに業務提携を結んだ事でも知られている。 www.methodstudios.com

<CIS(Composite Image Systems)>
 CISはコンポジット・イメージ・システムズの略。ハリウッドにある老舗VFXスタジオで、設立は1984年。映画、テレビ、そしてコマーシャル等の幅広い分野でハイエンドなVFXを制作している。その後デラックスに買収され傘下に入る。2008年にはレインメーカーのバンクーバーとロンドンがデラックスに買収され、それぞれCISバンクバー、CISロンドンとリブランドされ今日に至っている。これまでCISはデラックス・エンターテインメント・サービスグループ(Deluxe Entertainment Services Group Inc.)傘下のVFXスタジオの1つとして運営されていたが、今回のメソッドとの社名統一により、CISの伝統ある3文字は消滅する模様だ。


※ バンクーバーで実施されているカナダBC州政府による税制優遇制度やバンクーバーに進出したVFXスタジオ等について詳しく知りたい方は、「バンクーバーVFX業界ビデオレポートDVD」をご参考あれ http://vfxhollywood.jimdo.com/

#interbee2019

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