【BIRTV2009】オートデスク BIRTVで最新ソリューションをデモ 同社ブルーノ・サージェント氏、プレスカンファレンスで「バーチャル・プロダクション」を紹介

2009.9.9 UP

フィルム・TV産業担当マネージャーのブルーノ・サージェント氏
クリエイターの人だかりのたえなかったオートデスクブース

クリエイターの人だかりのたえなかったオートデスクブース

 オートデスクは、8月26日から29日まで、中国・北京で開催されている放送機器展BIRTVにおいて、同社の最新製品によるテレビ番組、映画制作向けビジュアル・エフェクト、フィニッシング、カラー・グレーディング、ポストプロダクションのソリューションをデモした。また、立体3Dについてもソリューションを紹介した。また、29日には中国メディア向けのプレスカンファレンスを開催し、中国における同社の事業の方向性について説明を行った。


<<ブルーノ・サージェント氏がプレスコンファレンスに参加>>

 オートデスクは自社ブースで、テレビ番組制作、劇場映画の制作事例を紹介したほか、8月に米ニューオリンズで開催されたSIGGRAPHで発表した新製品ラインアップをデモした。また、中国国内2社の代理店のブースでも製品をデモしている。
 プレスカンファレンスでは、オートデスク メディア&エンターテインメントのフィルム・テレビ産業担当マネージャーのブルーノ・サージェント(Bruno Sargeant)氏が登壇。冒頭、同社のメディア&エンターテインメント部門の位置づけについて、次のように話した。
 「オートデスクは、パーソナルコンピューターによるCADの効率化を実現するソリューションを提供する会社としてスタートし、現在では、メディア&エンターテインメントも含め、デザインのクリエイティビティを推し進めるという理念を持っている。現在では、185カ国で75万の企業、900万人のユーザーから支持されており、200万人もの学生にも利用されている。開発も含め7000人の雇用があるグローバル企業だ」
 「メディア&エンターテインメント向けのツール、ソリューション開発は中でも、最先端の技術を導入し製品に反映させる部門と位置づけており、教育、放送、映画の分野にとどまらず、アニメーション、ゲーム、ポストプロ、政府関係など、デジタル技術を用いて映像を制作する幅広い分野に浸透している」


<<中国市場の成長性に期待、業界発展への貢献に意欲>>

 ブルーノ氏は、続いて、8月3日にSIGGRAPHで発表した、同社の3次元アニメーションソフトの新バージョン、および、複数の製品を組み合わせた各種の「スイート」について説明を行った。
 その上で、ブルーノ氏は、同社のツール開発、ソリューション提供の方向性について、次のように説明した。
 「我々のゴールは、クリエイターの創作を具体化するためのツールを提供するとともに、コンテンツ開発のための時間を短縮し、より効率的なパイプラインの構築を実現してもらうことで、全体の制作コストの圧縮に貢献することだ」
 さらに中国市場について、世界的な経済不況の中で「唯一、スピードを緩めず、着実に成長している」とし、「オートデスクとして、中国におけるクリエイターの技術向上を支援するため、ツールの開発・販売のみでなく、人材育成や産業促進についてどのように貢献できるか、政府の関係部署と協議を進めている」と述べた。


<<効率的なワークフロー構築が世界的なテーマに>>

 ブルーノ氏はまた、ハリウッドをはじめとした先端のエンターテインメント業界の動向について、「4つのトレンド」として「映画におけるVFXの処理数の増加」「立体3D(S3D)の本格化」「データセントリックの重要性の高まり」「パイプラインにおけるプリビジュアライゼーションの導入」を挙げた。
 VFXの処理数の増加について、ブルーノ氏は、「映画『タイタニック』の当時、VFXは1分間について3カット程度だったが、現在では、VFX映画の平均で1分間に12カットまでに増えている。それにも関わらず、制作コストは当時から変わっていない。プロダクションは、こうした厳しい環境の中で、いかに効率的なワークフローを構築するかが、重要になってきている」と述べた。
 次にS3Dについては、「立体3D映画の人気上昇とともに、映画スタジオでも立体3D映画の計画が次々と発表されている。しかし、これも制作現場では通常の6倍の制作コストがかかることから、やはり作業効率の向上が求められている」と述べた。
 こうした状況を踏まえ、「より効率的で投資効果の高いパイプラインの構築が求められている。そのためには、制作段階から制作後にわたるデータの共有・管理が重要であり、データセントリックなパイプラインの構築が必須。オートデスクが提供するLustreは、そうしたデータセントリックなパイプラインの中で有効に機能している」と話した。


<<新たな制作手法「バーチャル・プロダクション」>>

 また、プリビジュアライゼーションの新たな動向として、「プリプロダクション、ポストプロダクションがデジタル化し、制作・収録部分のデジタル化も進みつつある。デジタルシネマ用カメラの登場は制作工程全体のデジタル化につながる。さらに新たな動きとして、『バーチャル・プロダクション』という方法に注目が集まっている」と述べた。「バーチャル・プロダクション」とは、実写映像を用いずに、完全にフル3DCGのみで制作を行う方法の一つ。モーションキャプチャ時に、モデルの最終CGキャラクターの演技や、背景を合成した状態をリアルタイムに映像化することで、モーションキャプチャーを単なるデータ取り込みではなく、監督による「演出」を伴った「撮影」の場として位置づける方法。ブルーノ氏は、この新たな制作手法において、同社の「モーションビルダー」を用いた事例を紹介した。それによると、監督など演出担当者は、Sumilcamと呼ぶディスプレーを持ち、ディスプレーを通して、バーチャル空間におけるCGキャラクターの動きや表情を確認することができる。Sumilcamは、バーチャル空間を覗くための窓のように用いる。例えば、モーションキャプチャーのモデルの前でSumilcamを掲げれば前から見たCGキャラクターが映し出され、背後で掲げればCGキャラクターの後ろ姿を見ることができる。このSumilcamを用いて、表示された映像をそのまま「収録」し、後処理工程で「編集」することも可能という。「現在、多くのプロダクションが関心を持っており、すでに映画『アバター』や『TinTin』でも採用されているほか、ジム・ヘンソン・スタジオが、子供向けテレビ番組の制作で使用している」と話した。

クリエイターの人だかりのたえなかったオートデスクブース

クリエイターの人だかりのたえなかったオートデスクブース

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