【NAB Show 2011】NABトピックス<1>猛威を見せたブラックマジックデザイン社の新製品群と高性能/低価格製品群の台頭
2011.5.9 UP
シンプルなブースには人垣が絶えない
注目を集めたATEMシリーズ
本格プロダクションスイッチャーも低価格で提供
■その年のトレンドを象徴するサウスホール1階手前位置
NABShowを毎年視察していて感じるのは、その年の勢いのある企業が必ずサウスホールの1階手前にブースを配置していることだ。今年その位置にやって来たのは昨年から引き続き同位置で出展のグラスバレーと、ブラックマジックデザインだ。6,7年前はアビッドとアップルの定位置だったこの場所は、映像制作機器のその年のトレンドを抑えていることと大きく関係している。それが今年はグラスバレーとブラックマジックデザインだということだと捉えることもできる。
特にブラックマジックデザインはここ数年、どの世界中の展示会でもその躍進ぶりは目覚ましく、今年は14もの新製品を発表した。そしてそのどれもが低価格かつ高品質で、今年の目玉となったのは昨年夏にEcolab社を吸収合併して、そのライブスイッチャー類の低価格製品化が注目されていたスイッチャー類で、大方の予想通りの低価格な注目製品発表した。
■めざましいブラックマジックデザインの躍進ぶり
従来のプロダクションスイッチャーの常識を覆すような『ATEM』シリーズのラインナップ。最安値995ドルの『ATEM Television Studio』は、放送品質のH.264エンコーダーを搭載した1Uラック式のHDMI入力も可能な本体と、ATEM専用のソフトウエアベースでコントロールする新次元のスイッチャー。特にHDMI入力を備えていることで、これを利用すればHDMI出力しか持たない低価格のハイビジョンビデオカメラがライブ放送などでも有効利用できることから、今後はインターネット放送の『USTREAM』 など、ネット配信には欠かせない存在となるかもしれない。
その他、本格プロダクションスイッチャーとして上位2機種を発表。『ATEM 1M/E プロダクションスイッチャー』で本体価格が2,495ドル、『ATEM 2M/E』で4,995ドルといずれもソフトウエアコントロールも可能で低価格を実現している。もちろんライブスイッチャーとして利用するためのハードウエア専用パネルも用意。(1M/E:4,995ドル、2M/E:14.995ドル)
■次世代を見据えた製品群を一挙に発表
これらATEMシリーズに加え、カメラとATEMスイッチャーまでの距離をHDMI/SDIから光ケーブルに変換して最長40kmまで延長可能となるスイッチャー用のライブカメラソリューションとして『ATEM Camera Converter』という新コンセプトの製品も、595ドルという破格値で発表したことも画期的だ。
この他のジャンルでは、アップルの最新I/O規格“Thunderbolt(サンダーボルト)”に対応したポータブルキャプチャー/再生デバイスUltraStudio 3D(995ドル)や、4K対応のDeckLink 4K(595ドル)、さらに世界最小のSSDレコーダーとして10bit非圧縮SDI/HDMIを収録出来るHyper Deck Shuttle(345ドル)とブロードキャスト向けのSSD2スロットを備えた1UラックレコーダーHyperDeck Studio(995ドル)も発表と、次世代の映像制作環境を見据えた製品群を一挙に発表して会場を席巻した。
ちなみに昨年、低価格帯でのカラーコレクション/カラーグレーディングソフトの発表で話題が集中した『DaVinci Resolve』も新バージョン8.0を発表。しかもこのソフトウエアバージョンアップは無料で、さらに機能制限をかけたカラーコレクションのお試し版ソフトとなる、無償配布版の『DaVinci Resolve Lite』を7月にリリースする。
ブラックマジックデザイン社のブースにはこの他にも、mini converterシリーズの堅牢ボディー/接触部分の保護を強化した新デザインモデルや、正式発表されていないテスト段階の新テクノロジーなどを参考展示するなど、今後出てくる新製品にもまだまだ事欠かないようで、当分の間、映像制作機器界の注目の的となりそうだ。
(DVJ BUZZ TV代表/映像ジャーナリスト 石川幸宏)
シンプルなブースには人垣が絶えない
注目を集めたATEMシリーズ
本格プロダクションスイッチャーも低価格で提供