【映像制作の現場から】映画「いぬばか」(11月21日(土)より渋谷シアターTSUTAYAほか全国順次ロードショー)企画・プロデュースの太代眞裕氏と監督のヨリコジュン氏インタビュー
2009.11.27 UP
(C) 2009 桜木雪弥/「いぬばか」フィルムパートナーズ
太代真裕プロデューサーとJUN YORIKO監督(右)
<<映画主演デビュー スザンヌが 100匹を超える犬と競演!>>
映画『いぬばか』(11/21(土)より渋谷シアターTSUTAYAほか全国順次ロードショー)は、愛犬・るぱんとともに熊本から上京し、ひょんなことからペットショップ「わっふる」で働くことになった宮内すぐりが、不思議な能力で犬たちと心通わせ、周囲の人たちを巻き込みながら、犬との付き合い方を学んでいく物語。本作で映画主演デビューを飾るスザンヌと、総勢100匹を超える可愛いワンちゃんたちがスクリーンいっぱいに大活躍。原作は、桜木雪弥「いぬばか」(集英社・月刊ヤングジャンプ連載中)。監督は、ヨリコジュン。脚本は、山田典枝。出演は、スザンヌ、徳山秀典、宮崎美子ほか。企画・プロデュースの太代眞裕氏と監督のヨリコジュン氏が、インタビューに答えてくれた。
画像:(C) 2009 桜木雪弥/「いぬばか」フィルムパートナーズ
<<「人と犬との絆をテーマに、ヒューマンな部分を描いてみたい」>>
◆プロジェクトはどのようなきっかけで進行したのですか?
太代「桜木雪弥さんの人気コミック「いぬばか」のことは2年前から気になっていました。集英社さんにお話させていただいて1年ほどして、最終的に当方の企画内容にご賛同いただき、映画化が実現しました」
太代「ヨリコジュン監督は、人と人とのテーマを掘り下げるのが非常に巧みな人です。今回は、人と犬との絆をテーマに、“死が訪れるそのときまで、犬を愛し、大切に育てる”というメッセージを込めて、ヒューマンな部分を描いてみたいということで、監督にもご賛同いただけてスタートできました」
<<「原作に忠実に」、「子供から年配の方まで楽しんでもらえるように」>>
◆監督ご自身が脚本のなかで最も重要と思われた点は?
ヨリコジュン「原作は意図して、すぐりの相棒の愛犬るぱんを雑種犬にしているのだと思い、映画のるぱんも、タレント犬ではなく、雑種犬にしました。似てるという条件を大前提に探しました。原作者の意向を酌むとともに、人と犬とのつながりを重点的に見せたいと思いました」
ヨリコジュン「子供から年配の方まで楽しんでもらえるようにということで、技術的に凝ったことは何もしていません。テンポも速くないし、ワンちゃんの可愛らしさを見てもらえるようにしました」
ヨリコジュン「映画初出演・初主役のスザンヌさんの演技は未知でしたが、お会いしたら、原作のすぐりのキャラとリンクしたので、雰囲気を崩さないようにするため、演技指導はしませんでした。彼女はお茶の間の好感度そのままに等身大で演じています」
◆原作と異なり、熊本に設定した理由は?
太代「スザンヌさんの出身地が熊本でしたから、彼女とすぐりをオーヴァーラップさせて作ろうということで、熊本県に設定しました。母役は、熊本県出身の宮崎美子さんにお願いしました。母娘のリアルな熊本弁のかけあいにもご注目ください」
◆ロケ地は、あちこちロケハンをされたのですか?
ヨリコジュン「ええ。ペットショップが舞台ですから、店舗をどうするか悩み、色々な情報を収集して調べていた時に、僕が偶然見つけたんです。外観がピンクと水色の、可愛いらしい店でした。店内に入って首輪とかを見ながら、店長さんと犬の話をしていたら、人柄も判り、いい人だなって(笑)。実は…と相談を持ちかけたら、ぜひ!という話になり、即決でした」
ヨリコジュン「撮影中は、店の看板が「わっふる」になっていました。実際は、トリミングやペットのグッズを扱う店で、ワンちゃんは販売していなかったので、撮影用にゲージを作りなおして、ワンちゃんを入れてというふうにしました。実は、撮影中もトリミングのほうは営業していたんです」
<<出演する犬が楽しんでできるように配慮>>
◆撮影で一番ご苦労されたことは?
ヨリコジュン「僕らより、ワンちゃんのほうが大変だったと思います。言葉の通じない彼らがストレスを感じるやりかたはしたくなかったので、彼らが楽しんでやるトレーナーさんを探して、そういう方たちと組ましてもらいました。メインの役それぞれに、ワンちゃんが共演していますが、待ち時間は自分のワンちゃんと過ごすなど、現場はとても和やかでした。撮影終了後、阿樹場博士役の前田健さんはフレンチブルドックのジダンをそのまま飼われてしまいました」
ヨリコジュン「相手がワンちゃんなので、台本通りになるかどうかわかりませんから、そこらへんは緩くしておいて、現場対応で進めました。欲しい表情や動きをしたところにあわせて、話の展開を近づけていく手法を若干とったりして、“なるべく自然に”を心がけました」
◆犬にも人にも無理させない分、監督がご無理されたのでは?
ヨリコジュン「いえいえ。僕としては、るぱんが凄く良かったと思っています。ドッグムービーとしては賛否両論あると思います。演技ができていた、訓練されていたというほうが評価されるかもしれませんが、原作はそうではない気がしました。るぱんが自由に画面に映ってきているので、僕の意向としては満足しています」
◆この作品で伝えたかったことは?
ヨリコジュン「『絆』です。僕自身、編集中も試写の時も、早く家に帰って自分の犬に会いたいと思いましたから、そういう映画になっていると思います。僕が飼っているのはジャック・ラッセル・テリアです」
◆ヨリコジュン名義での初監督作品ですね?
ヨリコジュン「実はこれ、お袋と親父の名前をくっつけたんです。今まで親孝行できていない分、少しでも喜んでもらえたら、と。それは伏せておいて、試写を見てもらったら、あれ?監督の名前が私たちの名前になっていたけど、って。いやいや苦労かけましたということで、僕ら親子の『絆』も深まったというわけです」
<<「映画を見た後、ほっこりした気分で帰ってもらえるといい」>>
◆最もこだわられたのはどの部分ですか?
ヨリコジュン「るぱんとすぐりの2ショット・シーンです。周囲の人たちが、るぱんとすぐりに影響されているのを映像で見せていかなければいけないので、特にこだわりました。映画を観た方に優しい気持ちになってほしいですね。ほっこりした気分で帰ってもらえるといいなと思います」
◆監督はマルチな才能をお持ちですが、今やってみたいことは?
ヨリコジュン「ラジコンの飛行機にカメラをつけて飛ばして撮影してみたい。空撮の技術を習得し、巧くなりたい、それが今一番やってみたいことです」
◆今後の抱負は?
ヨリコジュン「監督・脚本・演出・撮影・編集・美術など、最終的に全部自分で手がけてみたい。どう評価されるか知りたい。僕らの職業は、絡みなどがあるなかで仕事を続けるうち、方向を見失ったり、結果を出せないままに終わってしまったりするような職業だと思う。一方、多種多様なジャンルの人とつきあわなければいけないから、流される人も多い。それでは今までやってきた意味がないので、そこは手堅くできればと思います、そのために、とにかく全部自分で手がけた作品をひとつ持ちたいと思っています」
ヨリコジュン「ジャル的には、映画『いぬばか』とは異なりますが、アンダーグラウンドの小説を書いたりもしているので、もし出版できれば、将来、自分で全て手がけて映画化したいという思いもあります」
◆本日はありがとうございました。次の作品も楽しみにしています。(取材・文=横堀朱美)
(C) 2009 桜木雪弥/「いぬばか」フィルムパートナーズ
太代真裕プロデューサーとJUN YORIKO監督(右)