【ニュース】3D映像産業の振興策提言へ向け、プロダクション、放送局、メーカーが集結 「3D映像産業振興協議会」が設立
2011.6.24 UP
記念講演会
●思いは一つ「一過性のブームに終わらせない」
コンテンツ事業者、放送事業者、家電メーカーなど13社がコアメンバーとなり、3D(立体視)映像産業の課題抽出、振興策の提言・実施などを進める任意団体「3D映像産業振興協議会」(畑田豊彦会長)が設立された。3D映像が一過性のブームに終わらないようにするため、優れたコンテンツを数多く世に送り出すことを共通テーマとし、これまでにない業際的な協力態勢を敷くことで、演出技法・制作工程や国際的ビジネス拡大の検証など、3D映像産業の確立・振興に着手する。
6月15日、設立総会を開催し、会長には東京眼鏡専門学校の畑田豊彦校長が就任。また、副会長には、NHKエンタープライズ、フジテレビジョン、パナソニックから1名ずつ就任した。
幹事会社は、NHKエンタープライズ、NTTぷらら、キュー・テック、シャープ、ジュピターテレコム、スカパーJSAT、ソニー、TBSテレビ、テレビ朝日、東芝、東北新社、パナソニック、フジテレビジョンの13社。発足時の会員企業・団体は、幹事会社を含めて30社になる。オブザーバーとして、関連団体から映像産業振興機構(VIPO)、立体映像産業推進協議会(立体協)、日本民間放送連盟(民放連)の3社が参加し、関連省庁からは経済産業省、総務省、文化庁が参加する。事務局はデジタルコンテンツ協会が担当する。
●放送における3Dコンテンツの普及促進が最初のテーマ
会長に就任した田中氏は、同協会の活動について、次のように抱負を語った。
「3D映像産業は、ハリウッドを中心とした映画産業から始まり、3D対応のテレビや携帯電話、ゲーム機が発売されるなど、2010年には3Dコンテンツ元年と呼ばれるほどのブームとなった。しかし、3D映像制作に関する人材や良質なコンテンツの不足により、過去の3Dブームと同様の一過性のブームで終わってしまうことが懸念されている。良質な3D映像コンテンツを豊富にするために、コンテンツ制作事業者、放送事業者、機器メーカーにまたがる諸問題を協議し、解決していく活動を行っていく。業種・立場は異なるが、危機感は共有している。迅速に現状の課題を明確にし、乗り越えていきたい。まずは、放送における3Dコンテンツの普及促進が大きなテーマ。行政機関の方々にもオブザーバーとしてご参加・ご協力いただくことで、提案・解決の道筋を確立していきたい」
23年度の事業として、ワーキンググループ「3D映像表現の品質評価技術検討WG」を設置し、3D映像表現における評価項目などの検証事業を進める。
●フジテレビジョン大会議室で設立総会、記念講演会が開催
6月15日にフジテレビジョンの大会議室で開催された設立総会では、設立主旨および、協議会規約の案件の承認、会長、副会長の選任・承認などが行われた。また、平成23年度の事業の提案なども行われた。
総会に続き、協議会の設立記念イベントとして、講演会が開催され、NHKエンタープライズ 国際事業センター 海外販売 執行役員の青木繁氏、パナソニックAVCネットワークス社 パナソニック3Dイノベーションセンター 総括担当の西岡稔氏、韓国コンテンツ振興院 日本事務所所長の金泳徳氏、ソニー 3D&BDプロジェクトマネジメントオフィス3D戦略室 担当部長の中田吉秋氏が講演を行った。
●NHKエンタープライズ 青木氏 3D映像コンテンツ海外展開の課題克服へ新施策
NHKエンタープライズの青木氏は、同社がこれまでに3D映像コンテンツを海外に販売した実績を紹介した上で、「3D映像コンテンツの海外展開の課題」として、海外放送局では、3Dプラットホームが未成熟である点、3D番組制作費のコストが高額である点、
通常の2Dコンテンツ展開と同様に海外展開は、権利処理、素材準備、英語台本など十分な準備が不可欠な点などを挙げた。
その上で、こうした課題を克服するための今後の方向性として、3D制作受託とコンテンツ販売の連携で展開を進める、自社制作以外のコンテンツも販売展開をする、2D+3Dの両方で展開する、3D向きの新ジャンルを開拓する、といった施策を紹介した。
●パナソニック 西岡氏 3Dコンテンツ拡大の課題は「撮影・編集の進化」と「クリエイター育成」
パナソニックの西岡氏は冒頭、3DTVの普及スピードについて、「HDテレビと比べ2.5倍のスピードで普及しており、初年度の販売台数も約5倍」であることを紹介。3D対応の映画スクリーン数も2010年の8,459から2015年には世界で10万になると予測されているほか、VODを含めた3Dチャンネルが、2010年に2015年には150チャンネルになるという予測を示した。こうした中で、3Dコンテンツ拡大の課題として、3D撮影・編集のさらなる進化、3Dクリエイターの育成の2点を挙げた。
そうした課題克服と関連した展開として、パナソニックが2010年8月に発表した2眼式フルHD 3Dカメラレコーダー「3DAG-3DA1」の利点と、実際の活用事例を紹介した。また、NABで発表した後継機「AG-3DP1」の拡張機能も披露した。
さらに同社の活動として、2011年1月にハリウッドに開設した3Dイノベーションセンターのねらいを紹介。今後更に、日本、欧州の拠点との活動連携を進めていくことなどを説明した。
西岡氏は、3D映像産業の振興には、「ハードとソフトの両輪の取り組みが重要である」ことを強調し、また、3D映像が医療、防災、教育、観光、学術、調査など幅広い分野でニーズがあり、役立っていることを指摘した。
●韓国コンテンツ振興院 金氏 「2015年に3Dコンテンツ市場を25兆ウォンに成長させる」
韓国コンテンツ振興院の金泳徳氏は、韓国における3D振興策、および3D放送コンテンツ制作の最新状況を説明した。
最初にコンテンツ産業振興策の法的な背景やビジョン、管轄部署などを紹介した上で、「2015年までに3Dコンテンツ市場を25兆ウォンに成長させる」といった具体的な目標を挙げ、そのために中小企業のための共同制作インフラの構築、専門人材の育成の2つの計画を具体的な数字を示して説明した。また、このほかのコンテンツ制作活性化の施策として、政府も出資するコンテンツファンドの結成や、技術開発強化のための3D映像センター設立、技術開発への資金的な支援、グローバル展開のための広報支援など、さまざまな協力態勢を整えていることを示した。
●ソニー 中西氏 BBCと共同でウィンブルドンテニスの3D中継制作
ソニーの中西氏は最初に、同社の「3Dバリューチェーン」として、グループ内でコンテンツ制作、コンテントビジネス展開、配信・放送、3Dディスプレー開発・販売を展開している状況を紹介し、「3D市場が立ち上がるには、ハードだけではだめ」であると指摘した。すでに、同社でも3Dテレビのラインアップを充実させており、「3Dテレビの出荷は今後も大幅に伸び、「年内に世界で2300万台が普及する」という予測を紹介。同時に、ソニーでは、サッカーワールドカップの3D放送や、ゴルフのハワイオープンなど、3Dコンテンツの制作を推進しており、また、ESPNなど、放送局との連携も展開している状況を説明した。さらに、ウィンブルドン2011テニス大会では、BBCと協力して3D番組を制作し、配信を行うという。また、日本の放送局との共同展開を進めている。
中西氏は今後、「3D制作コストはさらに下がり、撮影の機動性も高まる」とし、同社の、ハンディタイプのHXR-NX3D1、ショルダータイプのPMQ-TD300と、機動性の高い3Dカメラを紹介し、さらに消費者市場向けの3DカメラHD 3DハンディカムのCMを披露した。
記念講演会