【NEWS】「NO NAME FILMS」 今後の映画界を担う10人の「無名」監督による短編映画を一挙上映
2011.11.4 UP
選考された監督たち
吉野耕平監督
映画『日曜大工のすすめ』より
■ユニジャパンが一般公募のショートムービー作品から選考 日本映像の輸出振興促進に
11月19日から東京・渋谷のユーロスペースにて、日本の若手映画作家10人による短編映画作品10本を一堂に公開する「NO NAME FILMS」が上映される。
これは2010年度の経済産業省による「平成22年度 新進若手映像等人材発掘・国際ネットワーク構築事業」における、公益財団法人ユニジャパンの人材育成プロジェクトの一環として、映画制作を実践している若手映像制作者を対象に、15分以内のショートムービー作品を一般公募、選考後に企画から映像制作までを一貫して行い、完成作品は国内での上映や国際映画祭でのスクリーニング、出展などが幅広く行われるもの。
公益財団法人 ユニジャパン(旧:財団法人日本映像国際振興協会(UNIJAPAN))は、財団法人日本映画海外普及協会(ユニジャパン・フィルム)と財団法人東京国際映像文化振興会と統合し、平成17年4月1日より新しく発足した団体で、従来の日本映画を海外に普及するという活動以外にも東京国際映画祭の開催運営事業が追加された。平成22年7月1日に「公益財団法人ユニジャパン」として移行の登記を行っている。ユニジャパンは、国際映画祭を開催し、次代を担う才能の発掘・育成の助成及び、映画フィルムの保存を図るとともに海外において日本映像の普及宣伝を行い、もって我が国の映像文化の発展を促し、日本映像の輸出の振興を促進させること、また、国際友好及び文化の増進に寄与することを目的としている。
■日本の新しい感性を抽出
今回の「NO NAME FILMS」に集められた作品の監督陣は、いずれも国内や海外映画祭で多数受賞経験を持つ20代〜30代の若手監督だが、これまでにも国際映画祭等で招待上映や受賞を果たしている実力派が揃っている。
主な作品は、阿部綾織(脚本)/高橋那月(撮影)という女性ダブル監督という異色作『ニューキッズオンゲリラ』、2010年の初長編作品「—×—(マイナス・カケル・マイナス)」がローマ国際映画祭に正式招待された伊月肇監督の『トビラを開くのは誰?』、全編RED ONEで撮影された、オーストラリア出身のジェームス・マクフェイ監督の『バーニング・ハーツ』、近作「くらげくん」が11の映画祭で受賞した片岡 翔 監督の『ぬくぬくの森』、「世界グッドモーニング!!」が国内外の映画祭で数多く受賞歴を持つ廣原暁監督の『遠くはなれて』など。
この中で、今年の釜山国際映画祭に正式招待作品となり、スペシャルメンションを受賞した『日曜大工のすすめ』の吉野耕平監督にお話を伺った。
—本作の制作に関して
「昨年(2010年)10月末に参加作家が決まり、そこから制作スタッフを揃え、1月には完パケ納品、というかなりタイトなスケジュールだったのですが、集まった作家の方々はドキュメンタリーや長編映画、また僕のようにCG制作など、様々なジャンルのクリエイターが揃っていて、どれも個性的な作品が出来ました。PFFの出身者も多いですし皆さん実力もあって、これまでの短編映画作品集とは違ったものになったと思います」
—制作仕様は?
「1作品15分以内という規定は、海外の映画祭の短編部門に応募しやすいという点からの配慮ですが、その中で田崎恵美監督の『ふたつのウーテル』が2011年度のカンヌ国際映画祭・短編部門に、僕の作品『日曜大工のすすめ』も釜山国際映画祭に、それぞれ日本から正式招待作品として選ばれました。撮影機材については1作のみRED ONEを使っていますが、僕の作品を含めてほとんどはやはりDSLR(デジタル一眼レフ)ムービーで撮影している方が多いですね。フィクション中心にいまやそれが主流になっています。低予算での制作なので価格面など、それに頼らざるをえないというが現実ですが…」
—今回のプロジェクトで特徴的だったところは?
「応募するときに監督とプロデューサーがセットでないと応募出来ませんでした。プロデューサーも詳細なプロフィールや制作歴などの記述が要求されたのですが、お金の使い方などプロデュース面でも人材を育てたいという点で、他の映画公募企画とは違っていたと思います」
—吉野さんの作品には、石井克人監督から感想コメントが寄せられていますが?
「今回の各監督は、まだ“NO NAME”でそれぞれ有名ではないので、自身の作品について逆に著名な方々からコメントを頂こうということになり、僕は石井克人監督からコメントを頂くことが出来ました。気さくな方で気楽にコメントを寄せて頂き、さらに作品もすごく良い事ばかり書いて頂いたので、逆にビックリしましたがとても光栄で嬉しかったです」
—今後のNO NAME FILMSは?
「NO NAME FILMSは現在、固定的な組織ではないのですが、今後は毎年の開催に向けて、サークル的な集まりとして定期的な映画上映企画を目指し、後々には“あの人はNO NAME出身の監督だ!”と言われるような活動に拡げられれば良いなと思っています」
■新たな映像コンテンツの広報手法として
また今回の「NO NAME FILMS」のホームページhttp://nonamefilms2011.com/では、YouTubeにボタンを埋め込む機能を本格的に活用し、YouTubeがホームページ本体、という新しいスタイルのページをとっている。内容は動画によるトップページから、全体の予告編、各作品の予告編、10作品の監督制作による「NO NANE FILMS」CM映像、劇場アクセスなどで構成されている。こうした手法によるサイト構築は日本ではまだ珍しく、特に国内の映画や映像の宣伝用サイトとしては初の試みであり、今後の新たな映像コンテンツの広報手法としても注目だ。
(石川幸宏)
NO NAME FILMS
11月19日(土)〜12月2日(金)※2週間限定レイトショー
渋谷・ユーロスペース
http://www.eurospace.co.jp/
選考された監督たち
吉野耕平監督
映画『日曜大工のすすめ』より