【ニュース】「デジタルマーケティングNEXT 2009」セミナーレポート(1)「デジタルサイネージとデジタル印刷の相乗効果」
2009.11.26 UP
去る11月11日から13日までの3日間、ITやWebを活用した新たなマーケティングの可能性を提案する「デジタルマーケティングNEXT 2009」(主催:日本能率協会)が開催された。期間中には各種セミナーが催され、デジタルマーケティングの可能性や今後の課題、新たな提言などが示された。その中から、本稿では「デジタルサイネージとデジタル印刷の相乗効果」「GISと今注目のデータコンテンツの活用」「デジタルサイネージを活用したマーケティング」「デジタルサイネージのここが問題だ」と題する4つのセミナーのダイジェストをレポートする。初回は、日本印刷技術協会 研究調査部長の郡司 秀明氏による「デジタルサイネージとデジタル印刷の相乗効果」と題した講演の内容を紹介する。
<<デジタルサイネージとオンデマンド印刷を活用した新たな融合メディアを提案>>
デジタルサイネージと印刷物は相互補完の関係にある。両者のメリットを融合させれば、新たなマーケティング展開の可能性が広がる。その中で多くのノウハウを持つ印刷業界は重要なキープレイヤーになり得るという。デジタルサイネージと印刷物のメリットを融合させた具体的なモデル提案について、日本印刷技術協会 研究調査部長の郡司 秀明氏が語った。以下は、講演の要旨。
<<マスメディア型と地域密着型の2つの流れ>>
デジタルサイネージには大きく2つの流れがあります。1つは街頭の大型ディスプレイでナショナルクライアントの広告などを表示するマスメディア型の形態。もう1つはローカル企業などの広告を表示する地域密着型のメディア形態です。マスメディア型コンテンツの多くは高画質・高品質なものですが、地域密着型メディアで流れるコンテンツは必ずしもそうではありません。
これからはデジタルサイネージの普及に伴い、地域密着型メディアのコンテンツにも色再現性や表現力などが問われるようになるでしょう。デジタルコンテンツの制作にはレタッチなど補正や表現力を高める技術が欠かせませんが、この点は印刷業界が多くのノウハウを持っています。このメリットを活かせば、デジタルサイネージのコンテンツ制作をサポートできます。例えば、屋外に設置されている場合、外光の中でもクリアに見えるようにするにはどうすればいいかといった見せ方の部分で印刷業界のノウハウが活かせます。
<<「デジタルサイネージ+1000部カタログ」を提案>>
さらにデジタルサイネージと印刷物のメリットを活かせば、新たな融合メディアの可能性も広がります。デジタルメディアと印刷物は敵対関係ではなく、相互補完の関係にあります。今でも様々な場面で印刷物のニーズは高いので、工夫次第で様々な展開が可能です。例えば、最近では新聞などの紙媒体に目を引く大きな写真広告を載せ、紙面に記載したURLでWebサイトに誘導を図るといったメディアミックスの手法が多く見られるようになっています。この場合、Webにアクセスするのは広告に本当に興味を持った人だけなので、ターゲットがセグメント化されており、伝えたい内容を効果的に訴求できます。
このスキームを応用したのが「デジタルサイネージ+1000部カタログ」という手法です。これは文字通り、デジタルサイネージと印刷物のメリットを融合させた手法。カタログやパンフレットを1万部印刷して配付したとしても、本当に中身を見てもらえるのはごくわずか。仮に1000部程度だとしたら、本当に必要な1000部だけ印刷したほうが効率的だし、コストも安く済みます。そして情報を本当に必要とする1000人を集めるツールにデジタルサイネージを使うのです。これが「デジタルサイネージ+1000部カタログ」の基本コンセプトです。
それを可能するオンデマンド印刷機も多数登場しています。こうしたオンデマンド印刷機を使えば、すぐにその場でカタログやパンフレットを印刷することが可能。複数ページからなる小冊子の形で出力することもできます。あらかじめ印刷物を用意しておくわけではないので、必要な部数が2000部になったとしても、柔軟に対応できます。
<<カスタマイズ印刷にも柔軟に対応>>
しかも、利用者のニーズに応じて内容をカスタマイズすることも可能です。画一的な内容ではなく、より詳しく知りたいと思う内容を厚くしたり、レイアウトのパターンを複数用意しておけば、その人の好みのカタログを提供することもできます。個別ニーズに即応したOne to Oneマーケティングを実現できるのです。店頭の電子POPとしてデジタルサイネージを使い、商品PRなどを展開。その商品をより詳しく知りたいという人にオンデマンドでカタログを発行すれば、効果的に購買を喚起できるでしょう。
例えば、ワイン売り場にこの仕組みを設置し、電子POPで売れ筋のワインを紹介。さらにそのワインに関するうんちくやワインに合う料理のレシピなどを印刷物で提供するというのも一つの方法です。ワインは種類が豊富なので、そのうんちくやワインごとに合う料理のレシピをあらかじめ印刷物で用意しておくのは手間もコストもかかりますが、「1000部カタログ」の仕組みを使えば、コストを抑えて、効果的にマーケティング展開を行えます。もちろん、ほかの商材でも応用できるものは数多くあるはずです。
なお、日本印刷技術協会(JAGAT)では印刷物で培ったノウハウをもとに、解像度の低いWeb上の画像を印刷物でも掲載できるようにするなど、様々な技術的アドバイスやコンサルティングなどを行っています。デジタルサイネージと印刷物の融合メディアは新たな可能性を秘めています。特に地域密着型メディアや電子POPとしてのデジタルサイネージの活用に大いに期待しています。繰り返しになりますが、デジタルメディアと印刷物は相互補完の関係にあります。デジタルサイネージの進化・普及を促進する上で、印刷業界は重要なプレイヤーになっていくでしょう。
(以上)