【コラム】SIGGRAPH2010 機器展示に搭乗した先端技術
2010.8.17 UP
SIGGRAPH2010では、133本の学術論文が発表された。CGの学会というと、以前はコンピュータが作り出した情報をどうするか、つまり『出力』に関する話題がほとんどだった。
この10年ほどは、外界から取り込んだ画像情報をどう処理するか、という『入力』の扱いに関する話題も増えている。SIGGRAPHの守備範囲は、モデリング、アニメーション、レンダリングという古典的分野に加えてイメージング(広義の画像処理)が定着し、今では「4本柱」とまで言われる状態になった。
■「豊作」だった機器展示
論文は、アスキーアートから被写界深度の数学的処理による拡大まであり、一言で『CG』と言っても多くの分野が関連する総合技術になったことがみてとれる。論文集は重さ2.5kgを越えており、会場に持参することは事実上不可能だった。
SIGGRAPHの先端技術は、論文発表ばかりでなく、E-Tech(エマージング・テクノロジー)や展示会場にも現れることがある。
今年は、展示が豊作だった。目立ったものの一つに、英The Pixel Farm社のカメラトラッキングソフトがある。「PFMatchit」で、撮影済の画像から、被写体やカメラの動きを割り出し、CG合成のデータを得るものだ。市場には、このような製品はいくつかあるが、700ドル(予定)という低価格であること、処理手順をユーザーが柔軟に指定できることなど、他にない特徴があった。Webからのダウンロード販売を計画しているという。
画像関連の研究者集団である米Tandent Vision Science社は、撮影した画像中の陰と影を自動的に消去する技術を出展した。顔認識などの際に使用し、認識率を高めることができるという。このソフトは、表面反射光と自己発光光を分離する技術を元にしているという。この技術は比較的新しく、研究が活発化したのは2000年前後である。
このような、新しい技術が導入された製品がいち早く現れるのは、画像分野の特徴と言える。技術に対する旺盛な欲求と幅の広さがCG業界の活気を保っていると言えるだろう。
(写真上:Tandentのブース、写真下:The Pixel FarmのPFMatchit)