【ニュース】デジタルデザインスタジオ 3D映画『歌うヒットマン!』制作で技術協力 実写合成、仕上げ作業、ステレオグラファーを担当
2010.11.5 UP
CGスタジオであり、一体型3D(立体視)カメラ「SHVC」を販売するデジタルデザインスタジオ(東京都品川区、以下DDスタジオ)は、第23回東京国際映画祭の特別招待作品として10月29日に上映された『歌うヒットマン!』(高畑隆史監督)で、3D技術協力を行った。カメラの提供をはじめ、実写合成および仕上げ作業を担当。立体設計を行うステレオグラファーも同社スタッフが務めた。
企画プロデューサーの猪澤洋一氏(楽映舎)は、「3Dありきではなく、企画の内容を優先させることを重視。作品への没入感を向上させ、好きな俳優がそばにいるように感じさせるなど、観客にエモーショナルに訴えかけるための有効なアイテムとして3Dを使用した」と話す。当初は関係者内での3Dの認知度が低かったが、今年に入って企画が始動。東京国際映画祭での公開に向け突貫工事を行うことになった。
撮影期間は6月の約2週間。迅速に行うことを目標に、クランクイン前には3Dの概念を学んだほか、ステレオグラファーの宮崎克彦氏(DDスタジオ)が、被写体の配置をCGで確認したり、岩松茂撮影監督がSHVCのテスト映像を撮影した。
立体設計は、『観客が3Dを見ている感覚すら忘れるような自然な表現』(猪澤氏)を目指した。宮崎氏は、「アップの個所は、後方発散(破たん)を注意しながら広がりを持たせた。背景をCG合成した箇所は、ありえない状況だが自然に感じられるように仕上げた」と説明する。
撮影現場では、SHVCの小型で軽量、複雑な設定が不要な点が奏功した。岩松氏は、「ロケセットなど狭い現場での機動性や、現場での処理能力の高さが求められる日本の撮影現場に合っている」と評する。
操作性やモニターをつける位置に関しては、DDスタジオにフィードバックしており、「希望を伝えられるのが国産製品の良いところ。次は小型軽量という特性を生かして、リモート制御でぐるりと動かすなどの挑戦をしてみたい」と話している。
同時に、3D制作の課題を、「撮影時にカメラマンが3Dの中に入れず、従来の2Dの感覚で光と動きと芝居を撮ってしまう。本当の意味での監督の相方になれていない」と指摘。片方のチャンネルで映像を見るため、画面から外したはずのものが別のチャンネルに映ったり、3Dとしての成立を見られない点が困難だったという。