【IBC 2011】まとめ(2)周辺機器編 ワンマンジャーナリズムを支える新たなENGスタイル
2011.10.4 UP
TVU networksの製品
aceにDSLRを搭載したデモ
三脚メーカー E imageのブース
■Hall3で新市場を対象にした展示が
今年のIBCでは、“The IBC Connected World”と称される、新市場動向を中心とした展示がHall13で行われた。昨年はまだ展示施設が一部工事中ということもあって、Hall10全体を使用した、比較的大きな展示スペースが設けられており、3D関連やモバイル/スマートTVなどのブース出展が多々あったが、今回設けられたHall13では、昨年同様の傾向の展示があったが比較的おとなしい内容だったと言える。
■「ワンマンロケーション」向けのENGシステムが各社から出展
逆に一般展示内で特に目立ったのが、一人だけでも取材撮影からIP伝送が行えるような、IPTV用のコンパクトでワンマンロケーションに適した新たなENGシステムを扱うメーカーである。
具体的にはTVU networks(アメリカ)やLiveU(イスラエル)、また新興のAviwest(フランス)といったメーカーがブース出展しており、IPTV用として3Gなどの携帯電話回線を利用してバックパックサイズの送信機材でHD映像素材をライブ配信できるコンパクトな中継システムなどを扱っている。
どこも一昨年のNABあたりから国際展示会へ出展してきた新興勢力だが、昨年に比べて今年は2〜3倍にサイズ拡張したブースを出しており、商売の好調さが窺われる。実際のニーズとしては、個人ユーザーや小規模プロダクションのユーザーもあるが、実は多くの大手放送局が導入を開始しているという。このところBBCのデジタルチャンネルに含まれるiPlayerのようなIPTVチャンネルが、欧米では加速度的に需要拡大していると思われ、ここでの取材報道などでこうしたニューENGと言われるようなワンマンスタイルが人気を呼んでいるようだ。
また制作バジェットの問題からもワンマン報道、ワンマン取材といったニーズが高くなっており、こうしたIP伝送によるニュース制作スタイルは今後も需要を伸ばして行くと思われる。
また多くはHD対応であったこれらの機種も、USTREAMなどのネット放送用にSDサイズのさらに低ビットレートで伝送できるタイプのものが新製品として数多く出て来た。似たような新参入メーカーも数社見かけられ、新たな報道制作市場として注目されているようだ。
■スモール制作/報道の普及がブームを後押し
こうしたスモール制作/報道の普及により、これをサポートするツール群の新製品も小型軽量、さらにコンパクトで安価といった方向に大きく傾向が傾いている。
三脚メーカーなどはザハトラー、ヴィンテン、マンフロット、オコーナー、ARRIといった有名メーカーが軽量小型で堅牢性の高い低価格モデルを出し始めており、さらには中国製のこれまでOEMで制作請け負っていたメーカーなどから、三脚を始めとする多くの撮影サポート機材が出されるようになってきており、こちらも低価格、高品質の過当競争が激しさを増している。
■進む高性能小型低価格化
こうした流れと同調して、ファイルベースでのデータ交換を容易にするためのコンバーター、モニタリング、配信などに使用する変換ツールも小型化低価格化が進んでいる。10年前は放送用のコンバーターであれば数十万円とするものが普通だったが、いまではマルチコンバート機能などが付いても500ドル前後(5万円前後)といった商品が平均価格となっている。マトロックス、グラスバレー、ブラックマジックデザイン、AJA Video Systemsといった従来からのメーカーに加えて、ATOMOSなど、これらのメーカーからのスピンオフチームが新たな企業を立ち上げてこうした市場に斬新なアイディアを持って参入してきた企業もある。
ワンマンジャーナリズムやスモール映像制作のスタイルが確立され、さらに助長されることで、機材の小型化、高性能化が進み、益々コンスーマとプロフェッショナルの垣根を感じさせない機材が増えてきたのもここ1年あまりの傾向だと言える。
TVU networksの製品
aceにDSLRを搭載したデモ
三脚メーカー E imageのブース