【ハリウッド通信】ILM、プロジェクト・ベースのスタジオをバンクーバーに新規オープン予定
2011.10.28 UP
サンフランシスコのILM本社
老舗VFXスタジオの大手、ILM(Industrial Light & Magic)がプロジェクト・ベースのVFXスタジオをカナダのバンクーバーにオープンする予定だという。実際、この情報はバンクバーで開催されたシーグラフ2011の会場内でも話題になっていたし、バンクバーのVFXスタジオに勤務する知人によると現地では周知のニュースだという。
■カナダ・ブリティッシュコロンビア州政府の税優遇制度を活用
現在、世界中のVFX業界から最も注目を浴びているカナダの都市バンクーバーには、ブリティッシュコロンビア州政府が実施している税優遇制度の恩恵を受けて新拠点を続々とオープンする動きが相次いでおり、既にデジタル・ドメイン、ピクサー、MPC、ソニーピクチャーズ・イメージワークス、リズム&ヒューズ等の大手VFXスタジオがスタジオを構えている。これらの動向を鑑みると今回のILMによるスタジオ新設は極めて自然な流れと言えるだろう。
ILMは、2005年にルーカスフィルム・シンガポールを、そして最近では 映画『カウボーイ&エイリアン』のVFX作業を経機にロサンゼルスにも小規模ではあるが制作拠点をオープンしている。米報道によれば、ルーカスフィルム・シンガポールは既に手狭になってきており、2013年を目標に新しいビルディングを建設中だという。
■長編アニメーション「ランゴ」ほか、大作が目白押し
ILMは最近、VFXのみならず長編アニメーションにも進出している。3月に全米公開され、俳優ジョニー・デップが声を担当している映画『ランゴ』(日本では10月22日から公開中)はすべてILMで制作された劇場用長編アニメーション作品だ。また、最近手掛けたVFX作品には『SUPER 8/スーパーエイト』『カウボーイ&エイリアン』『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』などの大作が目白押しだ。
現在も『Red Tails』『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』『Battleship』『The Avengers』などのVFX作業でフル回転しているという。
■進む制作拠点のグローバル化へ向けパイプラインの効率向上策を推進
ご存知のように、昨年のSIGGRAPH2010でILMとソニーピクチャーズ・イメージワークスは、オープンソースのシーンファイル共有フォーマット『アレンビック(Alembic)』の記者発表を行い、今年のSIGGRAPH2011ではそれに引き続いてVersion 1.0のリリースをアナウンスした。
海外のVFX業界では、制作拠点のグローバル化が世界的に進んでいる。そんな中でアセットの共有や異なるパイプラインでのデータのやりとりのスムース化は急務とされている。ILMのバンクバーでも『アレンビック』は使用されると思われ、実務レベルでの試用を重ね、よりこなれたバージョンが今後リリースされる事が期待されている。
サンフランシスコのヘッド・クォーターを中心に、シンガポール、ロサンゼルス、そしてバンクバーでプロダクション業務を展開していく。
サンフランシスコのILM本社