私が見た "Inter BEE2007" ―その3・符号化技術、超高精細映像技術の動向

2007.12.14 UP

その2…までテープレスカメラや特殊カメラ、映像モニターなどを紹介した。その3…では、デジタル化、ネットワーク化の進展にあわせた各種符号化技術の動向、世界的に進展しつつあるデジタルシネマの動向などについて見てみたい。

放送と通信の連携・融合を反映し、映像信号を高品質に効率よく蓄積、伝送する符号化技術・配信技術の進展は目覚ましい。これまで見てきたようにカメラ、記録機器、制作・送出まであらゆるプロセスに使われている。今回のInter BEEでも多種多様な符号化、配信に関わる出展が数多く見られた。


NTTエレクトロニクスは、様々な伝送チャンネルでの配信に使う多種多様な符号化関連技術を公開した。世界初となるハイ4:2:2プロファイル対応の高画質HDTV /SDTV AVC/H.264 LSIを搭載したエンコーダ・デコーダ、リアルタイムMPEG-2→H.264トランスコーダ、AVC/H.264ソフトウエアエンコーダ、さらにデジタルシネマの4K×2K用AVC/H.264オフラインエンコーダ・デコーダなど、大きな画面で変換映像を表示し画質も分かりやすいように展示していた。(右写真1番上)

KDDI研究所は符号化、伝送に関する最先端技術、IP映像伝送・ソリューションの展示を行っていた。高画質で高速処理のハイエンドAVC/H.264エンコーダ、符号化技術を使った自動画質評価装置、著作権侵害コンテンツを検出する判別技術、超低遅延IP HDTVコーデック、デジタルシネマ用AVC/H.264ソフトエンコーダなど、こちらも映像表示とあわせて公開していた。(右写真上から2番目)

NECはNGB(次世代放送システム)をテーマに掲げ、映像、放送、ネットワーク、ITと多彩なソリューションを提案していた。符号化技術に関するものとしては超高画質のAVC/H.264ハイ4:2:2プロファイルエンコーダ、HDTV/SDTVリアルタイムエンコーダ/デコーダ、リアルタイムMPEG2→H.264トランスコーダなど、またHDDとフラッシュメモリー併用の"Armadia"ビデオサーバ、さらに日本、ブラジルの地上波デジタル規格ISDB-Tに添うコーデックなどを展示していた。
(右写真上から3番目)

三菱電機が出展したAVC/H.264 エンコーダ/デコーダは、独自符号化技術により高画質を確保しながら低遅延を実現し、1Uハーフラックマウントサイズと小型・軽量化した。またHDTV素材伝送用エンコーダ/デコーダ、衛星通信用HDTV高速モデムも展示した。富士通はH.264採用のハイビジョンリアルタイム映像伝送装置や家庭へのネットTV配信ソリューションなどを出展した。

映像の高画質化はフルHDに止まらず、さらに高精細度化に向け進んでいる。NABではデジタルシネマサミットが恒例となり、多くの4Kデジタルシネマ関係機器の展示があり、NHKのスーパーハイビジョン"ULTRA HDTV"も出展された。インタービーではNABに比べればちょっと寂しいが、幾つかのブースで超高精細映像関連の展示も見られた。

圧巻だったのは計測技術研究所が公開していたスーパーハイビジョンだ。同社は非圧縮ディスクレコーダなどで実績を上げているが、今回、液晶テレビ4面をマルチに合成しスーパーハイビジョン映像を映しだしていた。NHK技研による8Kフルスペック(7680×4320)のスーパーハイビジョン映像表示にはこれまで投射型ディスプレイが使われているが、今回の直視型表示は初めての試みだ。使われた液晶ディスプレイは東芝ライテックの56" QFHD 4K(3840×2160)を4面使い、それぞれに非圧縮ディスクレコーダを1台ずつ計4台を割りあて、NHK制作のスーパーハイビジョン映像を表示した。間近で見る大画面の超高精細映像の臨場感は凄い迫力だ。またブース内では同社の非圧縮4Kおよび2Kディスクレコーダを使い、前記液晶ディスプレイに4Kデジタルシネマ映像を表示していた。会場内の各ブースで見るハイビジョン映像でもきれいだと思っていたが、ここで見た超高精細映像はとても魅力的だった。
(右写真上から4番目)

アストロデザインも4Kデジタルシネマ用超高精細度モニターを展示していた。56"サイズの液晶型ディスプレイで、表示解像度は4k(3840×2160)、2K(1920×1080)に対応し、フレームレートも60p、60i、24pに自動追従するそうだ。ブース正面にディスプレイを設置し、同社の非圧縮HDシリコンメモリーレコーダを接続し、計測技研と同じくNHKのスーパーハイビジョン映像を見せていた。

デジタルシネマ用超高精細度カメラもかなり多く出展されていた。前に紹介したノビテックは米"Vision Research"社の4Kデジタルシネカメラ"Phantom 65"を展示した。同機は999万画素の超高解像度CMOSを搭載し、4K(4096×2440)およびスーパーハイビジョンに対応する。また毎秒125フレーム(4倍速)の高速度撮影も可能で、本格的映画製作にも利用できるそうだ。
NABで大評判になったレッドデジタルのデジタルシネマカメラ"REDONE"が西華産業のブースで展示されていた。主なスペックは12Mpixelの" Mysterium Sensor"を搭載し、4k、2KおよびHD(1080P、720P)各フォーマットに対応する。毎秒コマ数は1~60Pまで可変速可能で、符号化はロスレスのウエーブレット圧縮を採用している。NABの時大画面で上映されていた作品がここでは26"サイズ程度の画面で表示されていたが、これでは本来の威力が分からない。アップルのブースでレッドデジタルシネマのプレゼンテーションが開かれていたとも聞いた。日本国内でもREDコンソーシアム構築を目指して活動を始めると伝えられているが、今後の展開に注目したい。(右写真上から5番目)

ソニーは今回のテーマの柱のひとつとして"Beyond HD"を掲げ、HDをベースに置きつつもさらに超高精細映像をも指向している。その試みのひとつのイベントとして、国際会議場内に仮設したシアターで4kデジタルシネマプロジェクターを2基使い、スポーツ、ダンス、海中シーンなどの超高精細3D作品を公開した。その席でデジタルシネカメラF35についても情報公開していたが、同機はブースに展示されていたF23と基本的機能は同等で、撮像素子にはフイルムのスーパー35mm相当の単板CCDを使い、1~50フレーム/秒までの可変速撮影可能で、PLレンズマウントに対応し多彩なシネマ用レンズが使えるそうだ。今後、より高品質のドラマ、CM制作、映画製作への利用が期待できる。

次号では、同時開催イベントの"Inter BEE Forum"や「民放技術報告会」、さらにIT時代に適うようなInter BEEの情報発信などについて報告したい。

(映像技術評論家 石田武久)

#interbee2019

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