【ニュース】クアルコム、米国でのMediaFLOサービスの展開状況を説明 アメリカのトップ100都市、2億人以上をカバーするネットワークを敷設
2009.11.6 UP
FLO TV社のプレジデント ビル・ストーン氏
利用を促進しているのはライブイベント中継
IPデータ放送機能を使った双方向サービスイメージ
FLO専用端末『FLO TV Personal Televi
クアルコムジャパンは、2009年11月5日、FLO TV社のプレジデント兼クアルコムFLOテクノロジーズ部門のプレジデントを務めるビル・ストーン氏が来日。都内で記者向け説明会を開催し、北米におけるMediaFLOの最新状況や新しいMediaFLO端末について説明した。
<<2011年7月以降のサービスについて説明>>
冒頭の挨拶で、クアルコムジャパンの代表取締役会長兼社長の山田純氏は、「日本でも認知が非常に高まっており、2011年7月の地上アナログテレビ放送停波後に空く、VHFハイバンドを利用した携帯端末向けマルチメディア放送で、どういった事業体がどういったサービスをするのか、と言うことを公式に議論する時期となり、我々も積極的にMediaFLOを採用してもらえるように活動している」と語った。
続いて、米国でMediaFLOサービスを展開しているFLO TV社のプレジデント兼クアルコムFLOテクノロジーズ部門のプレジデントのビル・ストーン氏が、米国のFLO TVサービスの状況について、説明した。
<<サービスを提供するAT&TとVerizon Wirelessの加入者数は、約1億7000万>>
MediaFLOサービスは、米国で2007年からVerizon Wirelessが、また2008年からはAT&Tが開始し、米QUALCOMMの100%子会社である米FLO TVから番組が提供されている。
現在のMediaFLOサービスは、映像ストリーミングのみのモバイルテレビを中心としたサービスであるが、ビル・ストーン氏は、MediaFLOサービスについて、「技術の上にライブストリーミングやクリップキャスト、IPデータサービス、双方向サービスなどサービスレイヤーを組合わせることによって、技術だけではなくサービスパッケージとして提供する事ができるサービス」と説明した。
現在の、AT&TとVerizon Wirelessの加入者数は2社を足すと約1億7000万。
当初の立ち上がりは、カバーエリアの問題から遅かったが、6月のアナログ放送完全停波により、ようやく全米をカバーする事が出来るようになったため、現在、アメリカのトップ100の都市の2億人以上をカバーできるような状況に達した。
加えて、「例えば、ロサンゼルスやシカゴ、ニューヨークの3つの都市では、開始時は3つの都市で送信局が15つだったのが、今年は52局まで増えたことで、各々の都市において、移動中や通勤中、さらには屋内でも視聴が可能となっており、つまり、エリアの広さ以外にも、都市の中でのカバーエリア密度の濃さにも対応できているため」とビル・ストーン氏は説明した。
<<ネットワーク局がコンテンツプロバイダーとして参加して有料サービス>>
MediaFLOサービスは、通常のテレビで放送されている時間帯と同じ番組を放送するサイマルキャストとテレビの放送時間帯と違う時間帯にテレビ番組を放送するタイムシフトの2つのサービスが提供されている。
現在、CSB MobileやCNBC、COMEDY CENTRAL、ESPN Mobile、FOX Mobile、FOX News、MSNBC、MTV、NBS2GO、nickelodeonなどのコンテンツプロバイダーがFLO TV社経由でユーザへ有料サービスとして提供している。ビル・ストーン氏は、「現在のMediaFLOサービスは、月額料金制となっており、基本で15ドル/月だが、約10ドル/月程度でもよいのではないかと考えている」という。
<<1日約25分から30分弱、1カ月で平均約900分の視聴>>
アメリカでのMediaFLOの利用状況について、ビル・ストーン氏は、「1日約25分から30分弱、一月で約900分見ていることが分かっている。携帯電話のユーザが通常の音声通話を行う時間よりも長い時間Media FLOを見ていることになる」と説明した。特に、利用を促進しているのは、ライブイベント中継で、例えば、マイケルジャクソンが亡くなった時の報道番組や追悼番組が放送された時には、多くのユーザが視聴したという。
また、これ以外にも、ゴルフトーナメントやサッカーの最終ラウンドやライブゲームショー、子供向け以外にも大人向けに提供しているアニメーションやドラマなども人気があるという。そして、年末には「ハリウッドが短い時間の番組であるが、オリジナルコンテンツを制作する計画がある」とビル・ストーン氏は説明した。
MediaFLOの視聴形態についてビル・ストーン氏は、「通常のテレビは夜のゴールデンタイムに向かって視聴率が上がっていくが、MediaFLOは午後1時にピークに達し、その後はフラット、早朝や夜中は利用者が下がっていく傾向がみられる。また、週末はスポーツなどのライブイベント番組があると、その時間帯での視聴率が高くなる傾向にある。今後車載端末が発売されると、この傾向は変化していく可能性もある」と説明した。
<<日本ではダウンロードサービスや双方向サービスを提供へ>>
米国で提供しているMediaFLOサービスは、番組の映像ストリーミングサービスのみであるが、日本でMediaFLOサービスを展開するためには、ダウンロードサービスやIPデータ放送、双方向サービスの提供が必要となる。
ビル・ストーン氏は、「ダウンロードサービスのClipcastやニュースや天気予報、スポーツの結果を放送波を使ってIPを使って伝送するIPデータサービス、Twitterなどのソーシャルネットワークサービスと連携したチャットや投票、インタラクティブ広告等の双方向サービスなど検討している。技術的には出来上がっているため、今後提供したいと考えている」と説明した。
<<認知度向上のために、携帯電話事業者経由以外に、FLO TVが直接ユーザへサービスを提供> >
FLO TV社は、サービス開始当初、Verizon WirelessやAT&T向けにサービスを提供し、ユーザが視聴するためには、MediaFLO対応携帯電話を各携帯電話事業者から買って契約する『B to B to C』ビジネスであった。しかし今後は、FLO TVの認知度を高めることと、FLO TVとしてのブランドを訴求するために、『B to C』サービスを開始する。
そこで、FLO専用端末『FLO TV Personal Television』を開発、11月中旬からアメリカの量販店で販売、サービスは、携帯電話通信事業者ではなく、FLO TVが直接ユーザへ提供する予定である。
今回量販店で販売されるFLO TV Personal Televisionは、タッチスクリーン付き3.5インチ画面で端末を垂直で設置可能な格納式スタンドが付いている。内蔵バッテリで5時間の視聴が可能で、待機時間は300時間。
TV端末のメーカー希望小売価格は、6ヶ月間のサービス込みで249.99ドルで販売される。また、配信サービスは、月額8.99ドルから利用可能となる。
このように、携帯電話型端末ではなく、専用端末を開発したことで、今までは有料TVとコンテンツ保護のための認証に携帯電話の通信回線を利用していたが、FLO TV Personal Televisionは、通信機能を持っていない。
そのため、米国のケーブルTVやIPTVのSTB(セット・トップ・ボックス)で利用されている方法と同様に、PCや携帯電話を利用し、Web上で認証する方式を採用した。なお、FLO TV Personal TelevisionのCAS(コンディショナル・アクセス・システム)は、アメリカのケーブルTV事業者やIPTVで利用されているナグラビジョン社のCAS(コンディショナル・アクセス・システム)を利用しているという。
加えて、11月から車載端末向けサービスを開始する。北米ではiPhoneの端末数よりも多くの約2000万台程の車載端末市場があり、11月から全米の1万2000店のカーディーラーで発売される予定だ。
ビル・ストーン氏は、「当初は、既存の自働車に後付けするアフターマーケット市場への展開となるが、将来は新車への標準搭載を検討している」と説明した。また、今年のNAB ShowやIBCなどの展示会で披露したMediaFLOに対応していないiPhoneやiPodTuchなどでもBluetooth/無線LANレシーバーを使いMediaFLOを利用する事が出来るMediaFLOアクセサリーデバイスも今後提供する予定だ。
将来は、「ある程度小さなディスプレイが付いている携帯電話やパーソナルテレビ、自動車やエレベーター内のモニターなどにはMediaFLO受信機能を搭載し、提供できることを目指している。基本的には、その時にもっとも良い表示端末でユーザがコンテンツを楽しめることができることを実現したい」とビル・ストーン氏は語った。
この他、MediaFLOチップとして、UHF帯シングルバンドでMediaFLO、ISDB-Tワンセグ、DVB-H方式をサポートした「MBP2600」とUHF帯とVHF帯のマルチバンドに対応し、MediaFLO、ISDB-Tワンセグ、DVB-H/T、T-DBM/DAB方式をサポートした「MBP2700」を紹介した。「MBP2700」は、2009年10月にサンプル出荷を開始したばかりであるが、沖縄ユビキタス特区で2009年11月4日から開始したサービス実証実験に利用するKDDIのMediaFLO対応携帯電話型試作端末に利用されているという。
FLO TV社のプレジデント ビル・ストーン氏
利用を促進しているのはライブイベント中継
IPデータ放送機能を使った双方向サービスイメージ
FLO専用端末『FLO TV Personal Televi