【NAB Show 2011】NAB Show トピックス＜３＞小型化／アフォーダブル化から見えてくる今後の映像制作

■大手カメラメーカーも「アフォーダブル」を提案
　一昨年より突然普及しはじめたDSLRムービー、そしてコンパクトムービーカメラといった、いまや従来のビデオカメラだけではない動画記録製品の分野では、全体的により一層のアフォーダブル化・小型化への傾向が強まったのも今年のNABの特徴だと言える。

　大手メーカーでは、パナソニックの小型業務用制作カメラは、ファイルベースのハンドヘルドカメラの新ラインナップとして、P2HDとAVC-Intra100/50に対応した『AG-HPX250』（市場想定価格：6,500ドル）や、「AVCCAM」の『AG-AC160』（5,500ドル）『AG-AC130』（4,000ドル）を初公開。この３台は、ほぼ同じ金型による筐体で、ボディーのほとんどがレンズで占められている“ボディーレスデザイン”と呼ばれるデザインになっているのが特徴だ。
　ソニーは防塵・防水のAVCHD収録の小型カメラとしてNXCAMシリーズの新機種を発表、またスーパー35mmサイズのCMOSセンサーを搭載した『NEX-FS100』などの制作向けアフォーダブルカメラも正式発表し、実機を展示した。
　またソニーとビクターからは民生用カメラからの業務バージョンとして小型の3D撮影用カメラを発表。ソニーはこの春に登場した民生用3Dカメラ「HDR-TD10」の業務版となる『HXR-NX3D1J』を展示、日本ビクターからは同じく民生機の「GS-TD1」のプロ仕様バージョンとなる「GY-HMZ1U」を展示。こちらは1920×1080で60iとともに24p撮影にも対応、2入力XLRを装備し、5倍ズームレンズを搭載している。

■拍車がかかる周辺ツールのアフォーダブル／小型化
　こうした製品のアフォーダブル／小型化へ本腰を入れているのは、カメラメーカーだけではない。カメラサポートなどの周辺ツールに関しては昨年以上にさらに拍車がかかっている。ZACUTOやredrockmicroなどを中心に、中小の撮影サポート製品メーカーが数多く軒を連ね、セントラルホールはこうしたカメラサポート製品の一大展示場と化していた。

　また注目すべきは、新たにこれらの商品化を掲げていたのが、これまでHDSLR（デジタル一眼ムービー撮影）や、小型ビデオカメラ用の周辺装着機器の分野をリードしてきた、小さなサードパーティのメーカーだけではないことだ。
　ARRIからはPCA（Professional Camera Accessories）シリーズと称して、DSLR用、Panasonic AG-AF105用、AG-3DA1用、そしてソニーのPMW-F3用の各々の専用製品として堅牢な設計と材質で作られたプロフェッショナル向けのカメラサポート商品を本格的にラインナップしてきた。このシリーズは2008年から展示しており、今年から「PCA」シリーズと呼び名を付けて、商品ラインナップとして確立した。その他ザハトラーからも、カメラサポート製品の別ブランド“artemis（アルテミス）”シリーズとして、新しくHDSLR用のハンドヘルドサポート製品などを低価格で発表している。

■アフォーダブル化で映像制作業界はどう変わるか？
　2011のNAB会場に見られた、こうしたアフォーダブル製品化の流れは、今後の映像制作をどのように変えて行くのであろうか？

　まずはワンマン＆少人数制作というスタイルが標準化されてくるだろう。そして個人の映像プロバイダー化が加速する。これはつまり映像リソースの提供元が個人ベース（小規模プロダクションベース）になってくることが予想され、さらにそうした個人が増加してくると思われる 。今後の課題として残ってくるのは溢れる映像コンテンツの著作権問題だろう。
　またGoPro HD HEROなどに代表される、ある種“ホビー感覚”から生まれてくる新たな映像クリエイティブの拡大や多様化で、映像制作のパーソナル化による映像制作のすそ野がますます拡大されるのではないだろうか？放送、映画以外の新規映像ビジネスへの発展も予想される、2011NABShowだった。
（DVJ BUZZ TV代表／映像ジャーナリスト　石川 幸宏）