【ad:tech tokyo 2009】CNNインターナショナル副社長ニック・レン氏が基調講演「マイケルジャクソンの追悼式で、1日1,050万のライブストリーミング」
2009.9.9 UP
facebookにあるCNN.com LIVE
<<マーケティングとIT技術のカンファレンスが都内で開催>>
9月2日と3日の二日間、マーケティングとITテクノロジーに特化したカンファレンス「ad:tech Tokyo 2009」が都内で開催された。
2日目のキーノートプレゼンテーションでは、CNNインターナショナル社副社長のニック・レン氏が登壇、「デジタル・ブロードキャスティング戦略 − 伝統的メディアブランドをデジタルの世界へ」と題して、CNNがいかにニュースチャンネルとして発展してきたか、またどのように視聴者の変化に対応しているか等、CNNが展開するウェブサイト「CNN.COM」のブロードキャスティング戦略について説明した。
<<世界で100のニュース専門局を展開するCNN>>
CNNは1980年にテッドターナーによって創立、世界で初めて24時間ニュース報道を行った先駆けとなる放送局である。
現在では、同様のニュース専門局が約100局、世界中で様々な言語によって提供されている。
また、CNNではテレビ以外にモバイルやインターネットにもCNNのインターネットサイト「CNN.com」を通じてコンテンツを提供することで、リーチを広げている。現在では24のネットワーク、46の支局、1000以上の提携放送局を世界中で持っており、200以上の国と地域をカバーして、ニュースや映像を共有している。
<<「競合相手も時にはパートナーとして見ることが可能」>>
インターネットが普及した現状において、現在の視聴者は、ニュースを含むあらゆる情報をテレビやラジオ、新聞といった従来のニュースプロバイダーからではなく、FacebookやTwitter、MySpace、YouTubeなどのソーシャルメディア、さらには、モバイルやインターネットなど、色々なネットワークを使い入手するようになってきた。
CNNインターナショナル社副社長のニック・レン氏は、「数年前ならこういったソーシャルメディアの名前は出てこなかった。今やCNNは、オールドメディアという印象をもたれているかもしれない。そのため、ユーザーおよび視聴者が何に対して関心を持っているのかということを認識しなければならない」と説明した。
また、「CNNにとっての競合自体が変化している」という。ニック・レン氏は、「以前は、BBCなどの大手のニュースプロバイダーが競合であったが、現在は、ニュースや情報が得られる様々なサービスが競合となる」と述べた。さらに、「こういった競合を脅威として見なすこともできるが、場合によってはパートナーとしてみることも可能だと思っている」とニック・レン氏はと説明した。
<<ニュース発生時に商業的効果が高い「ライブ配信とソーシャルメディアの連携」>>
レン氏によると、「ライブ視聴が大きな力を発揮するのは、特に大きなニュースが発生した場合」であるという。CNNは現在、インターネットでの動画ライブ配信サービスとして、Live Playerを無料で提供している。実はCNNも数年前まで、有料のライブビデオ配信(「パイプライン」という名称だった)を行っていたが、「これは我々にとって正しいモデルではないということをすぐに認識。無料サービスとして広告モデルによりより多くの視聴者を確保できると認識した」と説明した。
「無料のライブ配信とソーシャルネットワークとの連携の成果」として、まず、同社のニュースサイト、CNN.COMの最近の成功事例として、レン氏は、2009年1月の第44代米国大統領バラクオバマ氏の就任式や、7月7日のマイケルジャクソン追悼式のライブ配信を取り上げた。
これらのライブ配信はいずれも、ソーシャルネットワークサービスのFacebookとの連携した新しい取り組みを行っている。ライブ配信とソーシャルネットワークとの連携により、視聴者はライブ映像を見ながら友人や世界の視聴者と対話をすることができ、さらにCNNの取材内容についてコメントを出すこともできる。「これによって、視聴者との双方向コミュニケーションを可能にした」とレン氏は位置づける。
<<大統領就任式では1日2690万のライブストリーム配信、書き込みは200万件>>
レン氏はまた、「CNNが提供するLive Playerにより、リアルタイムで色々なコメントを受けることもできる。世界中でオンライにより議論が展開されるのを見て非常にわくわくした」と語った。
米国大統領就任式のライフ配信では、一日で2,690万のライブストリームがあった。これらのサイトへの同時アクセスは最大で130万件という。CNNのサイトからFacebookへの書き込みは200万件にも達したという。
マイケルジャクソンの追悼式では、一日で1,050万のライブストリーミングがあり、CNNのサイトから73万3千の書き込みがあったという。
レン氏は、「これは我々の予想をはるかに超える物であったといっても過言ではない」と述べ、「(CNNが)古いメディアではなく、イノベーティブなソーシャルメディアとしてとらえてもらえた」と数字以外の効果を強調した。
Facebookなどのソーシャルメディアとの連携による成果について、レン氏は、「大きなニュースイベントが発生した時に非常に効果が上がるということが分かった。さらに、視聴者とつながるということで、商業的にも価値を提供することができた」と説明した。
<<多様性を提供する「市民ジャーナリズム iReport」>>
このように、ソーシャルネットワークをうまく利用することにより、視聴者とのコミュニティを作る機会を得ることがでるようになったことから、ニック・レン氏は、「我々はニュース/報道に対する大きな機会だと思っている。視聴者とつながり、かつコミュニティを活用する良い機会だととらえている」と語った。
ソーシャルネットワークを利用する市民ジャーナリストについて、今年の1月に発生したハドソン川での飛行機の墜落事故の時の出来事を取り上げ、「飛行機の翼に墜落して数秒後によじ登ったという写真は報道が撮ったわけでななく、助けに来たフェリーに乗った乗客が自分のカメラで撮影し、Twitterに数秒後に投稿した写真であり、救助活動が行われている時に、世界中でそのニュースを見ることができた。ジャーナリストにとって、このテクノロジーは、まさに革新的なものだと思う」と述べた。
ただし、「市民ジャーナリズムは、我々の報道を補完するものであって、事実を報道し、事実を探し出す訓練を受けたジャーナリストの専門家を置き換える物ではない。しかし、より広い幅と意見の幅、多様性を提供してくれるものだと思っている」と語った。
CNNでは、視聴者の参加という価値を有効に利用したユーザー生成コミュニティ(UGC)サイト「iReport」をCNNとは別なウェブサイトで新たに構築、2008年4月に開始した。
この「iReport」は、世界中どこにいようと動画やコメント、あるいは意見を投稿する事が出来る仕組みを提供している。CNNでは、投稿された内容をチェックし、あまり良くないものや人に対して敵対的なもの、悪い内容のものは削除し、良いものは一部CNNで採用する、あるいはTVで放送する、あるいはWebで掲載する。
具体的には、プロのジャーナリストが投稿者と直接話をしながら、送られてきた内容の事実確認を行う。そして、投稿されたものと記者が取材したものの両方をCNNで使うという。
<<世界に34万2千人のレポーターが投稿 月に1000本が採用>>
現在、世界中に在住する34万2千人のレポーターからの投稿のうち、月に約1000本の記事が採用され、CNNのテレビやCNN.COMで紹介されているという。
「iReportは、ニュースの仕組み(ニュースマシーン)の重要な部分になってきている」とニック・レン氏は評価する。
CNNはさらに、iReportを活用した番組「iReport for CNN」を制作している。この番組を開始するきっかけは、昨年の米国大統領選挙でYouTubeと提携し、視聴者に対して質問を募集し、CNN Debateにおいて、各候補者に対する質問するというインターネットと連携した番組を制作し、好評を得たことだという。
レン氏は「iReportには、まだ課題がある」という。それは「話題にはピークがあるため、安定した成長が難しいという点。また、iReporterの77%がアメリカに在住しているという現状があるため、我々が考えているように(地域を)拡大できていない」という。しかし、「適切なニュース素材があり、強力なローカルメディアがない地域でiReportを収集するという活用するモデルが考えられるため、今後、世界的に拡大する可能性がある」と説明した。
最後に、「(CNNは)2010年に30周年を迎えるが、独自取材や我々の強みであるコアな取材をしながら、一方で視聴者とつながりながら、急速に変革しつつあるメディア環境を活用していきたいと思っている」と締めくくった。
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