【映像制作の現場から】『相棒season10』 全ファイルベース収録のTVドラマ作品の新シリーズがスタート

2011.10.31 UP

「相棒season10」より
撮影監督の会田正裕(アップサイド)氏

撮影監督の会田正裕(アップサイド)氏

  

  

  

  

撮影現場

撮影現場

■撮影・編集で常に新技術を導入してきたTVドラマシリーズ「相棒」 

 テレビ朝日系列の人気TVドラマシリーズ『相棒』は、2010年度のTVドラマとして年間最高視聴率No.1となった人気作品。この作品の撮影から仕上がりまでは、これまでの通常のTVドラマとは違った手法で制作されている。このデジタルによる最新のワークフローを設計しているのが、撮影監督の会田正裕(アップサイド)氏だ。
 同シリーズでは撮影・編集といった制作技術面でも常に新しいチャレンジを行ってきており、2008年の『相棒 シーズン8』からは、ファイルベースによるデジタル撮影とノンリニア編集による、TVドラマとしてはこれまでにない新たなデジタル・ワークフロー構築を試みてきた。現在はパナソニックのP2 VARICAMシリーズのフラッグシップ機「AG-HPX3700」で撮影/収録されている。
 その『相棒』シリーズの最新作でシリーズ10作目となる『相棒season10』の放送が10月19日(水)から始まった。(石川幸宏)


■最新のワークフローで劇場公開映画の撮影にもチャレンジ

 『相棒』シリーズは、その人気の高さからこれまで2本の劇場版となる映画作品も制作されている。2010年12月23日から公開された劇場公開版の映画作品『相棒-劇場版II-』も会田氏の手になる撮影だが、この制作でもすでに全編デジタル撮影が行われていた。この時のデータ収録に使用されたカメラは、TVシリーズと同じくパナソニックのAJ-HPX3700G(P2HD VARICAM)で、P2HDカードによる収録も可能だったが、この時のワークフローとして作品の映画品質を保持する目的と、その後の編集作業を効率的に行う為に、AJA Video Systems社のテープレスメディアレコーダー「Ki Pro」を使用している。


 <会田氏のコメント>
 「『相棒-劇場版Ⅱ-』は、HDカメラの2/3インチセンサーを最大限活かしつつ圧縮でどこまでできるかという新たなチャレンジでもありました。もともとTV版の『相棒』がAJ-HPX3700 のP2HDカード収録していることもありますが、映画の撮影においてはどちらにせよバックアップ用のデータレコーダーも欲しいということで、AJAのKi Proを使用することになりました」
 「Ki Proを選んだ理由としては、撮影から編集、バックアップまでのワークフローをトータルに考えた時に、今あるファイルコーデックの中でProRes 422が取り扱いの汎用性、利便性も最も品質も良く、使いやすいからということからです。Ki Proの一番良いと思ったポイントは、編集コーデックを撮影コーデックに採用したという発想ですね。収録コーデックはこれまでカメラメーカー側が決めてきましたが、こういう考え方もあるなと非常に感心しました」
 「またカメラをAJ-HPX3700にした理由ですが、これはASC(全米撮影監督協会)が、現行のあらゆるデジタルシネマカメラをテストした結果、35mmへのフィルムレコーディングした際に、いまある2/3インチセンサーを搭載したカメラの中ではAJ-HPX3700の画質が非常に良かったからです」


 撮影の段階から、映画品質で製作されている「相棒」シリーズ。今回の「相棒season10」でも撮影カメラには、もちろんAG-HPX3700が使用されているが、昨年の劇場版で培われたノウハウがまた随所に活かされているという。例えば色の問題。
 カラーコレクションはやはり家庭用テレビでの視聴が前提のTVシリーズと劇場版ではカラーコレクションの方向性を変えているとのこと。さらに前シリーズまでの青味が強く、雰囲気重視の暗めの画質を、もう少し明るい画質へ変更するなど、地上デジタル化が終了した以降のコンテンツとしても、家庭での視聴環境の傾向を考慮した画質を意識しているという。


■データバックアップ「AVCHDはSDHCカード3枚で2時間分の全素材収録」

 ファイルベースにおける問題点はまだ多いが、中でもデータのバックアップに関しては今後の課題となっている。「相棒」シリーズでもその点は重要視されている。


 <会田氏のコメント>
 「『相棒-劇場版II-』のときは、収録用にKi Proのストレージモジュールを10台用意し、撮影後、毎日ラボに入れるという手順で行いましたが、日付別にデータファイルは管理されていましたが、撮影部側でもまた別のバックアップを用意しています」
 「当然カメラ側のP2HDでのAVC-Intraバックアップと、それに加えてカメラ出力からパナソニックのAVCHD/POVCAMのメモリーカードポータブルレコーダー『AG-HMR10』につないで、SDHCカードで2重のバックアップ体制を構築しました。驚くことにAVCHDだと、SDHCカード32GB×3枚で、撮影2時間分の全素材が収録できますし、常にこれを持ち歩いていて、カットのつながり等の確認確認が必要な場合に使用できます。その後の撮影にはすべてこのシステムを採用しています。最悪の事態、このデータはHD素材なので、そのまま活かすこともできますから、これも一つのファイルベースの恩恵と受け止めています」


 『相棒season10』でもこのバックアップ・システムはそのまま受け継がれている。効率化と最新鋭の映像テクノロジーをバックに製作されている「相棒」シリーズは、これからのテレビドラマの制作ワークフローにも大きな影響を与えそうだ。2012年春まで続く『相棒season10』に注目だ。

「相棒season10」
テレビ朝日系列 毎週水曜よる9時〜
http://www.tv-asahi.co.jp/aibou/

撮影監督の会田正裕(アップサイド)氏

撮影監督の会田正裕(アップサイド)氏

  

  

  

  

撮影現場

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