【インタビュー】映画『TAKAMINE アメリカに桜を咲かせた男』<1>市川徹監督  日本とハリウッドのスタッフが作り上げた新世代ムービーの誕生

2011.5.13 UP

映画「TAKAMINE アメリカに桜を咲かせた男」より
映画「TAKAMINE アメリカに桜を咲かせた男」の撮影風景

映画「TAKAMINE アメリカに桜を咲かせた男」の撮影風景

市川徹監督

市川徹監督

■新世代のワークフローを導入した注目作
 4月9日から金沢・富山のシネコンを皮切りに、日本とアメリカで公開される映画「TAKAMINE アメリカに桜を咲かせた男」(監督:市川徹、5月28日より、東京・有楽町 スバル座ほか全国順次ロードショー)は、メジャー配給ではない。いわゆる単館上映の低予算制作/インディペンデントな日本映画作品でありながら、その制作には一流のハリウッドシステムをフル活用した、新世代のワークフロースタイルを取り入れている注目の作品だ。

■ワシントンに桜の苗木を届けた日本人高峯博士の知られざるドラマ
 映画の主人公である高峰譲吉は、北陸・高岡で生まれ金沢で育ち、消化酵素「ヂアスターゼ」を抽出し、「タカヂアスターゼ」を発明、またホルモン「アドレナリン」の結晶化を世界で初めて成功させ、その後の医学の発展に多大な貢献をした明治時代の化学者。
 しかし彼の功績はそれだけではなく、近代資本主義の二つの神器、科学技術と産業をともに手にした最初の日本人であり、研究開発が産業と結びつけば、巨大な富を生むことを実証して見せた。政府役人、化学者、実業家、日米親善特使の四つの顔で、日米の懸橋となった。彼の苦心でワシントンに届けられた桜の苗木は、100年以上の時を刻み続け、今では「世界一きれいな桜」と称されている。この作品は“無冠の大使”と呼ばれる高峰博士の、日米の架け橋となった知られざる側面をドラマ化したもの。

■日米の制作態勢が融合 総勢200人を超える日米のスタッフキャストが結集 
 「TAKAMINE」の撮影は、日本とアメリカでロケを敢行、日本主体の映画制作チームながら、ロサンゼルスで活躍する日本人クリエイターのネットワークをフル活用して、ハリウッドのメジャー作品が使用しているような、ハイエンドのプロダクションシステムを取り入れたワークフローで作られた作品でもある。

 市川徹監督ほかの主要スタッフも、日系アメリカ人のサム・ケイジ・ヤノ氏がDP(撮影監督)に立ち、RED ONEカメラの撮影は日本の映画カメラマンである倉田良太氏(J.S.C.)が担当。また編集はリドリー・スコット監督作品などで知られるハリウッドで活躍するエディター横山智佐子氏を起用、そして仕上げのカラーグレーディングの要となるDI(デジタルインターミディエイト)作業とフィルムレコーディングには、今現在、最も数多くのハリウッドの有名作品を手がけているプロダクション、EFILM(イーフィルム)社(http://www.efilm.com/home/)がその全てを担当した。

 今作は同社が全編DIを手がけた初の日本映画作品でもある。総勢200名を超える日米スタッフが結集した作品となった。
 市川監督に作品のねらいなどについて聞いた。(DVJ BUZZ TV 代表/映像ジャーナリスト 石川幸宏)

<市川監督インタビュー>

—本作で伝えたかったこととは何か?

市川「今作は、高峰博士の無冠の大使としての側面を描きました。これからの若者はまず海外に出て外から日本を見てもらいたい。グローバルなものの見方をしてほしい。米ハーバード大学を見ても日本人の留学生の人数は極僅か(ピーク時の30分の1)しかし現在の中国人留学生は300人以上とアジア諸国と日本人の人数が全く違う。他の国は、海外に出て、自国を見つめつつ新しい研究をしていることがこの数字をみても解る。「TAKAMINE」を観てそういう思いを持って欲しい」

—日米コラボ制作で良かったことは?

市川「米国のシーンはすべて米国で撮影でき、スタッフの移動も日本からはキースタッフ(監督、カメラ、メイク、衣装)数名のみで済んだ事でコストダウンも出来、さらにLA側のスタッフを信頼して少人数の移動で制作できたことで、最高のクオリティーを手にいれることが出来た。本場ハリウッドの映画作りを経験したことは大きかった」

—日米コラボ制作にあたって一番苦労したこと?

市川「米国での撮影のとき、高峰のアメリカの部屋(和室)を撮影するときに、向こうの美術スタッフが中国風なデザインの部屋を作ってしまい、急きょリトル東京で日本の物を買いに行った。アメリカ人にしたら日本も中国も漢字があれば同じと思っているらしい(笑)」

—ハリウッドスタイル、日本スタイルのやり方のそれぞれ良い所は?

市川「ハリウッドスタイルは、仕事内容が細かく分業化されていて、自分の仕事がハッキリ分れているので、各仕事に対してはプロフェッショナル。日本は、一人の仕事がさまざまな部署と兼任しているので、誰がその仕事をするか分からないことがある。日本スタイルの良いところは、問題が起きた時、皆で一丸となり解決するスピードが早い。今回の東日本大震災でも報道されているように、日本人のチームワークの良さは素晴らしい」

—本作はご自身の中でどんな位置づけの作品なのか?

市川「(過去作品を通して)偉人伝をドラマ化にする難しさを感じていましたが、今回の作品で偉人伝を撮る方法論が見つかったと思う。また今後も色々と日米コラボ映画を考えていきたい。」

-映像制作者として、東日本大震災に関して

市川「多くの人が被災され心を痛めていますが、この映画を観てもらい、人間の強さみたいなものを再認識して貰いたい。また一人の映像制作者として、この先々にどのように人々にこの事を伝えていくかを考えていきたい。この度の震災において、被害者をお見舞いするとともに、犠牲者のご冥福を心よりお祈り申し上げます」



「TAKAMINE アメリカに桜を咲かせた男」
監督・エグゼクティブプロデューサー:市川 徹
出演:長谷川初範、篠田三郎、渡辺裕之、田中美里、川久保拓司 他

http://j-takamine.com/

<公開情報>
5月28日~ 有楽町スバル座 ほか

前作『さくらさくら』(※P2HDにて撮影)
<公開情報>
東京:『銀座シネパトス』3月5日~4月1日
山形:『MOVIE ON やまがた』4月
北海道:『ディノスシネマズ札幌劇場』4月
京都:『MOVIX京都』5月
大阪:『なんばパークスシネマ』5月
福岡:『ソラリアシネマ』6月
愛知:『ゴールド劇場』6月
岐阜:『大垣コロナシネマワールド』近日上映
福井:『福井コロナシネマワールド』近日上映



写真:©2011 TAKAMINE制作委員会

映画「TAKAMINE アメリカに桜を咲かせた男」の撮影風景

映画「TAKAMINE アメリカに桜を咲かせた男」の撮影風景

市川徹監督

市川徹監督

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