NAB D.レアー会長講演「古いドアが閉まり、新しいドアが開く」
2008.5.2 UP
■放送への悲観主義的な空気に釘
4日14日午前9時よりラスベガス・ヒルトンホテルにおいて開催されたステート・オブ・インダストリー・アドレス(会長報告)において、NABのデビッド・レアー会長(右写真)はラジオの活性化とアナログ停波問題を中心に講演を行った。
「この仕事を愛している」と語る同会長は、「私がこれを上映するのは不適切という人もいるかも知れないが、私は興味をそそられている」としてYouTubeに投稿された映像の紹介から始めた。そしてYouTubeのモットーに「BroadcastYoyrself(自分自身を放送しよう)」とあることを捉えて「"放送"が時代遅れや退屈なことと(YouTubeの創設者や利用者が)考えていないのに、我々はどうか?」と業界自体にある悲観主義的な空気に釘を刺し、会長自身は大変に将来を楽観しているとした。
その上で、聴取者数が伸びているにも関わらず「時代遅れ」とされているラジオの活性化を訴え、ラジオの認知向上を目指す「ラジオ2020構想」を始動したことを報告した。この構想では、ラジオがいつでも、どこでも、誰でも簡単にアクセスできるメディアであることを知らしめてゆくという。
テレビについては、2009年2月17日のアナログ停波・ディジタル移行がNABの最優先課題であると位置付けた。そして、テレビ局、ネットワークと共にNABは十億ドル以上を投じて、一般への浸透に努めてゆくことを約束した。ここでは「一台たりとて取り残さない」との言葉で、決意が示されている。
同時に、この転換は「新しいドアが開くことだ」として、放送業界にディジタル化を機会として捉えて前向きに進むように促した。
最後に、この1年間のNABの活動成果が報告され、地元ラジオ局へのパフォーマンス税反対の空気が議会で広まっていること、FCCがDTV移行の浸透活動についてNAB提案を採用したこと、XMとシリウスの合併案に反対が拡がっていることなどが示された。
■DTV移行でCATV業界と手を組む
4月14日午後3時半よりLVCC S235で開催されたセッション「ディジタル移行:新機会へのケーブルと放送業界の対応」において、これまで不倶戴天の敵とされてきたケーブル業界と放送業界が協力してDTV移行に対応していることが明らかになった。
レア会長が冒頭の講演で紹介し、自ら開会の宣言もしたこのセッションでは、ケーブル業界を代表するNCTA会長のカイル・マクスラロー氏とNABの理事長を務めるジョン(ジャック)・サンダー氏が席を並べるという珍しいものとなった。パネルディスカッションでは、NTCA、NABともDTV移行を円滑に進めたいという考えに違いはなく、両者は協調していることが語られた。
パネルに参加者には、他にタイムワーナー・ケーブル社長兼CEOのグレン・ブリット氏、コムキャスト西部部門プレジデントのブラッド・ダスト氏など、CATV業界の著名人が並んだが、いずれも「加入者に対するDTV以降の説明と、従業員に対する教育を並行して行っている」としていた。また、ダスト氏は「CATV局は、DTVの再送信に備えて機材を急いで調達すべきだ」として、中小のCATV局への対応を求めた。
[提供:映像新聞社]