私が見たInter BEE 2008技術動向(その2、カメラ関係)

2008.12.12 UP

 前号(その1)では多種多彩な企画・イベントの状況を紹介した。本号からはInter BEEのメインである機器展での注目ポイントを見てみよう。広大な機器展示会場では映像・放送機器関連部門、プロオーディオ部門、ライティング部門に分かれ、多種多彩な最先端の機器、システムやソリューションが映像表示や実演を交えて華やかに展示された。映像関連の主な技術動向は、テープレス制作システムの進展、圧縮・伝送技術やネットワークの進捗に伴うファイルベースオペレーション、デジタル化・高画質化の流れを受けた高画質モニター、世界的に進展する超高精細映像や3D映像などである。これらについて順次見てみたい。

 最近のNABなどの展示会においても評判になり、今回のInter BEEでも注目されたのがいよいよ本格化して来たテープレスカメラレコーダ(テープレスカム)の進展である。テープレスカムが普及しつつある要因は、記録メディアがテープからHDD、BD、半導体などへ代わることによりカメラ自身が小型・軽量化、高信頼化されることもあるが、昨今のHD化、デジタル化を受け画質、機能性も向上し、さらに制作系とリンクされワークフローを大きく変える可能性を持っているからである。

 テープレスカメラは池上通信機がInter BEE 95に出展したHDDカメラが最初である。テープ全盛の時に登場したテープレスカメラは注目されたが耐衝撃性や記録容量などの問題も指摘され、その後、年々改善改良が続けられてきた。今回同社から出展された"Editcam"は記録容量120GBのHDDと32GBの半導体メモリーを搭載し、HDTV/SDTVのマルチフォーマットに対応できるまでに成長している。さらに昨年からは東芝と共同開発のフラッシュメモリーGFPACを使うテープレスカメラ"GFCAM"を出し、今回出展のモデルは2/3 230万画素(1080i)3CCDと100万画素(720P)から選択でき、符号化にMPEG2 422P@HLを採用、記録容量64GBの GFPACで記録時間長は120分(50Mbpsの場合)となり、軽量で機動性、運用性も高く報道取材用に好適だ。

 ソニーはテープレスカムコーダとして4年前にBD準拠のプロフェッショナル光ディスクを出し、その後、SDTVからHDTV対応とし、次に2層化ディスク採用で長時間記録化した"XDCAM HD"を、そしてより高画質化した"XDCAM HD422"へとバージョンアップしてきた。そして今回、多様化するニーズに応えメモリーカードSxSを使う"XDCAM EX"も投入しラインナップを増やしてきた。いずれも映像符号化にはMPEG-2 Long GOPを採用し、ハイエンドのHD422モデルは2/3 3板式220万画素(1920×1080)CCD、14bit A/Dを採用し、1080/59i,50i,25p、720p各フォーマットに対応し、2層ディスク(50GB)にビットレート50Mbpsで約95分記録可能となっている。ハンディ型のXDCAM EXはイメージ部に1/2"3CMOSを搭載し、HDD422と同じコーデックを採用、HD/SDの全フォーマットに対応する。スロー・クイック機能も持ち、レンズ交換も可能になり、小型・軽量、低価格で映像クリエイターでも使いやすい。

 パナソニックは4年ほど前にテープレスカメラP2シリーズを出し、以来、納入実績を上げている。記録メディアに使ったP2カードはデジカメにも使われているSDメモリーを4枚パッケージ化したもので、耐振動・衝撃、メンテナンス性に優れアクセス性も良い。今回、一層豊富になった多彩なラインアップを展示した。ハイエンドモデルがP2HD "VARICAM"で、圧縮方式はAVC-Intra 100/50を標準装備し、ハイエンド機は撮像素子に2/3 220万画素(1920×1080)3CCDを搭載、1~30fps(1080/59i)、1~25fps(1080/50p)可変速となっている。高画質の番組から映画制作まで幅広い用途に対応できる。ハンディタイプモデルは1/3 3板式16:9プログレッシブCCDを搭載、2基のP2カードスロットを装備し本体重量1.9kgと P2シリーズとして最軽量で、12~60Pの可変速モードを有し、報道取材などで高い機動性を発揮する。

 トムソンは前からグラスバレーブランドのテープレスカムInfinity DMC(デジタルメディアカム)を出しているが、最新モデルは記録メディアにリムーバブルディスクと半導体メモリーを併用するハイブリッド型で、240万画素CMOSを搭載、HD/SDにスイッチャブルに対応し、符号化はMPEG2、DV25Mbps、JPEG2000など用途に合わせ選択可能となっている。今回、目に付いたがテープレスカメラの各社間の連携が進んでいるのか、日立国際電気ブースにP2HDドッカブルカメラが、JVCはソニーのSXSカードを搭載したスタジオ・ENG兼用のコンパクトなマルチ対応カムコーダを展示し、トムソンのブースには池上のGFCAMも並んでいた。

 小型・軽量のテープレスカメラの一方で、ドラマ、CMや映画さらにデジタルシネマ用に高画質、高機能カメラも数多く出展されていた。ソニーはデジタルシネマカメラ"CineAlta"として、昨年デビューのF23に続き、今回ニューモデルのF35を出展した。撮像素子にイメージサイズがスーパー35mmフイルム相当の単板CCD(1920×1080)を搭載し、シネカメラ用の多彩なレンズやカメラアクセサリーも使え、独自ガンマ補正によりフイルム並みの広いダイナミックレンジと階調再現性を実現し、シネカメラに近い映像表現を可能とした。さらにRGB4:4:4で1~60Fpsの可変速撮影も可能となり、HDCAM SRレコーダーをケーブルレスで直接本体に取り付けることもでき機動性も向上した。池上のハイエンドカメラは新開発の2/3 230万画素AIT CCDとフルデジタルプロセッサーを搭載し14bit、高SN比を実現し、1080i/59,50および720pに対応する。

 肉眼や通常のカメラでは捉えられない現象を撮影できる超高速度カメラや高感度カメラ、さらに超小型など特殊用途のカメラも色々出展されていた。ナックの"Hi Motion"は220万画素CMOS3板式、フルHD対応カメラで、毎秒12~300枚、録画時間約11秒の高速度撮影が可能だ。北京オリンピックなどスポーツ中継などでも使われたそうだ。ノビテックはVISION RESEARCH(米)のハイスピードカメラ"Phantom" シリーズを展示したが、超高解像度CMOSを搭載しフルHDで1000 fps(33倍速)の高速撮影が可能なハイエンド機に加え、高感度のHDモデル(8倍速)や低価格の720Pモデル(230倍速)も並べた。またフォトロンはフルHDで2000fpsの高解像度ハイスピードカメラ"FASTCAM"を公開した。NECは小型・軽量のフルHDの高感度カメラを出していたが、220万画素CCDを採用し近赤外撮影モードを標準装備し、夜間の情報用カメラに適しているそうだ。
 エルグベンチャーズは重さが数10gの超小型HDカメラ3機種を並べて展示した。Iconix(米)のカメラは1/3 3CCD、HD/SDの1080i/p、720pに対応し、他の2機種はいずれも東芝製で、1/3 3CCD、フルHD1080iに対応する超小型モデルとCMOSタイプである。いずれも色再現性も良く、特殊環境下での撮影や医療応用分野、3Dカメラなど様々な利用が期待される。

【石田武久(映像技術ジャーナリスト)】

◎写真1枚目
GFCAM(池上通信機、東芝)

◎写真2枚目
XDCAM EX3ハンディカム(ソニー)

◎写真3枚目
P2HDバリカム(パナソニック)

◎写真4枚目
デジタルシネマカメラCineAlta F35(ソニー)

◎写真5枚目
ハイスピードカメラHi Motion(ナック)

#interbee2019

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