スペシャル対談 音響編 木村太郎 VS 沢口真生 その1

2007.9.21 UP

その1
「サラウンドの5.1って何?」と木村氏、「サラウンドでやって効果がないものはない」と沢口氏。まずは、知られているようで知られていないサラウンドの魅力から対談は始まった。





【木村】
実は、テレビを創る側からすると、一番難しいのが音声であり、トラブルが多いのも音声なんです。

【沢口】
アララ(笑)

【木村】
中継で映像は来ているのに音声が来ていないということが時々あります。しかし、実はテレビ放送で音声はすごく大事なのに、これまでは粗末にしていたかなと、沢口さんのお顔を見ながら反省しています(笑)。さて今後、デジタル化の中で音声も様変わりするのですが、現場はどのように認識されているのでしょうか。

【沢口】
やっと僕らのやりたい表現ができる時代になったと感じています。1985年くらいからステレオの次にはサラウンドという表現が大切だという信念を持ってやってきましたが、2003年から地上波デジタル放送が始まり、制作側の環境はかなり整ってきたという感じですね。

【木村】
ステレオが出現したとき、耳が2つあるから2つで出せばいいよねと考えていたのが、それがサラウンドで後ろからの音も拾って5つになってしまった。初歩的なことを聞いて申し訳ないのですが、サラウンドはそれだけの効果があるのか、あるいは人間の耳ってそれほどセンシティブなものなんでしょうか?

【沢口】
人間の耳は2つですが、実は、360度から何万チャンネルもの情報を聞ける素晴らしい機能を持っているのです。ステレオというのはその内のたった 2チャンネルの情報しか聞いていなかった。それが5.1チャンネルと3倍になり、現場の空気の情報をしっかりと捉えることができ、より自然に聞こえるようになりました。

【木村】
そうすると、そのうち5.1ではなく、10.1や20になってくるのでしょうか?

【沢口】
十分に考えられますね。

【木村】
そうですか。テレビの画面の走査線が無限に増えていくように、音声のトラック数も増えていく可能性がある?

【沢口】
ええ。チャンネル数は多い方が再現性がいいのですが、家庭の部屋がスピーカーだらけになっても困るので、7.1、10.2、22.2などで研究されています。

【木村】
またまた初歩的な質問で恐縮ですが、5.1のコンマ1というのはどんな意味があるのですか?

【沢口】
とくに映画の場合ですが、爆発音やパンチ音に迫力をつけるために100ヘルツ以下の空気の振動のようなものを付加するのですが、100ヘルツ以下というのは全帯域の1割くらいにしか相当しないのでコンマ1がついている。だからチャンネル数としては6チャンネルなのです。音楽やドキュメンタリ番組の場合はメインの5チャンネルで十分低域が再現できます。

【木村】
スポーツの実況放送が5.1チャンネルであればすごく立体的になるような気がする。その他、どんな場合に効果がありますか。

【沢口】
サラウンドでやって効果がないものはないと思います。スポーツで言うとゴルフ。最初はゴルフをサラウンドでやって意味があるのかと疑問視する向きも多かった。ところが打球感というのがぜんぜん違う。打ったときの音ですね。実際のゴルフ場だとカーンという音が響いている。その空気の情報がステレオでは捉えられていない、音が圧縮されていますので。それが、松林に響くような伸びやかなカーンという打球感がサラウンドでは表現され、音がリアルになる。(その2に続く)

#interbee2019

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