【IBC 2011】まとめ(3)次代の映像技術と二極化する映像制作業界

2011.10.14 UP

Amberfinのブース
Digimetricsのブース

Digimetricsのブース

weisscamのハイスピードカメラT-1

weisscamのハイスピードカメラT-1

450fpsまで対応する独P+S社のPScamX35

450fpsまで対応する独P+S社のPScamX35

来年のIBCは9月6日から11日まで開催だ

来年のIBCは9月6日から11日まで開催だ

 4K、3Dというハイエンドへの技術躍進とともに、今後の映像文化を占うような新たなテクノロジーの発見があった、今回のIBC2011。今後の映像テクノロジーにおける進化の方向性として、いくつかの注目すべき技術と新たな市場傾向が垣間見えた。

■多メディア対応がもたらすマルチコーデック化
 パナソニックが発表した“AVC Ultra”に代表される、圧縮技術の更なる追求は、今後のデジタル映像を推進する上で最も重要なテクノロジーだろう。デジタル技術とはそもそも“圧縮”技術である。この利点を追求して従来と同等、もしくはそれ以下の転送ビットレートでも現行の高画質画像を再現できるといった、この新たなフォーマットは、今後の映像分野において最も重要となる技術だ。さらにこの圧縮を各配信先、各運用別にエンコード/デコードし、さらにそれらを管理/コントロールするトランスコードに関する新しい技術は、次世代の、特にポスト作業において重要な位置を占めると思われる。

 ポストプロダクションの現況は、日本に限らず世界的に非常に厳しい状況だ。いまや編集、合成といった従来からのポストプロダクション作業は、全て個人のデスクトップでも出来るようになっており、カラーグレーディングなどの高度なフローか、HDCAMなどへのリニアメディアへの方式変換、もしくはMAでしかその存在価値が薄れて来ていると言っても過言ではない。現在のファシリティを活かしつつ今後のポスト作業を考えた時、最も適切なのか?多くのポストプロダクションが模索しているだろう。

 ファイルベース化全盛の中で次世代のポスト作業の要として注目すべきなのは、これら圧縮コーデックの多様化が、すでに多くの配信先別に対してマルチ変換されているという事だ。
 マルチコーデック配信時代に突入した今、映像コンテンツは映画、TV、パッケージだけに限られているものではない。むしろそれ以外の部分、例えばWebビデオやスマートTVなどの新たなデバイスによる視聴の方が金銭的にも有益になっている。そこで各方式を変換/管理するトランスコードとそのQC(クオリティコントロール)のオペレーティングが今後大きく重要になってくると思われるのだ。

 IBC2011でも、Harris、digital rapids、Amberfin、Digimetricsといった企業がトランスコード/QC技術における新たな技術、ソフトウェアの展開を見せている。特にSnell&Willcox社からのスピンオフチームが設立したAmberfin社のブースでは、MXFのマスター本“The MXF Book”を著した、MXF Masterと呼ばれるBruce Devlin氏が来場。現在、同社のチーフテクニカルオフィサーでもある彼自らが、ファイルベースとその多様性、汎用性をコントロールする同社のテクノロジーに深く関与していることは非常に興味深い。

■秒間マルチフレーム再生への期待
 もう一つの新たなステージを示すテクノロジーは“時間解像度”。動解像度、フレーム解像度とも言われるものだ。要は従来の60i、24p、30pといった放送基準に準拠した現行のテレビ受像機で再生可能な映像から、48p、60p、120p、240pといった秒間マルチフレームでの再生ができるような撮影が望まれている。
 現にIBC2011会場にも姿を現したジェームズ・キャメロン監督もこれを支持する発言をしており、今後注目される分野だ。会場では同じような考え方でHS(ハイスピード)撮影カメラも安価で高性能な品質の製品が多々出て来たので、カメラ技術に関してはあまり障壁はないように思われるが、時間解像度を表現するには、モニター表示などでの再生技術も重要課題であり、これを実現するには現在の放送基準とは別の表示再生能力を持ったモニター/ディスプレイの開発が望まれる。
 ソニー、パナソニック、池上通信機、JVC KENWOOD(JVC日本ビクターは今回からこの名称で出展)、アストロデザインなど、従来の放送映像技術とともに、高いモニタリング技術を有する日本メーカーの強みとして、今後この分野が彼らを船頭として発展していくことを願うばかりだ。

■進むカメラ機材の小型化・高性能化
 さらに大きな市場変革を予感させるものとしては、小型化・高性能化するカメラ機材がもたらす新たな市場変化である。DSLRムービーなどに代表されるこの傾向は、すでにマーケットそのものにも大きな変革を与えている。
 世界経済の弱体とともに制作費自体が減額になり、制作規模が縮小し、お手軽に高画質、高品位映像が手に入る反面、従来のプロ市場は狭小している現実がある。その中で今後“プロフェッショナル映像制作”という分野がどのようになっていくのか?

 映画、TV、イベント映像など4K、高画質の分野では、さらにそのクオリティ追求という面が進んで行くだろう。しかしその分野を突き詰める層は、一部のハイエンドプロに限られる。
 そしてこれまでミドルレンジで映像制作を行って来た層では、ただ専門映像機器のオペレーションが出来る、というだけでは、プロフェッショナルという部分が成立出来ない現実があり、それに台頭するようにプロシューマという市場がそれらを凌駕するという現実もすでに起こりつつある。

 例えば、一般企業の広報宣伝部やマーケティング会社の制作部など。今回のIBCでも、またNABやInterBEEにおいても、これまでの映像のプロと言われて来た、映画、放送、業務などのプロ映像業界とは、全く無縁の層が数多く来場している。彼らはこれまでワードやエクセル、パワーポイントでプレゼン資料を作ってきたるように、すでに会社紹介のプレゼンビデオや、会議記録の映像記録、そしてWebによる商品プロモーションビデオ等を普通に(!)制作している。さらにはUSTREAMやIPTVなどの世界を皮切りに、ワンマンブロードキャスティング、個人ニュースプロバイダーといった“カジュアル・ブロードキャスター”がすでに世界の多くで活躍している現実がある。

 様々な分野の人たちが映像制作のリテラシーを身につけ始め、同時に多ジャンルから映像制作をプロ業務として携わるような人々が存在していることにも、今後は業界としては大きく目を向ける必要があるだろう。

Digimetricsのブース

Digimetricsのブース

weisscamのハイスピードカメラT-1

weisscamのハイスピードカメラT-1

450fpsまで対応する独P+S社のPScamX35

450fpsまで対応する独P+S社のPScamX35

来年のIBCは9月6日から11日まで開催だ

来年のIBCは9月6日から11日まで開催だ

#interbee2019

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