シーテックジャパン2008に見る映像関連技術動向(その1)

2008.10.24 UP

「シーテックジャパン」が9月30日~10月4日、幕張メッセで開催された。幅広い産業・民生分野をカバーするIT・エレクトロニクス最大の総合展で、放送・通信分野を網羅する"Inter BEE"とはビジネス的にも技術的にも密接に関連している。今回のシーテックは「デジタルコンバージェンス、新たなるステージへ」を掲げ、出展者数804社・団体(海外27カ国・地域からの289社・団体を含む)、来場者数196,680人を迎え盛況に開催された。デジタル技術により放送と通信、コンピュータと家電の垣根が低くなり、ハードウエアとソフトウエア、コンテンツ、サービスが融合し新しい産業、市場が創出されて行く段階に入っている。

 初日、海外からのゲストスピーチのインテル社は「ますます拡大するモバイル環境をさらに使いやすく楽しいものにする」と語り、マイクロソフト社は「多様化するデジタルライフスタイルに向け新たなサービス、付加価値の高いイノベーションを提供していく」と語った。また主催3団体のキーノートスピーチでは、今回の大会の基本的コンセプトに添う講演が行なわれた。JEITA(電子情報技術産業協会)は「デジタルコンバージェンス、新たなるステージへ~人、地球にやさしい社会を目指して」と題し、これからの社会発展は環境問題を抜きに考えられず、人、地球に優しい社会を実現するのにグリーンITを推進し、IT機器や民生機器の省エネ化などの重要性について大いに語った。CIAJ(情報通信ネットワーク産業協会)は「ICTの発展とそれに支えられるビジネスソリューション」、CSAJ(コンピュータソフトウエア協会)は「次世代ネットワークはソフトウエア産業をどう変革させるか」について語った。

 幕張メッセの広いスペースに繰り広げられた展示場を廻って見て、例年以上に本格デジタル化に向けた高画質・高機能の機器、IT時代に向けたネットへ対応、また環境時代を反映しエコロジーに配慮されたシステムやデバイスなどが目についた。中でも注目を集めていたのが、北京オリンピックを機に順調に普及している薄型テレビである。各社ともかなりのスペースを取り、液晶型、プラズマ型(PDP)、有機ELと多種多彩なモデルを並べ見せていたが、技術動向のポイントとしては超薄型化、低消費電力化、超高画質化、超大型化と言ったところで、本号ではこれらの概要について取上げてみる。

 ソニーはブース壁面に55、46、32型など"BRAVIA"シリーズの液晶テレビを配した。バックライトのRGB LED化により色域が広がり色純度も上り色再現性が向上し、発光を部分的に制御することで階調再現性を改善しコントラスト比も高めた。また液晶特有の動きボケ改善のため、多くの機種で行なわれている倍速120コマ駆動に加え、撮影時のボケも補正しつつ4倍速240コマ駆動のモデルも公開した。動きの激しいスポーツ番組や毎秒コマ数が少ない映画作品の動画像画質が大幅に改善されている。事前から評判になった超薄型モデルは正面、背面からも見られるように回転台の上に並べられていた。画面サイズは40インチ、LEDバックライトで最薄部は9.9mm、12Kgの軽量を実現した。さらに側面のステージには昨年デビューした有機ELテレビが多数台並べられた。有機ELは自己発光型ディスプレイで、構造的に薄型・軽量化でき、低消費電力で高輝度、高コントラストが得られ、広色域で高純度、速い応答性と多くの優れた特徴を持っている。展示されたモデルは、画面サイズが27型と11型で厚さわずか3mmの超薄型だ。さらに有機ELと有機TFT(薄膜トランジスター)を一体化し、0.3mmと薄く折り曲げることもできる紙のようなディスプレイも参考出品されていたが、今後の成長を期待したい。
 パナソニックは新ヒューマン"VIERA"シリーズとして、150と103型の大型PDP、中型の65、50、46型PDP、小型の37、32型液晶テレビを並べて展示した。次世代"Neo PDP"技術は、新材料の蛍光体や新放電ガスの開発、セル構造や回路・駆動方式の見直しなどにより大幅に発光効率を向上させ、高輝度、高精細度化に加え黒の再現性や色表現性の改善などの画質面だけでなく、一層の薄型、大画面化も可能にし、さらに消費電力は従来比で半減するそうだ。環境時代に応え、パネル製作に際して鉛、水銀、塩ビフリーとし、省資源リサイクルにも配慮しているそうだ。それらの集大成として世界最大の150インチPDPが展示された。従来主力機50型の9枚分の大きさで、サイズに見合う高精細にするため4K(画素数4096×2160)対応となっている。デジタルシネマシアターやイベント映像展示等の利用が考えられる。103型PDPによる3Dシアターについては次号で紹介する。液晶モデルも展示されていたが、シーンにあわせバックライトの明るさを制御し黒の表現を改善し、あわせて縦・横・斜めの動きに対応する倍速駆動により動画像の改善もしている。

 東芝は"REGZA"シリーズの52、46、37型など各種液晶テレビを出展した。ほとんどの機種が広色域パネルを使ったフルHDモデルだが、注目は画素数がフルHDに満たない地上波デジタルやDVDコンテンツのような低解像度映像(1440×1080、720×480)でも高精細で表示する超解像技術で、画面を分割しその効果を比較表示して見せていた。また高精度補間により滑らかな動きに再現する倍速120コマ表示する技術や、周囲環境やコンテンツにあわせ画面の明るさや画質を自動的に最適調整することにより高画質を楽しみながら消費電力を軽減できる技術の効果も見せていた。
 日立製作所は"Wooo UT"シリーズの薄型液晶モデルをメインに展示した。参考出品の37型モデルは最薄部は1.5cmで10Kgと軽量化された。薄く軽量化されことで、家具のように壁面に吊り下げたり屏風のように軽く立て掛けたり、レイアウトが自由になるそうだ。画質の点では、上下左右視野角が広いパネルを搭載し、倍速120コマ駆動で残像感を減らし、豊かな色彩表現と階調再現性を向上し、24コマ撮影の映画フイルムを動き補間技術で滑らかに再現するなめらかシネマも導入されている。環境保護にも配慮され、LEDバックライト、薄型デバイス、薄型電源、薄型軽量材料の使用などにより省資源化と共に消費電力は従来比で約半分になるそうだ。
 
 液晶テレビで高いシェアを持つシャープは豊富なラインナップの"AQUAS"シリーズを出展した。注目を集めた新モデルは、画面サイズは65、52インチで最薄部が2.3cmと従来比の2/3となった。バックライトを薄型化したメガASVパネルを搭載し、映像に合わせ明るさを制御しコントラスト比を1万対1に広げ、広い色再現と階調再現を確保しつつ低消費電力化も実現した。また独自アルゴリズムの動き補間方式による倍速120コマドライブにより動画像画質も改善している。
 海外向けに販路を拡張しているJVCは、LEDバックライトによりスリム化と共に豊かな色再現と高コントラスト化しつつ低消費電力化した液晶モデルを出展した。画面サイズは47、42、37型などで同社独自の高画質エンジン"GENESSA"を実装し、シーン毎にコントラスト調整やノイズを低減し、さらに倍速120コマあるいは3倍速180コマ駆動も導入し動画像の画質を向上した。
 PDPの老舗のパイオニアは新世代モデルの"KURO"シリーズを出展した。PDP特有の黒レベルを予備放電方式の見直しにより従来モデル比で約1/5とし、コントラスト比と色再現性を向上し艶と立体感のある映像が得られるようになった。映画作品などを鑑賞するホームシアター向けに適している。また連携を強めているシャープの液晶テレビとパイオニアの音響機器を組合わせ、「映像と音響の融合」も公開していた。
 三菱電機はメインステージに巨大なオオーロラビジョンLEDディスプレイを2式設置し、その周囲に液晶テレビ”REAL”シリーズ52、46、40型を並べた。厚さ4.4cmのスリム型は、光沢処理パネルを採用し高コントラストと色再現性を実現し、チューナー部が分離され映像や音声は無線伝送される。部屋に合わせてテレビの配置が自由にでき、室内環境に応じ画面の明るさが自動調整されるなど省エネにも配慮されている。

【映像技術ジャーナリスト 石田武久】


◎写真1枚目
ゲスト講演会場情景(インテル副社長、アナンド・チャンドラシーカ氏)

◎写真2枚目
超薄型有機ELテレビ(ソニー)

◎写真3枚目
超大型省エネ型PDP(パナソニック)

◎写真4枚目
Extra Slim型液晶テレビ(シャープ)

◎写真5枚目
LCDテレビの倍速表示比較(JVC)

#interbee2019

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