【ニュース】「International 3D Fair 2009」が韓国で開催 世界の3D立体映像関係者が韓国に集結 〜中国メーカーの3D機器も充実、映画以外の市場拡大にも期待〜
2009.10.19 UP
WASOLは顕微鏡対応のマクロ専用3Dビデオカメラを出展
中国 Inlife-handnetのブース
<<日韓中米の4カ国の立体関係者がソウルに集結>>
3D立体映像に関する国際的なイベント「International 3D Fair 2009」が10月13日から16日までの4日間、韓国ソウルの国際展示場KINTEXにおいて開催された。韓国、日本、中国、アメリカ、の4カ国から5団体(韓国からは2団体)の3D立体映像の関連団体が共催し、ワークショップ、展示会、コンテンツの上映を行った。
特に中国の3D立体映像市場への取り組みが印象的で、全体を通して3D立体映像市場が今後大きな可能性を秘めていることが実感できたイベントであった。
(3D立体映像/デジタルサイネージコンサルタント 町田聡)
<<2カ国開催から4カ国に拡大 世界的な広がりと関心の高まりを反映>>
このイベントは、昨年まで日本と韓国の2カ国の共催で行われていたが、今年から中国とアメリカを加えた4カ国の共催となり、まさに国際的なイベントになってきた。
開催国は1年おきに日本と韓国が担当しており、昨年は日本で開催されている。来年以降は中国や米国なども加えた開催国を検討しているとのことであるが、欧州については、国ごとに団体があるらしく数が多いので徐々に関係を広げていく方針のようである。
このイベントが世界的な広がりを見せているのは、今年の大会委員長である、韓国の光云(クァンウン)大学の金恩洙 (キム ウンス)教授によるところが大きく、金教授は韓国の3DRC(3D Display Research Center)の所長、3DFIC(3D Fusion Industry Consortium)の議長も務めており、韓国政府の3D立体映像関連施策において、重要な役割を果たしておられる。金教授は中国やアメリカ、ヨーロッパの3D立体映像関連の団体ともイベントを共催するなど積極的に親交を深めており、その成果がこのイベントにも反映され、世界の3D立体映像業界の牽引役ともなっている。
今回のInternational 3D Fair 2009の共催団体は以下のとおりである。
【韓国】
・3DFIC (3D Fusion Industry Consortium)
・3DRC (3D Display Research Center)
【日本】
・3Dコンソーシアム
【中国】
・C3D(China 3D Industry Association)
【米国】
・3D@Home Consortium
<<B2Bを含めた立体映像市場を見渡せるイベント>>
筆者は、このイベントに参加する前、10月6日から10月10日まで幕張メッセで開催されたCEATECを見ており、そこで日本の大手電機メーカーがこぞって「3D」を銘打って発表した3Dディスプレイも見ている。この流れにおいてはブルーレイの3D対応や、HDMI1.4に代表されるコンシューマ市場向けの世界戦略が着々と進んでいるように見える。
しかし、3D立体映像に関しては裸眼立体視への課題や、現行放送とのコンパチビリティ、撮影の問題、コンテンツ変換等、日本のメーカーも一枚岩ではなく、まだまだ多くの課題があり、この方式さえあれば全てOKというものがない状態である。
「International 3D Fair 2009」においては、たとえば双眼鏡タイプの3Dビデオカメラや顕微鏡タイプの3Dビデオカメラ、裸眼3Dディスプレイなど、さまざまな機器や立体方式を見ることができ、B to Bを含めた3D立体映像市場全体を見渡すことができるイベントとなっている。
<<韓国 HUNDAI ITがリアルタイム変換装置を展示>>
韓国政府の科学技術部や情報通信部の後押しで、韓国内の団体(3DRC、3DFICなど)が積極的に活動している状況。展示では、HUNDAI ITが偏光方式の46”と32”のディスプレイとリアルタイムの2D/3D変換装置を展示、6面マルチのディスプレイはベゼルが狭く迫力があった。
そのほか、日本でもおなじみのZALMANやredroverの偏光方式の3Dディスプレイ展示があったが、IFA2009で出展されたというSAMSUNGの58”120Hz PDPシャッター方式は展示されていなかったようだ。
裸眼3Dディスプレイは、V3iが輸入品を販売していたのと、3DRCがリアプロジェクション方式の裸眼3Dディスプレイを参考出展していた。
LG Electronicsは、ワークショップの発表で、47”のフィールドシーケンシャル偏光方式のHD対応3Dディスプレイを商品化したとのこと(フレームシーケンシャルモードもあるようだが60Hz対応)、また、デジタルサイネージ用に42”裸眼(レンチキュラー)の3DLCDディスプレイ、偏光方式とシャッター方式(120Hz、240Hz)の3DTV、デュアルとシングルの3D偏光方式プロジェクターをいずれも開発中とのことである。
そのほか、WASOLが3D顕微鏡としてズームができるマクロ専用の3Dビデオカメラを展示しており昆虫の拡大表示で、教育用に売り込んでいた。
<<日本 ニューサイトジャパンがノートPC裸眼3Dディスプレイを参考出展>>
日本からは、3Dコンソーシアムとそのほかの3D立体映像関係者が参加していた。
ニューサイトジャパンが裸眼3Dディスプレイや、それをノートPCに組み込んだもの(参考出展)を展示したほか、セイコーエプロンが2.5インチXGAの裸眼立体ディスプレイを、(株)スリーディーが、立体視対応のリアルタイムレンダラーREMOを、調査会社のふじわらロスチャイルドリミテッドがそれぞれ展示した。
ワークショップでは、BS11(日本BS放送)の磯部氏が日本での3D立体放送の状況を説明した。
世界でもBS11程本格的な3D放送は行われておらず、会場からは、「なぜ上下分割のtop and lowではなく、左右分割のside by sideが選ばれたのか」など、かなり具体的な質問が出ていた。これに対して磯部氏は、「3Dディスプレイを持っていない視聴者のほうが多いので、何が映っているか分かりやすいside by sideを採用した」と理由を説明した。
そのほか、国際標準における日本の活動などが産総研の氏家氏やセイコーエプソンの濱岸氏から発表された。この分野は日本が牽引してきたが、最近韓国が国際会議での発言権を強めており、日本も危機感をいだいているとのことである。
<<中国 40社を超える企業が参加する3D団体のメンバーがブース展示>>
中国では、産業情報省のIT全体への後押しによって、ビデオ産業団体の枠組みの中で3D立体映像産業がてこ入れがされており、2008年10月に北京でChina 3D Industry Associationが設立され、現在では40社を超える団体となっている。
中国ブースは4カ国のうちで一番スペースをとっており、製品ラインナップも充実していた。TCLでは、42”のレンチキュラー方式の裸眼3Dディスプレイを展示していた、Inlife-handnetでは、望遠鏡型裸眼立体小型モニター付きのビデオカメラや双眼レンズのデジカメ、ビデオカメラ用ステレオアダプタレンズ、裸眼3Dのフォトフレーム、裸眼3D対応ノートPCなどユニークな商品を多数展示していた。
また、ESTER DISPLAYTECHでは3DビデオとPCの3D表示の両方で使用できるメガネタイプのHMD(Head Mount Display)を展示しており、海外のHMDメーカーへのOEM供給先でもあると話していた。
いずれも、中国のシンセンの会社であることを考えると中国製というよりは台湾製か、台湾や海外の技術や資本が投下されていることがうかがえる。中国での需要も視野に入れた輸出用の製品であり、まさに台湾が得意としている手法をより安く提供する枠組みができているようだ。
最近中国では韓国製から台湾製に切り替える動きがあるらしく、「チャイワン」(チャイナとタイワンを組み合わせた造語)と言われているのも納得できる。しかし、この手の製品をすぐに形にしてしまうのには敬服する。
しかも、プロトタイプかもしれないが操作ができる。つまり、ファームウエアもインターフェースも完成しているのである。
たとえば望遠鏡型で裸眼3Dの小型モニター付きのビデオカメラなるものは、握ったところにあるボタン(携帯の選択ボタンさながら)の押す方向により記録、再生、ズームが行えるし、覗かずとも上部についている小型裸眼3Dディスプレイでも確認もできてしまうのである。
また、ワークショップにおいては、TCLがシンセンなどの空港に裸眼立体ディスプレイをデジタルサイネージ用に納品した事例を紹介した他、C3Iの事務局長のBin Tang氏が中国での活動報告をした。
<<米国 TDVが3Dコーデックを出展>>
ワークショップでは、リサーチ会社のInside Mediaが世界の3D市場分析をしたほか、3D@Homeの代表が過去から現在までの3Dアプリケーションを振り返った。
展示では、3DコーデックのTD Vision(http://www.tdvision.com/)が出展していた。実際のものはなく、話だけであったが筆者は大変興味深い製品であり、今後重要な技術の一つになるかもしれないと思った。
この製品は放送向けの製品であり、その点において既存の2Dディスプレイとコンパチビリティを提供することを目的にしているとのことで、左右の映像の片方だけをフルサイズで送り、もう一方の映像はその差分だけをデルタマップとして送ることのできるコーデックであるとのこと。
逆に考えると日本で採用されているフィールドシーケンシャルやサイドバイサイド方式は現行の2Dディスプレイではフルサイズで正しく見ることができないということになる。モノクロ映像がカラー映像になった時、モノクロテレビでも見ることができた歴史があるが、今後の3Dディスプレイにおいて日本はどの立場をとっていくのか、興味深い課題である。
WASOLは顕微鏡対応のマクロ専用3Dビデオカメラを出展
中国 Inlife-handnetのブース