【NEWS】日本レコード協会 新年賀詞交歓会 下村博文 文部科学省大臣「芸術文化立国を目指しオールジャパンの取り組みを」
2013.1.8 UP
昨年のCD、DVD、BD、配信の売り上げ状況
P2Pファイル共有ノード数が昨年10月以降大きく減少している
下村博文 文部科学省大臣
乾杯の音頭をとる 日本音楽事業者協会 尾木徹 会長(中央)
一般社団法人 日本レコード協会は1月7日、東京都千代田区のホテルニューオータニにおいて、新年賀詞交歓会を開催した。
冒頭、同協会の会長でソニーミュージック・エンタテインメント 代表取締役 CEOの北川直樹氏が登壇し、冒頭、昨年10月の著作権法改正について次のように述べた。
■「著作権法改正による違法ダウンロード罰則規定成立で効果」
「昨年10月1日、著作権法が改正され、違法ダウンロードの罰則規定が成立した。長年の夢が実現したということで大変感謝している。昨年、杉良太郎氏を招いて功労賞を授賞し、激励をしたが、それがみごとに実現した。多くの方の協力を得て成立したことを心よりお礼申し上げたい」
「今回の法改正については、音楽団体8団体が一丸となり、『STOP! 違法ダウンロード広報委員会』を結成し、さまざまな広報・啓蒙活動に取り組んでいる。全国の中学校・高校にポスターを送るなど、さまざまな活動をした。今後とも普及啓蒙活動を継続していき、支援と協力をお願いしたい。加えて、「映画館へ行こう!」実行委員会の協力により、昨年11月から、全国の映画館3300スクリーンで、本編上映直前に流される盗撮防止法のCMの後に、ストップ違法ダウンロード・キャンペーンのCMを流してもらっている」
著作権法の改正と周知活動による効果について北川氏は「インターネットにおけるP2Pの利用が20%から40%減少したという。これは特に著作権侵害の多かったP2Pの利用数が減ったということで、かなり効果が出ている」と評価し「引き続き、レコード協会としては、違法ファイルの削除要請を含めて、違法配信対策を協会のトッププライオリティとして取り組んでいきたい」と意欲を示した。
■「世界ナンバーワンのパッケージ王国としてさらなる需要拡大策を」
続いて、レコード産業の市況について話題を転じ、「パッケージ商品は、おかげさまでかなり順調に推移している。14年ぶりに前年を上回る見込み」としてグラフを示し、
「昨年11月までのデータでは、すべての指標において、前年を上回っている」と指摘した。また、日本のレコード市場が多様な楽曲を提供する、世界的にも豊かな市場であるとし、「2008年から5年間、世界第一のパッケージ市場を形成している。世界でもこんなに豊かなあらゆる音楽が存在しているマーケットはどこにもない。今年も、引き続き、パッケージの需要拡大政策にとりくみ、世界ナンバーワンのパッケージ王国としての自信を持って進んでいきたい」と述べた。
■「世界のトレンドと逆をいく配信ビジネスの低調さ」
一方、配信では苦戦しており、売り上げは二年連続のダウンの見込みという。北川氏はその要因として、「違法配信の問題もある。また、スマートホンの急速な普及により、ユーザーの消費動向や音楽との接し方がさまざまに変化していることが理由ではないか」と分析。これに対して、世界のトレンドとしては、配信ビジネスは成長してきており、2012年の前半の世界の主要国では、対前年を下回っているのは日本だけと指摘。北川氏は「今後は、他国の良い部分を取り入れて、日本型にアレンジして、配信のダウンを打破できると思っている」とした。
■「音楽ビジネスの原点は良い音楽、良いアーチストを育てること」
北川氏は最後に、「昨年は、かなりエポックメイキングな話題の多い年となった。CDが14年ぶりに回復したり、ミリオンアルバムの増加が見られたり、違法配信問題を解決する大きな一歩となる著作権法の改正。レコード産業の本格的な復活となる好状況が徐々に揃ってきていると認識している。ただ、我々は、やはり良い音楽、良いアーチストを育てていかなければいけないと思っている。それが音楽ビジネスの原点だと考え、音楽の力を信じてやっている。今年も引き続き、作詞作曲家、実演家、所属事務所、媒体などと緊密に連携をとり、全者一丸良い作品をつくれるようにがんばっていきたい」と述べ、創立71周年を迎える2013年において、取り組む8項目を掲げ、「特に昨今話題となっている、需要拡大策、日本音楽の海外展開。総務省による日本のドラマの輸出で、必ずテーマソングとして音楽が乗っている。彼らと協力しながら、日本の音楽を世界へ持っていくことも、今後の重点項目としている」と述べた。
<日本レコード協会の今年の主な重点施策>
・違法音楽配信の撲滅
・需要拡大施策
・日本音楽の海外展開の促進
・著作権・著作隣接権の保護期間延長の実現
・私的録音録画補償金問題の抜本的解決
・レコード(CD)寄贈(社会福祉事業)
・大学への寄付講座の設置(文化事業)
・若年層に対する著作権啓発活動
■下村博文 文部科学省大臣「芸術文化立国を目指しオールジャパンの取り組みを」
北川氏の挨拶に続き、文部科学省大臣の下村博文氏が登壇し、次のように来賓の挨拶を行った。
「今年で71年目になる節目、おめでとうございます。文部科学大臣がレコード協会の賀詞交歓会に出席するのは久しぶりと聞くが、先日、杉良太郎氏にも出席を進められた。それは、文部科学大臣になったから、ということよりも、違法ダウンロードの罰則化についてのこれまでの苦労が実を結んだからだ。多くの国会議員が力を入れてやったと思っている。昨年、(私は)自民党内で文部科学部会長だったが、党内をまとめるのに大変な作業だった。民主党でもまとめるのが大変だった。国会でこの法案を出すまでにたどり着くまでに大変なことがあった。法治国家として、こういう違法ダウンロードが野放しになっていることはあるべきでない。罰則を設けることにより、法律・ルールを守ってもらうことが必要である、ということで法改正が実現し、効果が出ているということは喜ばしいことだ」
「これからわれわれは、安倍政権のもとで、景気回復へ向けて動き始めている。大型10兆円の補正予算を組みながら実効的にデフレ、円高不況から脱却をして、景気浮揚につながるように、さらに平成25年度の予算においても、まず、経済から再生し日本を元気にしていく」
「文部科学の領域において、日本が目指すべき方向は、芸術文化立国だと思う。音楽、文化は、世界に誇るべきものがたくさんある。しかし、トータルでオールジャパンとして、国家戦略として十二分に今まで機能してこなかった部分もあるのではないか。今まで以上に、日本の音楽、文化を世界に発信して、世界が日本の音楽、文化の市場であるというような時代になるよう、力を合わせて頑張ることを誓い、挨拶とする」
■一般社団法人 日本音楽事業者協会 尾木徹会長「支援事業を通じて強まった業界の絆。今年は結果を出す年に」
関係者、来賓による鏡開きの後、乾杯の挨拶で、一般社団法人 日本音楽事業者協会 会長 尾木徹氏が登壇し、次のように話し、乾杯の音頭をとった。
「東日本大震災の支援事業を通じて、音楽業界団体の絆が相当強まったと感じている。違法ダウンロードの立法化や、日本のコンテンツを海外に展開させるという点においても、まさにそういう(絆が強まった)結果だと思うが、今年は、そういった諸問題の結果を出さなければいけない年だと思っている」
「パッケージ市場は昨年改善したといわれるが、今から14-15年前のパッケージ全盛時代から比べると売れ行きはまだ、3分の1程度だ。これを元に戻そうとすると3倍になるが、せいぜい昨年の倍の売り上げを目標に、関係諸団体が総力を挙げて努力をしていこうではないかと考えている」
※「映画館に行こう!」実行委員会は、映画製作者連盟、外国映画輸入配給協会、モーションピクチャーズ・アソシエーション、全国興行生活衛生同業組合連合会の4団体で構成されており、映画人口の増加のための施策として、2004年から「夫婦50割引」や「盗撮防止キャンペーン」など様々な展開をしている。
昨年のCD、DVD、BD、配信の売り上げ状況
P2Pファイル共有ノード数が昨年10月以降大きく減少している
下村博文 文部科学省大臣
乾杯の音頭をとる 日本音楽事業者協会 尾木徹 会長(中央)