【Inter BEE 2014】NAB筆頭副会長基調講演 米国次世代放送 ATSC 3.0 移行計画 「2016年に電波移行オークション」

2014.11.20 UP

米NABの筆頭副会長兼CTO(最高技術責任者) サム・マセイニー氏

米NABの筆頭副会長兼CTO(最高技術責任者) サム・マセイニー氏

 50回目を迎えたInterBEEは、今年も世界各地から基調講演者が登壇する。初日11月19日に基調講演に立ったのは、米NABの筆頭副会長兼CTO(最高技術責任者)のサム・マセイニー氏である。1時間にわたってなされた基調講演を抄訳し速報する
(杉沼浩司)。

■「NHKがインスパイア」
 本日50回目を迎えるInterBEEで基調講演できることを極めて光栄に感じている。私からもお祝いを申し上げたい。
 私が勤務したWRAL局のオーナーであるジム・グッドマンは、NHKのHDデモを見て惚れ込んだ結果、96年7月にデジタル波の発信を始めた。道を開いてくれたNHKに感謝したい。
 米国はDTVのために周波数再編を行ったが、次世代DTVのために再度、動きが出ている。

■次世代DTV ATSC3.0への移行計画
 次世代DTVは、電波とネットの双方の経路を扱える方式となるだろう。UHDに加えて、広ダイナミックレンジ(HDR)、高フレームレート(HFR)、広色域、高臨場感オーディオ、モビリティ、パーソナル化など多くの点で現在のDTVに比してとび抜けたものとなる。これらの規格となるのがATSC3.0で、来年末までに草案が固まる。一部は既に固まっている。無線区間はOFDMを採用する。SFNを実現すれば、周波数利用効率が高まる。プロトコルはIP、符号化にはHEVCを使う。
 ATSC3.0への移行は、注意深く計画を練る必要がある。米国のDTV移行は、13年かかった。日本は8年で移行した。時間が掛かる事業ではあるが、放送が進歩を止めてはいけない。
 この移行で、放送事業者、機器メーカー、そして視聴者に利益があった。もちろん108MHzの帯域幅とオークションによって200億ドルを得た政府にも良かった。DTV化でチャンネルも増えた視聴の幅も拡がった。私は、室内アンテナでも22のチャンネルを楽しんでいる。

■FCC インセンティブ・オークションを計画
 FCCはインセンティブ・オークションを行おうとしている。これは、2012年に法律で決まった。従来の周波数再編は、新技術や新サービスの観点から考えられていた。しかし、このオークションは技術の進歩を考慮していない。次世代DTVへの移行と完全に別の活動だ。
 オークションへの対応は、いくつかが考えられる。オークション全く関与せず、従来通り放送を続けることも認められている。周波数を売却して放送免許を返上することもできる。売却しても、他局と周波数を共用して放送を続けることもできる。また、売却してVHF帯を得ることも可能だ。注意して欲しいのは、他局との周波数共用についてFCCは関与しないことだ。
 オークションも複雑だ。まず、放送事業者が参加するリバース・オークション(入札毎に値が下がるもの)があり、放送への補償額が決まる。次に通信事業者が参加するフォワード・オークション(入札毎に値が上がるもの)がなされる。返上される周波数が固まった後に周波数の再編を行う。
 今回、大変なのは、放送事業から撤退する事業者は3ヶ月で停波しなければならないことだ。帯域の再編も3年で行う。NABは、極めて難しいと考えているが、法律で規定してしまっている。
 オークションに参加しない事業者も周波数再編の対象だ。法律では、周波数再編後もサービスエリアを保つことも求められている。オークションと周波数再編の詳細はまだ不明である上に、これまで2度延期されている。現在の予定では、オークションは2016年だ。
 米国は、HD化をMUSEハイビジョンで教えられた。日本とはビジョンを共有している。放送は、災害の際に圧倒的な強みを持つ。昨日総務省を訪問して、2011年の東日本大地震の際の情報ソースのトップ3はすべて放送だったと知った。ラジオ、ワンセグ、テレビだ。これは、他のメディアには行えない。
 リアルタイム、高品質のコンテンツ、そして無料、これらが放送の価値だ。この価値を更に高めてゆくのが我々の義務であろう。未来に向かって、これらの価値を拡大してゆかなければならない。日本の友人達と明るい未来を創ってゆきたい。

米NABの筆頭副会長兼CTO(最高技術責任者) サム・マセイニー氏

米NABの筆頭副会長兼CTO(最高技術責任者) サム・マセイニー氏

#interbee2019

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