【コラム】デジタルテープストレージLTOのロードマップ確定 第10世代は第5世代の32倍、1巻あたり48TBに スペース効率の大幅改善で長期ストレージ計画に貢献
2014.11.11 UP
IBC会場では新ロードマップを報じるリリースが配られた
LTOのロードマップ
放送業界で記録・保存用に用いられるディジタルテープストレージLTO(リニア・テープ・オープン)の新たなロードマップが確定し、第10世代までの容量拡大の道筋が明らかになった。現行方式であるの第6世代(LTO-6)は、テープ1巻あたり2.5TB(テラバイト)である。これが第10世代では48TBに拡大する。LTO-10では、1巻あたりの容量が現在の19倍以上となり、スペース効率が大幅に改善される。
(映像新聞 論説委員/日本大学 生産工学部 講師 杉沼浩司)
■されど「コールド・ストレージ」
人類が生み出す情報は拡大続けており、一説には2015年には年間8.5ZB(ゼタバイト:Zは10の21乗でテラの10億(ギガ)倍)に達するという。これらを格納するストレージも拡大を続けているが、問題の一つは「必要であるが、滅多にアクセスされない(アクセス頻度が低い)」情報への対応だ。このような情報もしくは、それを収めたストレージは「コールド・ストレージ」と呼ばれる。
放送をはじめとするコンテンツ事業者も、過去に世に送り出した情報を蓄積・保管しているが一部の人気コンテンツ以外はコールド・ストレージとなる傾向がある。コールド・ストレージに収められた情報は収益化の機会が少ないため、コストパフォーマンスに優れたテープに収められることが多い。中でも、多くのメーカーが製品を送り出しているLTO方式に人気がある。
■世代ごとに大幅な容量拡大 第10世代確定でストレージ計画容易に
2000年に登場した初代LTOは、100GBの容量だった。2012年12月に発表された最新型のLTO-6は、非圧縮時に2.5TBを記録できる。当時、LTOのロードマップには第8世代までが記されており、開発予定とされるLTO-7では1巻あたり6.4TB、同LTO-8では12.8TBとなっていた。LTOは、現行世代のハードウェアによる読み出しは2世代前のテープまで、書き込みは前世代のテープまでをサポートする。定期的に機器の交換とテープの移し替えが必要だが第8世代までしか明らかでないと、将来のストレージ計画が立てにくかった。
■LTO-10の容量は、LTO-5の32倍に
IBC2014期間中の9月10日、LTO技術を提供する米IBM、HP、クアンタムは共同でLTO-10までのロードマップを発表した。これによると、LTO-9で26TB、そしてLTO-10では48TBに達する。世代毎にほぼ倍増する計算となる。なお、メーカーの表記では高能率符号化(圧縮)後の容量が示されているが、MPEG等の圧縮を経たデータには基本的に圧縮が施されない。本稿では圧縮されたコンテンツの収納量を見積もりやすい裸容量で計算記載している。なお、LTOが提供する圧縮方式ではLTO-1からLTO-5では圧縮比は2倍、LTO-6以降では2.5倍とされている。これらの圧縮は、文字データなどの収納時に有効となる。
後方互換性については、LTO-9以降も現行と同様の読み出し2世代、書き込み1世代を保証している。現在LTO-5を導入している事業者は来年発表と見込まれるLTO-7機で一度、その5〜7年後と見込まれるLTO-9機でもう一度メディア移行を行う必要が出る。しかしLTO-5比の容量はLTO-9は7倍強、LTO-10なら32倍であり、移行することで収納スペースやロボットライブラリの大幅な小型化が実現する。
■追随するHDD、光ディスクも新たな進化
コールド・ストレージにおけるテープの牙城に挑むのはハードディスク(HDD)と光ディスクだ。HDDは、ヘリウムを充填し各種特性を改善した製品が投入され始め、1台で10TBを実現している。今後も、熱アシストなどの新技術により容量拡大が見込まれている。光ディスクは1枚300GBのディスクを用いたカートリッジ型のストレージが、ソニーとパナソニックから来夏投入の予定だ。ディスク容量は将来1TBに拡大される。
コストに勝るテープ、アクセス速度に勝るハードディスク、長期保存性に優れる光ディスク、と異なる長所を持ったメディアがアーカイブの引き受け手として手を上げている。メディアを使い分けることで、階層化構造を取りバランスの取れたアーカイブ構築が可能となるだろう。
IBC会場では新ロードマップを報じるリリースが配られた
LTOのロードマップ