【ニュース】IMAGICA AR/VRとモーションキャプチャー融合 CGコンテンツをライブで披露
2011.9.1 UP
ギターのマーカーに追従してCGを合成
ハンディカメラの動きにも対応
IMAGICA(東京都品川区)は、ニコニコ動画を運営するドワンゴ(東京都中央区)が設立したライブハウス「ニコファーレ」完成披露記者発表会で、従来のモーションキャプチャーシステムとAR(拡張現実)、VR(仮想現実)技術を融合させたライブコンテンツを披露した。
舞台には、モーションキャプチャー用の固定カメラ12台を設置。演者の動きに合わせて、ゲーム用パッドで操作するドラゴンのキャラクターに火を噴かせたり、ステージのダンサーに合わせてバーチャルアイドル「GUMI」が踊るなど、現実とインタラクティブに動くCGをARで演出した。
さらに、映像収録用カメラとしてハンディカメラを含めた3台を使用し、映像の躍動感を高めた。ニコニコ動画に書き込まれるコメントは、舞台を囲む壁面モニターに表示され、ストリーミング視聴者を含めた『総来場者数』は約60万人を記録。リアルとネットを同時に取り込んだ空間となった。
映像システムは、VR用のプロトコル「VRPN」を拡張した独自の「ARPN」(仮称)でマーカーデータを伝送。CG制作会社プレミアムエージェンシー製の描画エンジン「千鳥」で生成した。ポリゴン数はドラゴンが約4万、Gumiが約3万。
IMAGICAからはプロデューサーの秦明弘氏のほか、モーションキャプチャーテクニカルディレクター、ARテクニカルスーパーバイザーなど5人が参加した。
営業プロデューサーの新間敏雄氏は、「運営側にARで何ができるのか伝えることが最初の困難だった」と振り返る。その後、VRとは異なる動きのある世界を構築するため、演出家として、バーチャル演出で実績の高い佐藤大輔氏(佐藤映像)を据えた。ここからイベントの演出イメージが固まり、制作を開始した。
当日のステージでは、ハンディのカメラマンが勢いのあまり所定のエリアから外れてしまうアクシデントはあったが、「GUMIへの反応で壁面モニターが流れるコメントで埋まった瞬間は鳥肌が立った」(秦氏)と、インタラクティブイベントならではの手ごたえを感じているという。
ARは「拡張現実」の略で、実際の風景にCGを付加合成して、ユーザーに「増強、拡張された」(augmented)された世界をデバイス上で見せる。ここ数年、図形認識やGPSの位置情報を利用して、リアルタイムでグラフィックスを合成するサービスが盛んになってきた。
同社では2009年秋、CG制作を行うリンクスデジワークス(当時)の新規事業としてARサービスに着手。CG制作とモーションキャプチャー、CAD/CAMデータを利用したグラフィック作成を要素に、ARをリアルタイム運用できるシステム構築を始めた。
さらに10年4月のグループ再編に伴い、リンクス社および3D(立体視)を手掛けてきた撮影部、品川RスタジオのVR部門を統合し、「クリエイティブサービス部」として発足。撮影現場ならではのノウハウや緊張感を持つスタッフを加えたことで、ARリアルタイムサービスの精度を高めた。
同年秋には、ファッションイベント「ガールズアワード」で技術を披露したほか、「デジタルコンテンツEXPO 2010」で、神奈川工科大学およびプレミアムエージェンシーと共同出展。ドワンゴがARに目を留めたことが今回の採用につながった。
現在、同部門は「ライブグラフィックスサービス部」と改称し、放送やイベント、映像制作分野などB2B領域でのビジネスを目指す。
今回は事前に動きを収録したキャラクターを使用したが、将来的には、ニコファーレ内に設置された「バーチャルルーム」から、リアルタイムでモーションキャプチャーするなどインタラクティブ感を向上させるのが目標。遠隔地からモーションキャプチャー信号をリアルタイム伝送するといったサービスも来年度の課題としている。
新間氏は「放送局を含めたB2Bサービスを行うのが目標で、当面はニコファーレで開催されるイベントでの利用を高めていく。絶対に信号が落ちないという確実性を持って、B2Bにふさわしい高品質なサービスを提供したい」と話している。
なお9月には、モーションキャプチャーサービスとの連携強化に向けて、VAICON社製センサーカメラ「T160」を導入する。
顧客向けの内覧会も開催し、AR技術の紹介や可能性を訴求している。今後も積極的に開催していくという。(映像新聞)
ギターのマーカーに追従してCGを合成
ハンディカメラの動きにも対応