【ニュース】The FoundryがLuxologyと合併、きっかけはILMのプロジェクト
2012.10.24 UP
3D合成ソフトウェアNukeでお馴染みの英Foundry社は、米シリコンバレーにある3Dモデリング&アニメーション技術に特化したLuxology社(ルクソロジー)を買収した。 買収金額や条件などは開示されていない。 今後、お互いの技術を結集した新しいツールを開発し、デジタルコンテンツ市場に新たな鼓動を吹き込むという。
■成長を続けるツール企業同士の合併に期待感
ルクソロジー自身は今後も拠点は変わらず、ブランドもThe Foundry傘下で維持していく。
両社とも今回の発表において、買収という言葉を使わず、「合併(Merge)」を通している。「人は買収と聞くと、創立者達は会社を売り払って去るというイメージを持っているが、我々はそうではない」、と同社の創立者であり最高経営管理者のブラッド・ピーブラー氏は米メディアのインタビューに答えている。 「我々は反対にThe Foundryと一緒に市場に大きな足跡をつけることに奮起している。」
The Foundryは昨年、カーライル・グループと株取引で買収されている。当時、The Foundryのビル・コリンズ最高経営管理者は、会社の成長を支援するための機会と見なしていた。その施策どおり、ルクソロジーを吸収し、雇用についてもルクソロジーのスタッフ以外にも増員し、年内には250人規模にするという。
The Foundry社のVFXソフトウェアは、映画、テレビやコマーシャルの制作で活用されており、2012年度オスカー賞を受賞した「ヒューゴの不思議な発明(原題:HUGO)」(視覚効果賞)、「ランゴ(原題:Rango)」(長編アニメーション部門)、やエミー賞を受賞したテレビシリーズ「ボードウォーク・エンパイア 欲望の町(原題:Boardwalk Empire)」など、多くの映像芸術賞を受賞したテクノロジーとして実証されている。 というのも、MariやKatanaといったThe FoundryのVFXソフトウェアは、映画製作プロダクションのインハウスツールから派生したものだ。 そして合成ツールのNuke、ショット管理ツールのNieroやアドビやオートデスク用のプラグインを加え、映画やTVコンテンツ制作のパイプラインを構築している。
■ILMのジョン・ノール氏の呼びかけが合併のきっかけに
この二社が合併した背景には、Industrial Light & Magic( ILM)のVFXスーパーバイザーであるジョン・ノール氏の呼びかけがある。ノール氏が、集まった二社のトップに、新しいプロジェクト(『Transformers: Dark of the Moon』)でModoを絶対的に使いたいのだが、Katanaとの親和性が必須だと言い、両者で何とか実現してほしいと切願されたことが始まりだった、とピーブラー氏は説明する。 コリンズ氏とピーブラー氏が、業界にはILMのほかにも共同してサポートできるクライアントが多々あるポテンシャルに意思疎通したことが、今回の二社合併の経緯だ。
■優れたツール同士の補完で新たな可能性
ルクソロジーのModoというモデラー&レンダラーは、迅速にフォトリアルスティックなコンテンツ生成が可能なことで、CAD 、TVCMや広告媒体制作環境で多く利用されており、加えてUnityエンジンに対応することでゲーム開発市場にも認知されている部分、The Foundryから見れば市場を拡大できる大きな機会を得ることになる。
また、FoundryのMariの3DペイントツールはModoを補完する技術にもなり得る。お互いのツールのシームレスなワークフローと応用性を強化し、市場カテゴリを拡張すれば、オートデスクの市場立場の次をいく開発企業になる可能性も秘めている。
The Foundryによれば、現行の製品のロードマップを乱さずに、ルクソロジーが開拓した新しい市場に取り組んでいる。 これから増員するスタッフは、これらの取り組みと技術結集による新しいツール開発の両方に携わる計画という。
(ザッカメッカ 山下香欧)