【Inter BEE 2014】InterBEE Connected スマートフォンで変わるテレビ視聴スタイル　テレビ視聴と連携する3つのスマホ用アプリ関係者が登壇

　Inter BEE 2014の会期中、展示会場のオープンスペースで開催された新たな催し「Inter BEE Connected」。二日目、11月20日の最初のセッションはスマートフォンとテレビがテーマ。日本テレビの太田正仁氏には、テレビアプリ「ハミテレ」について、電通関西の今谷秀和氏には、テレビアプリ「SyncCast」について、そしてガラポン株式会社の安田歩社長には自社のサービスについて自ら語ってもらった。進行役は、メディアコンサルタントの境治氏が務めた。

■番組視聴の活性化、収入増につながるスマホ連携
　境氏がまず、テレビとスマートフォンの関係を概観。テレビを見ながらスマートフォンを使う人は5割近くいるというデータを示し、映画『天空の城ラピュタ』の放送時に起こった“バルス祭”でテレビとスマートフォン、とくにtwitterの関係が注目されたことなどを紹介した。テレビ局にとっては、スマートフォンの活用により番組視聴が活性化するとともに、広告の仕組みによって収入増につながる可能性も示した。

■全局全番組をワンセグで受信、「いつでもどこでも」を実現した「ガラポン」
　続いて各パネラーからそれぞれが取組むサービスについて説明。「ガラポン」は地上波の全局全番組をワンセグで受信し、一定期間録画する機器で、映像をPCやモバイル端末で視聴できる。外出先でも使えるのでまさに「いつでもどこでも」テレビを観ることができるサービスだ。利用者同士でソーシャル的に番組の感想を共有できる側面もあり、これによりテレビ視聴を活性化させる効果もあることを強調した。

■CMに合わせたバナー広告配信が可能な「SyncCast」
　今谷氏はマルチスクリーン型放送研究会の中心メンバー。関西キー局を中心に同会は会員企業を増やし、会員社は57社になった。会員となった局は、同会開発のアプリ「SyncCast」を使い、番組を見ている人に付加的な情報を届けることができる。CMに合わせてバナー広告を配信することでスポンサーの要求に応えていきたい旨、説明がなされた。

■NHKとキー局が共同で取り組む「ハミテレ」
　太田氏が携わるアプリ「ハミテレ」は、在京キー局5局にNHKも加わって共同で取り組む試みだ。局の横並びよりユーザーの利便性を重視し、いちばんホットな番組情報を届ける仕組み。テレビを見ている層にさらに視聴を促すとともに、テレビから離れがちな若い世代にもスマホを通じてアピールしたいという。

■普及にかかせない番組側の理解
　後半は、境氏からいくつかのテーマが提示され、それに沿ってディスカッションが行われた。まず、今後の課題については、三氏ともそれぞれユーザー数をまだまだ伸ばせていない点を挙げた。ハミテレとSyncCastはテレビ局のサービスなので、放送を通じてプロモーションできそうだが、各番組の理解が進んでいない。成功事例ができれば対応番組が増えて、告知もしてくれるようになるだろうとのことだった。

■軸足をテレビに置くか、ネットに置くか
　お互いに対して、あえて聞きたい質問を促したところ、太田氏が保田氏に「ガラポンの録画視聴によってライブ視聴が促されるとの説明だったがほんとうにそうなのか」と切り込んだ。保田氏は「アンケートをとるとガラポンユーザーの20％はテレビをあまり観てない層だった。彼らはテレビ視聴に戻ったはずだがそこの証明はしにくい」と応酬し、セッションは盛り上がった。
　最後の「今後のテレビはどう進むか」との質問に、今谷氏は「テレビがネットを活用すべきなのはまちがいないが、テレビが軸足をネットに移してしまうとビジネスが成り立たなくなる危険がある」と述べた。これに対し太田氏は「人びとの生活導線が変わるので、テレビはマルチデバイス、マルチサービスになってそこに入り込まねばならない。その意味では、ネットに軸足をおくべきだと考えている」と発言した。両氏はテレビは積極的にネットに出ていくべきだと言っており大きく見れば同じ中身の言い方違いのようでもある。だが、根本的なスタンスが違うようにも受け取れた。その微妙な違いは、今後のテレビとネットを取り巻く議論のひとつのポイントとなるのかもしれない。
　やや時間的に物足りなかったが、パネラー三氏の熱い議論により、盛り上がったセッションとなった。三氏が取組むそれぞれのサービスの今後に期待したい。