【InterBEE 2012】各社の開発進む次世代映像符号化方式HEVC
2012.11.16 UP
写真2 NTTブース
■1月には方式が固まるHEVC
次世代映像符号化方式HEVCの規格化が進み、来年1月には方式が固まることがほぼ確実視されている。もう大きな変更は見込まれないとあって、各社のCODEC開発も加速されているようだ。また、10月に開催された規格化会合では4:2:0以外の色サンプリングの議論も始まり、HEVCの素材伝送などの応用にも対応が進み始めた。当初の規格では4:2:0のみが規定される予定だが、それ以外のサンプリング方式も遠からず規定されるものと見られる。
NTT(#6401)ブースでは、「4K/HD HEVCエンコード技術」が出展されていた。規格化作業を行っているJCT-VCから出されるリファレンスコード「HM(HEVC Test Model)」をベースに同研究所独自の改良を加えたものである。改良点はレート制御やQ値(圧縮率を制御する要素)の制御にある。1920x1080@30fpsのソースを3.5Mbpsにまで圧縮した例が示されたが、HM8では水鳥が飛び立つ水面に破綻が生じているが、NTT版HEVCは持ちこたえている。破綻はレート予測ミス等により生じるといい、この誤りを抑えてスッキリした画像を実現した。なお今回のデモは、最新より一つ前のHM8を基にしたもので行われている。
伊藤忠ケーブルシステム(#6402)のブースでは、同社が販売するEnvivio社のマルチスクリーン対応エンコーダ/トランスコーダ「4Caster C4・Gen III」が紹介されていた。この装置も将来的にHEVCへの対応がうたわれており、ブースでは3Mbpsまでレートを落とした画像が示されていた。
このように、HEVCは規格化が目前に迫り、製品化を睨んだ技術が展示されるようになってきた。MPEG-4 AVC/H.264の10倍複雑と言われるHEVCは、まだハードウェアエンコーダは出展されておらず、展示されていたのはソフトウェアCODECの成果である。アルゴリズム検証が主目的のHMは、現時点ではリアルタイムの1000倍程度の時間で処理しているといい、1秒の動画のコードを作るには17分近くを要する。今後、まずハードウェアのリアルタイムエンコーダが登場し、ソフトウェア版が後に続くことになるだろう。なお、GPUなど特殊なハードウェア利用を必要とするソフトウェアエンコーダは、ハードウェア版より先に市場投入される可能性が高い。
(蓮憶人)
写真1 NTTが独自の技術を投入したHEVCエンコーダでは、HDTV画像を3.5Mbpsに落としても破綻を抑えていた
写真2 NTTグループのブースでは、4K画像をHEVCでエンコードした画像の他、CODEC用SDK、小型CODEC機器なども展示された
写真2 NTTブース