【NAB Show 2012】NABオープニングセッション 「新しい時代への準備はできているか」NAB会長は問う “House of NO”からの戦略転換を強調
2012.4.21 UP
女優のTeri Hatcher氏
■「ラジオとテレビは不可欠なメディア」
16日午前9時より開催されたNABオープニングセッションは、ABC放送「デスパレートな妻たち」のの主演女優Teri Hatcher氏(Susan Delfino役)の司会で幕を開けるという、これまでに無い趣向で幕を開けた。NABのPaul Karpowicz理事長が、今回のNABには1600社が出展し、150ヶ国以上からの参加者を得ていることを報告した後、Gordon Smith会長の基調講演が始まった。
Smith会長は「ラジオとテレビは、必要不可欠なメディアだ」と放送業界を定義し、FCCとの間で問題となっていたスペクトラム(周波数帯域)返還問題については「自発的に返還を申し出なかった放送事業者に対して、なんら不利益が生じないことを保証させることができた」と成果を示した。そして、これは「“House of NO”(注:常にNOと言う存在)から、事態に関与し共に解決を目指す存在となったことを示している」として、NABの戦術が変化したことを明確にした。
その一方で、無軌道に周波数帯域を欲する通信業界に対しては「彼らは、我々を追い出そうとしているが、それはさせない」と対決姿勢を明確にし、またケーブルテレビ・衛星放送業界に対しては「視聴者が無料のローカル放送にアクセスすることを妨げないように、FCCに働きかけ、視聴者を守る」宣言した。
地上波放送が”(人々が振り向かない)時代遅れのメディア”ではないか、との考え方に対しては「プライムタイムにおける上位100本の番組のうち、95本が地上波のテレビで流れているもので、ケーブルではない」として、地上波から視聴者が離れているとの見方を否定した。
■「新技術とコンテンツをモバイル、マルチスクリーン、UHDTVへ」
そして、将来については「テレビ事業者は、モバイル、マルチスクリーン、UHDTVへの対応を進めるべきだ」と、新技術を取り込み、より多くの視聴者にコンテンツを届けるように訴えた。「普遍性とは、過去においてはラジオがどこにでもあることだった。少し前は、テレビが各部屋にあることだった。明日に於いては、放送がいつでも、どのデバイスでも受信できることを示すだろう」と、もう「テレビ受像機」にしがみついている時代ではない、と指摘した。
■「敵は自分自身の中にある。ビジョンに投資する勇気はあるか」
Smith会長は「放送は終わった、という見方を覆そう」と訴えると同時に「最も大きな敵はFCCでも、議会でも、ケーブル業界でも、衛星放送業界でも、通信業界でも、インターネットでもない。敵は我々自身の中にある」とし、「我々は、ビジョンを持ち、それを認識しているか。そのビジョンに投資する勇気があるか」と自問した。そして、最後に「Ralph Waldo Emerson(米国の詩人・思想家)は”人々は、準備が出来ているもののみを見ることができる”と言った。我々は準備できるか。私は、それが可能だと思う。そしてNABは全力でそれを支援する」と述べて基調講演を終えた。
今年は、例年にない、業界への問いかけに終始する講演となり、変革の必要性をSmith会長が強く感じていることをにじませるものとなった。
女優のTeri Hatcher氏